イギリスのインディー・ロック、というかパワーポップバンドの約3年ぶり、8作目のアルバム。
これまでにもジョニー・マーがいきなり正式メンバーになったり、リック・オケイセックがプロデュースをしてみたりと、いわゆる旧世代の大物とのコラボでたびたび話題をさらってきた彼らだが、今回はフー・ファイターズのデイヴ・グロールが一肌脱いだらしい。
実はクリブズは、マネージメント上の揉め事があって、法廷闘争にまでなってしまい、そのためレコーディングもツアーも身動きがとれなくなってしまったそうな。
そんな状態が続くなか、クリブズはフー・ファイターズのコンサートをサポート。
その際、デイヴ・グロールにバンドの困窮した状況を話したところ、彼はロサンゼルスに所有している自分たちのレコーディングスタジオを好きなように使っていいと、救いの手を差し伸べてくれたのだそうだ。
いったいどんだけ良い人なのか、デイヴ・グロール。
アクセル・ローズに“玉座”を貸した話とか、折にれてその好漢ぶりが伝えられるけれど、後輩の面倒見の良さは半端ない。
クリブズはそのスタジオに入って、レコーディングに没頭。
マネージメント上の雑音などもない中で、制作に集中できたらしい。
これまでの彼らの持ち味というと、ラフでやんちゃで、そのぶんめっぽう勢いのあるサウンド。
なので、屋外フェスなんかでは、たいそうウケが良かったわけだ。
それが今作は、そうした音の佇まいは残しつつも、ずいぶんとキャッチーなメロディやコーラスがいっぱい。
ラズベリーズやジェリーフィッシュにも通じるような、実に痛快なパワーポップアルバムに仕上がっている。
デイヴ・グロールがスタジオを提供した以上のサポートをしたのかどうかはわからないけれど、彼の存在がなければ、このアルバムは誕生しなかったのではないか。
これからも良きパイセンとして、後輩たちを支えてほしいと思う。
<了>