おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也

ディナーショーはやらずステージにこだわり続ける沢田研二さんを応援したい

沢田研二さんの武道館公演が満員だの、実はうち4割が関係者(?)だのと、ネットのニュースを騒がせている。なんで、いちいちニュースにするのだろうか。その意味がわからない。

もとより興行は水モノである。席がうまらずタダ券をばらまいた話など、珍しくもない。

そもそもの発端は、さいたまアリーナ公演の席が埋まらず、これに納得しなかった沢田さんがキャンセルしたことだ。しかし、これとて歌手、ファン、イベンター等に関わる話であって、外野がどうこういうことではない。

山下達郎さんがこの件を指して「それぞれの方々の裁量……お客さんと、その表現者の方々の関係の中で考える問題です」と述べていたが、本当にそのとおりだと思う。

もともと沢田さんはアーチストとしての自意識が強くプライドが高い人なのだろう。だからこそ長く芸能界で活動を続けてこれたともいえる。

それをしみじみと感じたのは、2013年のタイガース復活コンサートのときだ。オリジナルメンバーが揃うのは何と42年ぶり。病気療養中の岸部四郎さんが車椅子でステージに上がるなど、話題満載の公演だったが、そのセットリストを見て、私は驚いた。ヒット曲のオンパレと思いきや、それは後半だけ。半分は洋楽のカバーなのである。

01. DO YOU LOVE ME
02. (I CAN'T GET NO) SATISFACTION
03. NOWHERE MAN
04. I STARTED A JOKE
05. YOU'VE GOT TO HIDE YOUR LOVE AWAY
06. YELLOW RIVER 07. YESTERDAY
08. TELL ME
09. HOLIDAY
10. I'M HENERY THE EIGHTH I AM
11. TIME IS ON MY SIDE
12. UNDER MY THUMB
13. 10年ロマンス
14. 僕のマリー
15. 落葉の物語
16. 生命のカンタータ
17. 忘れかけた子守唄
18. 廃虚の鳩
19. モナリザの微笑 20. 銀河のロマンス 21. 青い鳥
22. 花の首飾り
23. 君だけに愛を 24. シーサイド・バウンド 25. I UNDERSTAND
26. ラヴ・ラヴ・ラヴ
27. タイガースのテーマ
28. 美しき愛の掟
29. 色つきの女でいてくれよ

タイガースはもともとブリティッシュロックのコピーバンドだった。その原点を改めて示したかったのだろう。
ストーンズの「UNDER MY THUMB」「TELL ME」「(I CAN'T GET NO) SATISFACTION」あたりは、まあわかるにしても冒頭の「DO YOU LOVE ME」なんて、1960年代のブリティッシュロックに詳しくなければ、まず知らない。もともとはContours (コントゥアーズ)というアメリカのR&Bグループの曲で、タイガースはたぶんDave Clark Five(デイヴクラークファイブ)のカバーバージョンを参考にしている。これがオープニングなのである。

長いインターバルをおいての再結成だから、サポートミュージシャンを加えても、ファンは納得しただろう。しかし、歌も演奏もメンバーだけでこなした。同窓会ではなく再結成である以上は、そうでなければならなかったのだろう。これこそ矜持というのだ。
その一部がTUBEにあるので見て欲しい。歌も演奏もコーラスもじゅうぶんに上手い。特に岸部一徳のベースのグルーブは、性格俳優の彼からは想像できないほどファンキーだ。


今回の沢田さんのツアーはギターの柴山和彦さんとの二人だけ。バンドの経費をケチったのではなどという、口さがない意見もあるが、これはずーっとバンドでやってきた彼の新しい挑戦だと思う。奥田民生も武道館で弾き語りのライブをやってるし、エド・シーランもギターと歌だけで世界中のアリーナを満杯にしている。表現としての必然性があり、それが観客が納得できるだけのパフォーマンスであればそれでいい。外野が「ケチっている」だのなんだの言うことではない。

沢田さんのキャリアなら、ディナーショーで十分稼げるはず。しかし、かつてディナー付きトークショーはやったことがあるが、歌を唄うディナーショーはやらないという。「ご飯で満腹のお客さんを前に1時間くらい歌ったってつまらない。大きなステージで汗かいて歌うのが歌手の仕事」という趣旨の話を沢田さんはしているそうだ。

楽に稼げるディナーショーは目もくれず、いつまでもステージにこだわり続ける。そんな頑固でカッコいいジイサンであり続けてほしいと思う。

 

#この項終わり