おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也

西城秀樹さんとロッド・スチュワートとマイクアクションの話


3カ月ほど前に、「長いあいだ来日していない大物ミュージシャン」をまとめた記事を書いた。

ここで取り上げたのは
 セリーヌ・ディオン
 ビリー・ジョエル
 ドレイク
 カニエ・ウエスト
 ジャスティン・ティンバーレイク
 ブルース・スプリングスティーン
である。

もう一人、忘れていた。

ロッド・スチュワートだ。

一時期はバラーディアというか、スタンダードシンガーになったかのような活動が目立ったが、決してその方向で晩年を過ごすつもりはないようだ。

2018年リリースのアルバム「ブラッド・レッド・ローゼズ」は、モータウン調のR&Bや正真正銘のロックンロールなど、全盛期のロックシンガーの片鱗を示している。

あまりプロモーションをしなかったせいか、アメリカでのセールスはいまいちだったが、イギリスではアルバムチャートの1位を獲得している。

ブラッド・レッド・ローゼズ

ブラッド・レッド・ローゼズ

  • アーティスト: ロッド・スチュワート,DNCE,R.R.スチュワート,C.アッピス,A.ネドラー,R.ヤコブ,K.フォーゲルマーク,D.S.ヒッチングス
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2018/09/28

 

最後の来日は2009年だから、もう10年来ていないことになる。

それ以前はそこそこコンスタントで、1996年、1994年、1984年、1981年、1979年に来日している。

さらにその前となると、ソロ活動以前、フェイセズとしての来日が1974年である。

ベーシストのロニー・レーンが1973年に脱退。その後任に、日本人ベーシストの山内テツが加入し、その凱旋公演の意味合いもあった。

このときは、大阪で2公演のはずが、ロッドの喉の調子が悪く2日目はキャンセル。

そのあと東京(武道館)で2回行った。

そのときのセットリストがこちら。

01. Introduction
02. It’s All Over Now
03. (I Know) I’m Losing You
04. Angel
05. True Blue
06. Stay With Me
07. I’d Rather Go Blind
08. Memphis, Tennassee
09. Too Bad ー Every Picture Tells A Story
10. My Fault
11. I Wish It Would Rain
12. Jealous Guy
13. You Wear It Well
14. Maggie May
15. Borstal Boys ー Amazing GraceーGasoline Alley
16. Twistin’ The Night Away
17. Pool Hall Richard
18. Sweet Cheerio
19. Outroduction

オフィシャルにセトリが公表されていたわけではない。

このときの演奏を収めたブートレッグが出回っており、完全収録とのことなので、それを信じてのリストである。

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さて、このときの公演を西城秀樹さんが観ており、自身の歌手活動に非常に大きな影響を受けたことは、ファンにはよく知られている。

ひとつは、前座で出ていたジョー山中バンドのギタリスト、芳野藤丸さんのプレイにほれ込み、自身のバンドに加入してくれるよう直談判。
藤丸さんはこれを受け、長年にわたり秀樹さんの重要なパートナーになる。以前、このブログにも書いたが、秀樹さんのライブ、特に洋楽カバーのレベルの高さは、藤丸さんなしにはありえなかった。

もうひとつはロッドの派手なマイクアクションにヒントを得て、自身の作品「薔薇の鎖」でロッドさながらのアクションを見事にやってみせたことだ。

ステージ上でマイクスタンドを振り回すような派手なアクションは、海外ではロッドが、日本では秀樹さんが元祖である。これは歴史的な事実だ。

 

このブログでは、いままで「秀樹さんと洋楽」に関する原稿を10本以上書いてきて、多くの人に読んでいただいた。

よく知られたロッドの話を今さら書くのもなあ、と思っていたのだが、当時のロッドのパフォーマンスについて、動画含みで紹介するサイトやブログは、調べてみたらあまりなかった。

なので今回、書いておくことにする。


ロッド以前にも、もちろん多少のマイクアクションはあった。

有名なところでは、エルビス・プレスリーやミック・ジャガーがそうだ。

しかしそれは、せいぜい傾けるか、寄り掛かる程度のものだ。



そもそもマイクスタンドは重い。というか、マイクに余計な振動を伝えないように、わざと重く頑丈に作ってある。振り回せるようなしろものではないのだ。

ロッドが使っていたのは、アルミ製の特製のものらしく、だから上に放り投げるようなパフォーマンスが可能だった。
スタンドを改造しアクションの小道具として使ったことが、革命的だったのだ。


フェイセズのコンサートのとき、秀樹さんはマイクスタンドを触らせてもらい、一緒に観に行ったかまやつひろしさんがアルミ製だと気づいた。秀樹さんはかまやつさんに依頼して特注のマイクを作ったという。父親もジャズミュージシャンだったかまやつさんは、当時、楽器や音響機材についてとても詳しかったらしい。

こう書いてしまうと、あっさりした印象だが、コンサートを観に行って「すごい、カッコいい」で終わるのではなく、マイクスタンドをわざわざ確かめ、それと同じものと作ろうとするそのこだわりはハンパではない。ネットで素材や業者がすぐに検索できるいまの時代ではない、1970年代半ばの話なのだ。

そのころのロッドのパフォーマンスがこちら。代表曲「ステイ・ウィズ・ミー」。出だしのところと3分50秒あたりに注目。しかしロン・ウッドを含め、むちゃくちゃカッコいいな、このころのフェイセズ。



続いて秀樹さんの「薔薇の鎖」



ロッドのアクションは、もちろん海外のロックシンガーにも大きな影響を与え、フレディ・マーキュリーやスティーヴン・タイラーらに発展的に受け継がれる。

フレディはスタンドの土台を取ってより身軽にし、スティーヴンはスカーフを巻きつけて彩りと動きを派手に見せた。発展的とはそういうことだ。



2015年、ロッドは約40年振りにフェイセズの再結成に参加。

うれしいことに、ここでロッドは全盛期を思わせるアクションを見せている(1分30秒あたり)。

70歳という年齢にもかかわらずだ。

 

ぜひ、もういちど日本に来て、ワンステージの中で一回だけでいいから、マイクを振り回して欲しい。

そのときにはきっと、秀樹さんの魂がステージに降りてくると思う。

 

<了>