元レインボー~マイケル・シェンカー・グループのヴォーカリスト、グラハム・ボネット率いるアルカトラス (Alcatrazz) が、ニュー・アルバム『ボーン・イノセント(Born Innocent)』を、2020年7月31日、世界同時発売した。
アルカトラスの顔はもちろんグラハム・ボネットなのだが、イングヴェイ・マルムスティーンとスティーヴ・ヴァイという超絶テクニックのギター・ヒーローを輩出してきたことでも知られ、日本での人気は高い。
このアルバムはなんと34年ぶり。
前作のとき高校生だったファンが、今や50歳すぎのおっさんである。
アルカトラスは活動していなかったわけではなく、ライヴはやっていたし来日もしている。
2019年5月の来日公演のときは、アルカトラス『ノー・パロール・フロム・ロックンロール』(1983)とレインボー『ダウン・トゥ・アース』(1979)を完全再現した。
ただ、新作アルバムとなるとそう簡単にはいかなったかったのだろう。
著名で実績があるバンドだけに、中途半端なものは出せない。
シングルやEPではなく、アルバムというスタイルにもこだわりがあったはずだ。
アルカトラスの名にふさわしいものを時間をかけて練り上げ、ようやくグラハムも他のメンバーも納得できるものが仕上がったのだと思える。
グラハムと並ぶバンドの要であるギターはジョー・スタンプ。
先の来日にも同行し、素晴らしいプレイを聞かせていた。
さすがに歴代のギタリストと比較するのはちょっと酷だが、アルカトラスの名前を継承することの意味に自覚的であることがよくわかる、王道感のある演奏だ。
ゲイリー・シェア(ベース)、ジミー・ウォルドー(キーボード)は、オリジナルメンバーゆえに、さすがの安定感。
“Dirty Like The City”はスティーヴ・ヴァイが楽曲提供しており、日本人ギタリスト若井望のゲスト参加などアルバムとしての話題性も十分。
そして何よりも、御大グラハム・ボネットのパフォーマンスが素晴らしい。
MVを見ると、容姿には年齢なりの変化があるものの、燃えたぎる声のパワーは衰え知らず。
日本では矢沢永吉さんの活躍が目を引くが、矢沢さんは70歳。
グラハム・ボネットはさらに3つ上の73歳にして、全盛期に引けをとらない歌を聞かせているのだ。
曲の完成度も高く、これこそがアルカトラス、というグラハムの自信がうかがえる。
元レッド・ツェッペリンのロバート・プラントのように、渋く枯れたスタイルに移行するのも悪くはないし年齢的に当然とも思う。
同世代で伸びのあるハイトーンを聞かせるロックヴォーカリストは、エアロスミスのスティーヴン・タイラー(72歳)くらいだろうか。
ゆえにグラハムの存在は貴重で、ファンにとっては喜ばしい。
ぜひ近いうちに来日して、渾身のパフォーマンスを見せて欲しいと思う。
Alcatrazz - London 1666 (Official Video)
Alcatrazz - Born Innocent (Official Video)
<了>