おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



【Live in Japan】Roy Buchanan「LIVE IN JAPAN」(1977年録音)

 

米国アーカンソー州出身のギタリスト、ロイ・ブキャナンの名が日本のロックファンに広く知られるようになったのは、彼の作品ではなくジェフ・ベックの作品を通じてである。

1975年にリリースされた『ブロウ・バイ・ブロウ』 (Blow by Blow:発売時の邦題は『ギター殺人者の凱旋』)に収められていた「哀しみの恋人達」(Cause We've Ended As Lovers)に“dedicated to Roy Buchanan(ロイ・ブキャナンに捧げる)”の言葉が添えられていたからだ。


 

もともとこの曲は、スティーヴィー・ワンダーがかつての妻シリータ・ライトのために書いた楽曲で、歌ものであったのを、ジェフ・ベックがインストカバーした。

メロディが非常に美しいことに加え、鳴くような音を響かせるベックのギターコントロールが冴え、多くのロックファンの耳を惹きつけた。
このアルバムはギターインストとしては珍しく、全米4位まで上がっている。

ブロウ・バイ・ブロウ

ブロウ・バイ・ブロウ

  • アーティスト: ジェフ・ベック
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2006/01/18
  • メディア: CD

 

ベックより5歳年上のロイ・ブキャナンは、当時すでに卓越したテレキャスター使いとして知られており、ベックも大いに啓発されたのだろう。
ゆえにロイ特有のトーンに近いこの曲を捧げて、敬意を表したのだと思われる。

そして当時の日本のロックファンの中でベックの人気は非常に高かったから、たちまちロイ・ブキャナンも有名になったわけだ。

 

初来日は1977年。
東京のほか、大阪、名古屋、札幌、新潟で公演を行っている。

「伝説の」って、このときまだ30代なんだけども。

f:id:bakoji:20190618181431j:plain

 

このうち6月14日・15日の郵便貯金ホールでの音源から8曲を収録したアルバムが『LIVE IN JAPAN』で、1978年にリリースされた。

ライヴ・イン・ジャパン(紙ジャケット仕様)

ライヴ・イン・ジャパン(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト: ロイ・ブキャナン
  • 出版社/メーカー: USMジャパン
  • 発売日: 2013/03/27
  • メディア: CD

1. Soul Dressing
2. Sweet Honey Dew
3. Hey Joe
4. Slow Down
5. Lonely Days Lonely Nights
6. Blues Otani
7. My Baby Says She's Gonna Leave Me
8. Sweet Dreams

これがなかなかクセのある選曲なのだ。
8曲のうち半分以上が、オリジナルアルバムには収められていない。
ロイの代表曲の一つである「Sweet Dreams」はあるが、さらに有名な「メシアが再び」は入っていない。
他に有名なのはジミー・ヘンドリックスで知られる「Hey Joe」くらいで、実に地味な選曲なのである。

しかし、ロイの緩急自在のプレイは、ただただ圧巻。

アルバム収録曲を再現することを、そもそもライブの目的にしていないのだろう。

43分と決して長くはないが、非常に聴き応えがあり、ギタリストのソロライブアルバムとしては、今もなお語り継がれる名盤である。

 

CD化にあたって追加される曲がないかと期待していたのだが、残念ながらなかった。

ほぼ公演当日のコンプリートとされるブートレッグが出ているので、参考までに曲目を掲げておく。

[DISC ONE]
01. Tuning
02. My Baby Says She’s Gonna Leave Me
03. Roy’s Bluz
04. Further On Up The Road
05. Sweet Dreams
06. Johnny B Goode
07. Sweet Honey Dew
08. Down By The River
09. Slow Down
10. Hey Joe
11. Foxy Lady

[DISC TWO]
01. Soul Dressing
02. Lonely Nights
03. I Hear You Knockin’
04. Sunshine Of Your Love
05. Five String Blues
06. Can I Change My Mind
07. The Messiah Will Come Again
08. I'm Evil
09. Opening Rocker
10. The Thrill Is Gone
11. Since You've Been Gone
12. Johnny B Goode

 
なおロイ・ブキャナンは1988年8月、公共の場で酩酊していたため収容されていた刑務所の房内で自害した。
理由は不明。
48歳という若さだった。

 

以下は、来日の前年76年のステージである。

 

 

<了>