- アーティスト:ティーンエイジ・ファンクラブ
- 発売日: 2021/04/30
- メディア: CD
ティーンエイジ・ファンクラブは、私にとっては未だ新進気鋭の印象があるのだけれど、それは音作りがずっと変わらず爽快で瑞々しいからだろう。
実際にはデビューアルバムのリリースが1990年だから、もう30年以上のキャリアになるベテランだ。
スコットランドはグラスゴーが生んだオルタナティヴ・ロックバンド、と紹介されることが多いけれど、ギター・ポップ・バンドと呼ぶほうがふさわしい気がする。
アメリカのその種のバンドには、少しやんちゃで弾けたキャラが多いけれど、ティーンエイジ・ファンクラブは、思索的で憂いがある。
そこが魅力であって、日本人にもウケる要素だと思うけれど、アメリカ人には今ひとつピンとこないのか、アメリカでのセールスはいまひとつ。
しかしイギリスでは安定した人気を誇っている。
そんな彼らの11枚目のアルバム『Endless Arcade』
前作『Here』を2016年にリリースしたあと、なんと2018年に結成以来のメンバーのひとり、ジェラード・ラヴが脱退。
ヴォーカルとベースのみならず、ソングライティングでもキーマンだっただけに、その影響が心配された。
ノーマン・ブレイク、レイモンド・マッギンリー、そしてジェラード・ラヴというタイプの異なるソングライターが、それぞれに個性を放ちながらリードヴォーカルをとることが、このバンドの魅力だったからだ。
ところが、である。
心配は無用だった。
それまでギターとキーボードを担当していたデイヴ・マクゴワンがベースに転向。
キーボードに新メンバーを迎えて態勢を整えた。
これには“バンドサウンド”に対する、彼らの強い思い入れが感じられる。
ソングライティングはノーマンとレイモンドの2人が引き続き担当。
今回のアルバムの制作は2019年にスタートしていたらしいけれど、コロナ禍の影響により、リリースやツアーの予定は、いったん白紙に。
それがようやく21年4月にリリースとなった。
数曲が先行公開されていて、なかなかの出来栄えだったから安心していたけれど、こうやってアルバムになると、やはりうれしいし聴き応えがある。
リリース元の紹介によれば「今回も持ち前の美メロとハーモニーをたっぷり楽しめる傑作」「聴く者に柔らかな希望と癒しをもたらす」とのこと。
とびきりキャッチーと言える曲はないので、さすがにそれは盛り過ぎかなと思いつつも、いまの時期だからこそ味わい深い作品になっていると思う。
<了>