おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



西城秀樹さんがカバーしたジャーメイン・ジャクソンの曲

 

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2019年11月上旬のいま、ジャーメイン・ジャクソンが絶賛来日中である。

11月3日に奈良・薬師寺大講堂前特設会場で開催された「モータウン60周年アニバーサリー モータウンオーケストラコンサート」に出演。

11月7日(木)8日(金)9日(土)10日(日)にブルーノート東京のステージに立つ。

チャージは28,500円と安くはないが、ジャーメインクラスのアーティストがクラブギグを行うこと自体が希少だ。


An Intimate Evening with JERMAINE JACKSON : BLUE NOTE TOKYO 2019 trailer

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ジャーメインの最もシンプルな説明は「マイケル・ジャクソンのお兄さん」である。

こうした紹介のされ方は、ジャーメインにとって喜ばしくもあり、一方で不本意でもあるだろう。

ジャクソン5時代にはマイケルとリードヴォーカルの座を分け合い、独立後はソロとしてしっかりと実績を重ねてきたという自負があるはずだからだ。

マイケルと比べればいささか分が悪いが、それはマイケルの存在があまりにも巨大だからであって、一人のアーティストとしてみれば、ジャーメインは十分すぎるほどの成功を収めたビッグネームである。


ジャクソン兄弟の三男として生まれたジャーメインは、60年代後半からジャクソン5のメンバーとして活躍。
マイケルに続いてのソロデビューも実現した。

ジャクソン5がモータウンレーベルから独立したとき、ジャーメインは残留の道を選んだ。

活動に関する方向性の違いもあったろうが、ジャーメインがモータウンの社長の娘と結婚していたことが大きい。

モータウンでソロ作品を出したあと、エピックに移籍。
1980年のアルバム『レッツ・ゲット・シーリアス』と、その表題作のシングルが大ヒット。
一躍スターダムに踊りでる。

20歳代の後半での大ブレイクである。

1984年にはジャクソンズに合流。
マイケルも含め6兄弟が揃ったアルバム『ヴィクトリー』をリリース。

90年代以降、ソロ活動のペースは落ちるが、2012年にはジャズのスタンダード集『IWish You L.O.V.E』を発表。
2015年にはシングル「サマー・タイム・フィーリング」をリリースしている。

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さて、このジャーメイン・ジャクソンの曲を西城秀樹さんがカバーしている。

『JUST RUN '84 HIDEKI』に収められた「Dynamite」がそれだ。

これはジャーメインの84年のアルバム『Dynamite』(アメリカではJermaine Jacksonという名前のタイトル)の冒頭に収録。
全米で15位を記録しているヒットナンバーだ。

アルバムのリリースは4月、シングルのリリースは6月。

それを8月のコンサートでカバーしているのである。
相当に早い。
旬の曲をやりたいという、秀樹さんの意気込みの表れだろう。

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実は「Dynamite」の前に収められている「Once Love Touches Your Life」も、ジャーメインがらみの曲である。

ヒット曲ではない。

アメリカのR&B女性シンガー、シリータの1983年のアルバム『ザ・スペル』に収録されている。

シリータは60年代、バックアップシンガーとして活動していたころにスティーヴィー・ワンダーと出会い、1970年に結婚。1972年にワンダーのプロデュースによるアルバム『シリータ』を発表してデビュー。(この年にはワンダーと離婚している)

1970年代から80年代前半にかけて、コンスタントに作品をリリースするが、『ザ・スペル』を最後に引退。

その後、復帰するもシングルリリースのみで、2004年には他界している。

「Once Love Touches Your Life」でシリータとデュエットしているのが実はジャーメインで、彼は楽曲制作にも関わっている。

ぶっちゃけ有名な曲ではない。

秀樹さんのカバーでもメインは女性ヴォーカル(コーラスの人だろうか?)で、秀樹さんはサブである。

 

コンサート会場にいたファンの人の中で、この曲のオリジナルを聞いたことのある人は、ごくわずかだったのではないだろうか。

それでも自分がいいと思えば、セットリストに入れてしまう。
それも秀樹さんらしいといえば、秀樹さんらしい。

 

ジャーメイン来日のニュースを聞きながら、そんなことを思った。

<了>