おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



西城秀樹さんがカバーしたカンサスの曲

 

アメリカン・プログレ・ハードという洋楽ジャンルは、1970年代から80年代にかけて、絶大な人気を誇った。

当のアメリカにはこうした名称のジャンルはなく、日本でのみの呼称ではあったが、洋楽ファンのあいだでは、かなり定着していた。

プログレッシブ・ロック特有の精緻な音作りやドラマティックな曲展開と、アメリカンハードロックが持つキャッチーなメロディやコーラスが組み合わさったサウンドは、なるほどアメリカン・プログレ・ハードと呼ぶにふさわしい。
まさに言い得て妙だった。

 

ボストン、カンサス、スティクス
がその代表的なグループで、
ジャーニー、フォリナーの一部の作品にもこのジャンルに含まれるものがある。

懐かしい名前が並ぶなあ、と感じる洋楽ファンは多いだろうし、確かに懐かしいのだが、なんとこの5つのグループ、今もなお現役である。
それぞれ活動を休止していた時期はあるし、メンバーが大きく変わったバンドもあるが、正式に解散を表明したバンドはないのだ。

 

その中の一つ、カンサスが2020年7月にニューアルバム『The Absence of Presence』をリリースした。

2000年代になってからは、これで3枚目。
決して多作とは言えないが、アメリカン・プログレ・ハードに限らず、ベテランバンドの活動の多くがライブであることを考えれば、ニューアルバムのリリースはあっぱれである。

Absence of Presence

Absence of Presence

  • アーティスト:Kansas
  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: CD
 

そして、期待に違わぬ、というか期待以上の完成度の高さなのだ。

まさにプログレという大作からロケンロールナンバー、泣きのバラードまで、これぞアメリカン・プログレ・ハードという曲ばかり。
バイオリンが活躍するロックアルバムは近年珍しいが、むしろ新鮮に聞こえる。




オリジナル・メンバーはドラムのフィル・イハートとギタリストのリッチ・ウィリアムスの2人。

この2人がバンドを引っ張っているのかというと、メンタルな部分ではそうかもしれないが、音作りのリーダーは16年に加入したギターのザック・リズヴィ。
ほとんどの作曲とプロデュースを彼が担当している。

それでいて音は、かつてのカンサスの魅力をそのまま受け継ぐものなのだから、まったく素晴らしい人材を見つけたものだし、彼にまかせたオリジナルメンバーの判断も立派だと思う。

これからはバンドも、プロスポーツのチームと同じように、メンバーが全部入れ替わってもチームの名は受け継がれファンもついていく、ということになるのかもしれない。


その歴史を振り返っておくと、アルバムのセールスやチャートアクションのピークだったのは、1970年代の後半。

76年の『Leftoverture(永遠の序曲)』が全米5位。
77年の『Point Of Know Return(暗黒への曳航)』が4位。

いまこれを書いていて、この2作品がたった1年のインターバルでリリースされたことに驚く。
それほど創作意欲とアイデアにあふれていたのだろう。

シングルはアルバムほどにはヒットしておらず、
78年の"Dust in the Wind"が全米6位で、ベスト10ヒットはこれだけ。

日本で一番有名なのは上記のの"Carry On Wayward Son"(76年:全米11位)だろうか。

アタマのコーラスと、それに続く重いリフが印象的。
ラジオでかかりまくっていた記憶がある。

 

さて、このカンサスの曲を西城秀樹さんがカバーしている。

"On the Other Side" という曲で、シングルカットはされていないが、78年リリースのアルバム『Monolith(モノリスの謎)』の冒頭を飾る曲で、ファンの人気は高い。

あえてシングルヒットをカバーしなかったのは、秀樹さんなりのこだりわりだろう。

81年8月後楽園球場でのライブを収めた『BIG GAME '81 HIDEKI』A面のラストがこの曲だ。
オリジナルとともに張っておこう。

 


鈴木武久氏率いるバンドがバックなのだが、これが上手い。
あの伝説の"エピタフ"のカバーもこのバンドだったはずだから、こういうプログレぽいのは得意だったのだろう。

ライブの主役が秀樹さんであることを考えれば、ここまで長い間奏は必要はないはずだ。それをあえてやってしまうのもまた、秀樹さんのこだわりに違いない。

 

で、キャリアのある秀樹ファンの方はご存知だろうけれど、

ライブでのこの曲の前の2曲
「A.D.1928」「Rockin' The Paradise」もまた、アメリカン・プログレ・ハードの雄、スティクスの曲である。

この頃の秀樹さんがかなりアメリカン・プログレ・ハードに入れ込んでいたことはあきらかだ。

これらの曲のドラマティックな展開に、秀樹さんの声、歌いまわしはよく合っているし。

 

で、この2曲の作者である、元スティクスのデニス・ヤングは、今年2020年4月になんと13年ぶりのアルバムをリリースした!


.....いやはや、このテーマを書いていくとキリがないので、
秀樹さんとスティクス、デニス・ヤングについては、また改めて記事にします。

 

<了>

 

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