「Everything Must Change」は名曲ゆえに、歌った人はたいへん多い。
有名どころを挙げていっても、ペギー・リー、バーブラ・ストライサンド、ナンシー・ウィルソン、ジョージ・ベンソン、カーメン・マクレエ.....と錚々たる顔ぶれが並ぶ。
なかでも一番有名なのはランディ・クロフォードの1976年作だろう。
この曲を1曲目に収めたアルバムのタイトルも『Everything Must Change』。
彼女を一躍有名にしたのが、この曲であり、このアルバムだ。
これがデビュー作とは思えない完成度である。
- アーティスト:Crawford, Randy
- 発売日: 2000/03/13
- メディア: CD
1952年生まれだから、まだ20代の半ば。
その年代ならではの、はつらつとした勢いを感じさせてくれる。
曲もいいし、アレンジも洗練されているし、演奏もいい。
キーボードにジョー・サンプル、ベースにロバート・ポップウェルとアンソニー・ジャクソン、ギターにラリー・カールトンとジェイ・グレイドン....
フュージョンファンなら、この顔ぶれをみただけで飛びつくだろう。
さて、この「Everything Must Change」という曲だが、作者については曲ほどには知られていないかもしれない。
書いたのはバーナード・アイグナー(Benard Ighner)。
もともとはジャズ畑の人で、1960年代半ばからディジー・ガレスピーのグループなどで活躍。
1974年、クインシー・ジョーンズの名盤『BODY HEAT』に起用されて、「Everything Must Change」が収められた。
ここでは彼自身がヴォーカルをとっていて、すなわちこれがオリジナルである。
このアルバムにはアル・ジャロウやリオン・ウェアなども参加していて、彼らと並んで注目されることになった。
うまいのだ、これが。
- アーティスト:Jones, Quincy
- 発売日: 1990/10/25
- メディア: CD
翌75年には、これも超のつく名盤、マリーナ・ショウの『WHO IS THIS BITCH, ANYWAY?』に楽曲提供し、アレンジやキーボードでも参加している。
例えば「Davy」「Loving You Was Like A Party」などは彼の作品。
しっとりした良い曲だ。
- アーティスト:ジム・ゴードン,デヴィッド・T.ウォーカー,デニス・バドマイアー,チャック・ドマニコ,チャック・レイニー,ハーヴィー・メイソン,マイク・ラング,マリーナ・ショウ,ラリー・カールトン
- 発売日: 2009/03/25
- メディア: CD
そんな彼は1枚だけ自分名義のソロアルバムを残している。
78年作の『LITTLE DREAMER』がそれで、なんと東京で録音されており、日本のミュージシャンが多数参加している。
ギターに渡辺香津美、ドラムスに村上'ポンタ'秀一、キーボードに深町純と、こちらもこの顔ぶれだけで食指が動く人も多いだろう。
このアルバムのラストを飾るのは、もちろん代表曲の「Everything Must Change」。
クインシーのときとは、違うアレンジで熱唱している。
しかし残念なことにこのアルバム、CD化されていない。
もちろんSpotifyなどのサブスクでも聞くことはできない。
彼は2017年に惜しくも他界した。
いつか『LITTLE DREAMER』がリイシューされることを願っている。
<了>