おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



山下達郎サンデーソングブック2023年11月19日『ドゥー・ワップで棚からひとつかみ』

番組中の曲解説の主要な部分を要約して記しています(青字部分は書き起こし)。
ネットに音源がある楽曲にはリンクを張っていますが、オンエアされた音源とはヴァージョンが異なる場合が多々あります。

1. WHY DO I CRY / LISA & THE LULLABIES '64
2. IT'S YOU / THE DEANS '61
3. DON'T LEAVE MY BROKEN HEART / THE PARAKEETS '54('73)
4. BEYOND THE SEA / THE REVERES '60
5. GOODNIGHT / THE PLURALS '59
6. YOU DON'T HAVE TO CRY ANYMORE / THE BINDERS '70
7. EVERYTHING ABOUT YOU / TY HUNTER WITH THE VOICE MASTERS '60
8. LUCKY ME, I'M IN LOVE / THE EL DOMINGOS '62
9. YOU CAN CALL / THE DELMONICOS '63
10. おやすみ、ロージー / 山下達郎 '89


私のライブはですね、いわゆる客入れと呼ばれる開演前BGM、私はもう40数年、開演前はドゥーワップをかけております。
最初はカセットだったんですが、CD-Rになりまして、今データでお送りしております。
1時間前から入場が始まりますので、そこから60分ドゥーワップをかけております。
もうずーっと続いておりますので、熱心な方がたくさんいらっしゃいまして、最近はShazam、その他ですね、開場した途端に飛び込んできてShazamをかざして曲目を調べている、そういう方が少なからずいらっしゃいます。
そんな中、超常連の方から
『2公演参加させていただきました。いつものように開場直後からスマホアプリのShazamをかざして、客入れドゥーワップを解読していたのですが、今回は28曲中なんと5曲も2会場とも解読できなかった曲がありました。その5曲、少なくともYoutubeにアップされていません。5曲中、1曲でも良いのでぜひサンソンでオンエアしていただき社会還元していただけたでしょうか。よろしくお願いします』

このShazamのリストがずっと書いてあって、わからない曲が空白になっています。
この方だけじゃなくて数人いただいております(笑)。
熱心な方々がたくさんいらっしゃいます。
ですので今日は社会還元させていただきます。

久しぶりにドゥーワップで棚から一つかみ。

今年、開場前のBGMで使いました私のコレクション、ドゥーワップソングの中からですね、Shazamでわからない曲を中心に今日はお届けしたいと思います。
サンソンならではです(笑)


ドゥーワップは、1940年代末から50年代を過ぎて60年代初頭まで10数年間、アメリカでかなり流行ったスタイルでありまして。
もともとはストリート・ミュージックで、若い人が楽器を買う経済的な余裕がないので、アカペラ、歌だけで街角で集まって、ヒットソングとかそういうものをやっていったところから始まりました。
映画ロッキーの1作目のところで、そういうところがシーンが出てきたり。
アメリカの映画では、しばしばドゥーワップのストリートパフォーマンスというのが出てきます。

そのうちまたドゥーワップ特集やりたいと思いますが。
私はドゥーワップが昔から死ぬほど好きで、10代の時から聴いておりまして。
趣味が講じて、レコードコレクションをやっている中からですね、私のコンサートライブの開演前のBGMとしてずっと使い続けておりました。
最近はShazamというような便利なものがありますので、それをかざして曲名等チェックしてレコードを探すとか、youtubeで探すとか、そういうことをやってらっしゃると。
今年も60分強で28曲ほどお聴きいただいておりますが、その中でわかんない曲があると何人かから、いただきました。

今日はじゃあそれをご披露しようという。
というわけで、今日はドゥーワップで棚からひとつかみ。

 

まずはアタマから12曲めでかかったリサ&ザ・ララバイズ。
ニューヨークの白人ガール・シンガー、リッキー・リッシー、この人が1964年にCoedレーベルから出した。 
リサ&ザ・ララバイズというクレジットだが、バックは同じくニューヨークの白人のコーラスグループ、コンコーズ。
1964年の「WHY DO I CRY」。
このコンコーズのリーダー、マイク・ルイスがプロデュースして、リッキーと共作した。
WHY DO I CRY / LISA & THE LULLABIES


何人かからリストが来ているが、12曲目のリサ&ザ・ララバイズの次に、ジョーイ&ザ・オベーションズと書かれたリストが送られてきているが、ジョーイ&ザ・オベーションズの曲じゃない。
何故こういう間違いが起きるかというと、Shazamも間違えているが、YouTubeに出ているクレジットも間違えている。
正確には、やはりニューヨークの白人三人組のディーンズが1961年に出した「IT'S YOU」。Mohawkレーベルからのシングル。 
ディーン・マーチンのファンだからディーンズと付けたという、だからイタリア系のグループ。
IT'S YOU / THE DEANS 


19曲目を歌っているのはザ・パラキーズ。インコ。
50年代、バードグループという鳥の名前をグループがいくつかあり、その一つ。
ワシントンD.C.の黒人ヴォーカル・グループ。
1954年のレコーディングだけど発売されなかった。
1973年になってインディから出たので、たぶんデータがないのでShazamでは出てこないのではと予想する。
今はけっこうレアなシングルになってしまった。
DON'T LEAVE MY BROKEN HEART / THE PARAKEETS


20番目はザ・リビアーズというニュージャージーの白人ヴォーカル・グループ。
1963年にこれ一枚だけJubileeレーベルからシングルを出した。
ボビー・ダーリンの1960年のベスト10ヒット「BEYOND THE SEA」。
もともとはシャンソンの「ラ・メール(La Mer)」の英語版をドゥー・ワップ仕立てにしている。
白人ドゥーワップの全盛期の一曲。
BEYOND THE SEA / THE REVERES 


23番目はニュージャージーの白人ドゥーワップ、プルーラルズ。
2枚しかシングルが確認されていない。
WANGERというマイナーレーベから出た1曲で、1959年の「GOODNIGHT」。
イースト・コーストではかなりのヒットになったという記録が残っている。
高校のグリークラブ出身なので、歌唱力は確か。曲はメンバーの共作。
ストリングスも入って、それなりにお金をかけているが、ヒットしなかった。
GOODNIGHT / THE PLURALS 


番組前半で、不明の5曲と間違えてる1曲を全てかける。後半はオマケ。
次にかけるのは、割と新しい作品で、相当濃いドゥーワップファンじゃないと顧みられないのでは。
ザ・バインダーズはピッツバーグの黒人ヴォーカル・グループ。
歌ってるのはコーネリアス・ハープでデル・バイキンスに在籍していた人。
曲を書いてるのもプロデュースも、コーネリアス・ハープ。
アレンジは大物のジョー・シャーマンなので、こうしたラインナップからすると1970年代の録音かなと。
正確な録音年代がわからない謎に満ちた一枚。だけど出来はとってもいい「YOU DON'T HAVE TO CRY ANYMORE」
YOU DON'T HAVE TO CRY ANYMORE / THE BINDERS


後半は今年のツアーのBGMでかかったドゥー・ワップから私の好きな曲。
モータウンの初期の作品からドゥー・ワップテイストにあふれた、タイ・ハンター。デトロイト出身の黒人ヴォーカリスト。
この人はのちにオリジナルズ、グラスハウスで素晴らしいヴォーカルを披露した。
古くからキャリアがあり、この人がタイ・ハンター・ウィズ・ザ・ヴォイス・マスターズというクレジットで、ここのリード・ヴォーカルとして、1960年、モータウンの前身レーベルANNA、創始者のベリー・ゴーディのお姉さんの名前をとった、ここから出して、R&Bチャート18位になった「EVERYTHING ABOUT YOU」。
垢抜けたアレンジはライリー・ハンプトン。みんな昔からやっている。
EVERYTHING ABOUT YOU / TY HUNTER WITH THE VOICE MASTERS


次は、ニューヨークの黒人ヴォーカル・グループ、ザ・エル・ドミンゴス。
1958年のレコーディングで発売されたのは1962年の「LUCKY ME, I'M IN LOVE」。
オリジナル盤は値段が高く、私が持ってるのは再発だが、素晴らしい曲。
LUCKY ME, I'M IN LOVE / THE EL DOMINGOS 

 開演前のBGMは、だいたい60分強。6時半開演だとすると5時半からかけ始め28曲ぐらいかかる。
開演が遅れるとか、まあいろいろ事故があり、10分押し、15分押しとかあり、それを見越して37曲用意。
28曲目から後ろのやつはかかっていない。
そういうやつは、来年のBGMに散らしてという感じだが、もったいないので。
サンソンのドゥーワップの好きな人にしかウケないという。
このザ・デル・モニコスはニューヨークの黒人ヴォーカル・グループでイースト・ハーレムのグループ。
1963年、ドゥーワップ末期の「YOU CAN CALL」。
YOU CAN CALL / THE DELMONICOS


(リスナーから「家族の食事の用意などで寝不足」というお便り)
私は寝ないと、どうしようもありません。絶対に寝ます。
どんなことがあっても寝ます。寝不足が嫌です。
今がんばって、お子様方も自立すれば、ゆっくり寝られる時代がきますので、その時に取り戻してください。
リクエストは「おやすみ、ロージー」
おやすみ、ロージー / 山下達郎