おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也

山下達郎サンデーソングブック 2020年03月01日「ひなまつりガールシンガー・グループ特集」書き起こし

 

達郎氏による曲の解説部分を書き起こしています。インフォメーションやリスナーからのメッセージは割愛しています。 ネットに音源があるものは張り付けていますが、オンエアされた音源とは異なる場合が多々あります。

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1. ミラクル・ラブ / 竹内まりや
2. BABY, BABY (I STILL LOVE YOU) / THE CINDERELLAS
3. ALL FOR THE LOVE OF MIKE / DIANE CASTLE
4. BE GOOD BABY / JACKIE DE SHANNON
5. DAY AFTER DAY AFTER DAY / JEANNIE LAMBE
6. WHEN THE LOVING ENDS / JULIE GRANT
7. GOD ONLY KNOWS / JOEY HEATHERTON
8. WITH A KISS / KIKI DEE
9. HOME OF THE BRAVE / BONNIE & THE TREASURES
10. 真冬のデイト / 竹内まりや

 

3月3日、ひな祭り。
昔から、NHKのレギュラー時代から、この季節になりますと、ひな祭り特集・ガールシンガー、ガールグループ、ガールポップの特集を、ずーっとやってまいりました。
でも、始めたころは80年代でしたので、そうした60年代初期のアメリカ、イギリスのアイドル歌謡のようなものですけども、もう2020年でございますので(笑)
もう、50年、60年前の半世紀前の音楽を扱っておりますので、どれだけ普遍性が保てるかなんですけれども。
どっこい、そうはいかない(笑)
あのころの音楽は、やっぱりアナログ。
作曲家も編曲家も、そうしたロックンロールをベースにしまして、一所懸命作ってた時代であります。
ビートルズ以降のビート・グループから言わせると「あんな軟弱な砂糖菓子みたいな音楽」って言いますけども、とんでもありません。
作曲家、編曲家、そしてシンガー。
そうしたもののコラボレーションといいましょうか、そういうものが化学変化を生みまして素晴らしい作品がたくさん生まれました。
で、そういうものを、今日はお聴きをいただきたいと思います。
今日、お聴きをいただくガールポップ、ガールシンガーは、ほとんどヒットしておりません。
チャートに入っていない曲ばっかりなんですけれども、十分に今の鑑賞にたえるクオリティーを持っております。
サンデーソングブックが自信をもってお届けいたします『ひな祭り、ガール・シンガー、ガール・グループ、ガール・ポップ特集』でございます。


まずは、竹内まりやさん。
1992年、シングル「マンハッタン・キッス」のカップリングで、昨年の「ターンテーブル」にも収録されております。
牧瀬里穂さんに書いた曲のセルフカバー「ミラクル・ラブ」

ミラクル・ラブ / 竹内まりや



 

BABY, BABY (I STILL LOVE YOU) / THE CINDERELLAS

60年代前半が中心ですが、アイドル歌謡の全盛期が終わりかけたころに名曲が多いんですが、ほとんどヒットがないという。
まずはシンデレラズ。
同名異グループがたくさんありますが、これは黒人のヴォーカル・グループです。
変名です。元の名前はクッキーズ。
ビートルズがカバーした「チェインズ」というヒット曲がありますが、クッキーズはもともとセッショングループで歌のうまい人達なので、ザ・ハニー・ビーズ (The Honey Bees)とかパリセイズ (The Palisades)とか変名でたくさん作品を作っています。
これはシンデレラズの名義で出ました1964年のシングルです。
作曲はラス・タイトルマンとシンシア・ワイル。
プロデュースはバリー・マンとラス・タイトルマン。豪華メンバーです。
クッキーズはだいたいアール・ジーンがリード・ヴォーカルですけど、この曲はマーガレット・ロスがリード・ヴォーカルをしています。
まったくチャートに入りませんでしたが名曲です。

 

続きましてこれも1964年の作品。
歌ってますのがダイアン・キャッスル。
シングルが2枚しか確認されていません。
しかもこの曲はB面です。
アレンジがチャーリー・カレロですが、全くのウォール・オブ・サウンドの世界です。
ハル・ブレインそっくりに叩いている人は一体誰なんでしょう。ニューヨークレコーディングだと思いますが。

ALL FOR THE LOVE OF MIKE / DIANE CASTLE

曲を書いてるジョン・グルックという人は、レスリー・ゴアの「IT'S MY PARTY」の作曲者です。
ロンダ・ロバーツという共作者も大変有名な昔からいるニューヨークの作家です。
セッション・シンガーくさい感じがしますが(笑)クラブ・シンガーとか。
いわゆるアイドル・シンガーじゃないですね。ちゃんとした歌い手です。

 

次はジャッキー・デシャノン。
作曲家、シンガーとして大変有名でヒット曲もたくさんありますが、1964年にジャック・ニッチェがプロデュースとアレンジを担当しまして、ロンドンで、アビー・ロード・スタジオで録音されました。ジャック・ニッチェのアレンジなので、アメリカぽく聞こえます。

BE GOOD BABY / JACKIE DE SHANNON

曲もジャッキー・デシャノンとジャック・ニッチェの共作です。
これはイギリスでしか発売されなかったシングルで、アメリカでは未発売なんです。
ですのでアメリカのラジオでかからないので全然知りませんでしたが、70年代に入ってリバティーがジャッキー・デシャノンの廉価盤を出したときに、この曲が入ってて「なんていい曲なんだろう」と思いました。
二十歳そこそこですかね。
そのときはこれがアビー・ロードのレコーディングとか何も知りませんから、あとから知ったわけです。
いずれにしても名曲です。

 

ことほどさように昔は本当にガールポップなんて資料がなくて、曲はいいけれど、どこの誰かわからないのばかりで。
特にアメリカはまだいざしらずイギリスのガール・ポップは何の資料も日本に入ってきませんし、レコードも出ませんので、知らないことばかりでしたが、だんだん明らかになるにつれて、ウォーカー・ブラザーズみたいなもんですが、イギリスは曲もいいし歌もうまいし、レコーディングの技術も高いし、名作がたくさんあるものを、少しずつ少しずつ買っていくという、そういう感じです。
ですので、UKガールシンガー、ガールグループに素晴らしいのがたくさんありますが、そんな中から1枚。

ジーニー・ラムというジャズ系のシンガーなんですが、この人の1967年のシングル「DAY AFTER DAY AFTER DAY」。
曲を書いてるのはジョン・キャメロンで、イギリスのテレビとか映画の音楽をたくさん作ってる人なんですが、我々にとっては、C.C.S.(集合意識協会)というセッション・ミュージシャンがつくったグループがあるんです。
それが69年に「Whole Lotta Love(胸いっぱいの愛を)」のインスト盤を出すんですが、それが向こうでけっこうヒットして、ミッキー・モストのプロデュースですが、それのリーダーだった人がジョン・キャメロンで、そのペンになる曲です。
プロデュースのスパイク・ヒートリーはベーシストで、ジミー・ペイジなどと一緒にセッション・ミュージシャンをやっていて、ロッド・スチュアートなんかでクレジットが見られる人です。
そうしたイギリスのスタジオシーンが、ジャズのうまい女性シンガーを、ポップヒットを狙って作ったんだと思われますが、チャートには入っていません。
このジーニー・ラムという女性シンガーは、オーストラリアに移住して活躍したと資料には書かれています。
この曲は67年の曲なので、なんとなくジミー・ウェッブを彷彿させる、素晴らしい曲とアレンジです。

DAY AFTER DAY AFTER DAY / JEANNIE LAMBE

 

こういうUKポップはいい作品が多いというか、当時聞けなかったので感慨もひとしおなんですが、もう1曲。
ジュリー・グラント。
このひともイギリスのポップシンガーですが、トニー・ハッチが名曲をたくさん書いております。
これもそうした1曲で、彼女にとってはラストシングルになります1965年の作品。
プロデュースとアレンジはトニー・ハッチ。こんなのは昔は聞くことすらできなかったのですが、今は全部CDになって手軽に聞ける。Spotifyとかで簡単に聞けてしまうという、便利ですけれど、なんとなく努力をしないで(笑)という世の中になってきました。

WHEN THE LOVING ENDS / JULIE GRANT



次はアメリカに戻ります。
歌っているのはジョーイ・ヘザトンという、いわゆるセクシー・アイドル、グラドルですね。
この人が1972年にアルバムを出しまして、『THE JOEY HEATHERTON ALBUM』という。
これがなかなか力作で、この中にビーチ・ボーイズの「GOD ONLY KNOWS」が入ってまして、これがなかなかいい出来です。
これも昔はレアで手に入らなかったのですが、今はもうCDで出てますので、この人のキャリアの全曲が入っている72年のアルバムから。

GOD ONLY KNOWS / JOEY HEATHERTON


 

プロダクションチームがスコッティブラザースとトミー・オリバー。
いわゆるミドルオブザ・ロードの重鎮ですので、ちゃんとした出来です。演奏もちゃんとしています。歌が全然ヘタじゃないので、ちゃんと聞けます。

 

またブリティシュに戻ります。
この10年くらいでいちばん欲しいと思ったシングル、キキ・ディーの60年代のフォンタナ時代のシングルでして、でもなかなか手に入らなくて。
キキ・ディーはエルトン・ジョンに拾われてから、そちらの方ではるかに有名になっちゃったんですけど、僕は圧倒的にフォンタナの60年代が好きで。
2011年に全部入ったCDが出まして、それで全部聞けるようになりました。
でもやっぱりオリジナルシングル欲しいな、EP欲しいなと。
1966年に出たデビュー・アルバム『I'M KIKI DEE』に入ってる1曲。
ジョージ・フィショフとトニー・パワーズの共作、フィショフパワーズは、サンデーソングブックで特集したことがあります。
スパンキー&アワ・ギャングとか名曲がたくさんありますが、フィショフパワーズコンビで、アレンジがレス・リード。悪かろうはずがない。
1966年、EPでも発売されました。

WITH A KISS / KIKI DEE



次はリクエストが来てました、ボニー&ザ・トレジャーズ「HOME OF THE BRAVE」
フィル・スペクターのレーベル、フィレスのサブ・レーベルのフィルダンから出しました。
当然、幽霊グループです。
歌っているボニーさんは本名がシャーロット・オハラといって、ゴールドスター・スタジオの近所に住んでいて、セッション・シンガーでいろいろと手伝いをしていた人です。
曲はバリー・マンとシンシア・ワイル。
プロデュースはジェリー・リオペル。このころからフィル・スペクターに絡まってきます。
アレンジはニック・デ・カロ。
1965年、全米77位のヒットですけど、同時期に競作で出ましたジョディ・ミラーが25位で勝ってしまいまして、知名度の差というのは恐ろしいものでございます。
でもこっちの方が音源としてはレアなので。
「HOME OF THE BRAVE」のボニー&トレジャーズをかけたのは、大瀧さん以外には僕だけでしょうね。電波に乗るというだけで貴重です。

HOME OF THE BRAVE / BONNIE & THE TREASURES

 

正直申し上げて、もう2020年なので60年代初期のこうしたガールグループ、ガールシンガー、今やっていいかなって躊躇もあったんですけども、やっぱり曲よし、演奏よし、歌よしでぜんぜん大丈夫だということを確認しつつ、安心しました。
まだ当分できそうでございます。
100年たってもかかるんじゃないか、という感じがいたします。

『ひな祭り、ガールシンガー、ガールグループ特集』ご清聴ありがとうございました。
今日の最後は竹内まりやさん、1995年のシングル「今夜はHEARTY PARTY」のカップリングでリリースしました。
もともとは森下恵理さんに提供した曲のセルフカバーでございます。
私、自分でドラムをたたいている「真冬のデイト」

真冬のデイト / 竹内まりや



<この項おわり>