おとのほそみち

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山下達郎サンデーソングブック06月21日「服部克久さん追悼 with 山下家」書き起こし

オンエアされた曲に関する達郎氏のコメントを書き起こしています(一部要約あり)。インフォメーションやリスナーからのメッセージは割愛しています。

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1. けんかをやめて / 竹内まりや "リクエスト" '87
2. 駅 / 竹内まりや "リクエスト" '87
3. シングル・アゲイン / 竹内まりや "クワイエット・ライフ" '92
4. すてきなホリデイ / 竹内まりや "ボナペティ!"
5. 最後のタンゴ / 竹内まりや "トラッド"
6. ボーイ・ハント (LIVE) / 竹内まりや "04/11/29 オーチャードホール"
7. SMOKE GETS IN YOUR EYES (LIVE) / 山下達郎 "19/01/18 新宿LOFT"
8. ずっと一緒さ (HOME KARAOKE) / 山下達郎 "おうちカラオケ TAKE OUT"

 


先週、私申し上げましたけれども、服部克久さんがお亡くなりになりまして。
近いうちに特集をさせていただくと申し上げたんですけど、この「近いうちに」という私のセリフがですね、なかなか信用できないという、口ばっかりでというそういうアレなので。
それで、メディアを拝見しますと、あまり服部さんのですね、そういうところに触れるメディアがありませんので。
それで、私、気が早いんですけれども、服部克久さんの追悼プログラムをですね、本日はやらせていただこうと思います。
私、山下達郎と、それから竹内まりやさんと、この二人のやつで55分十分に埋まりますので。
それでも55分足りないので。
今日はですね『服部克久さん追悼 with 山下家』
私と竹内まりやの作品で、服部克久さんにお願いしてるものを色々とですねピックアップして、今日はお聴きをいただきたいと思います。
服部さんの素晴らしいオーケストレーションをご堪能いただければと思います。

 

けんかをやめて / 竹内まりや

人生で特にアレンジメントは6万曲に及ぶという、そういう方なので、55分で何もできませんので。
私と竹内まりやさんの関係した作品に特化してですね、今日はお届けをしたいと思います。
人それぞれ、服部さんの思い出はたくさんあると思いますけれども、私のそうした作品と、それから色々とですね、お付き合いさせて頂いた思い出を挟みながら、今日は服部さんと私たちがご一緒させて頂いたお仕事を偲んでみたいと思っております。

私にとって、先生と呼ぶ方は、数人しか人生でおりません。
自分の子供の学校の先生は別にしましてですね。
服部さんは、そして数少ない先生とお呼びする方でございまして、これからも服部先生とお呼びしようと思います。
先週も申し上げましたけれども、私が初めて服部先生と仕事をさせて頂いたのは1978年、ただいまお聴きを頂いております竹内まりやのアルバム「リクエスト」のストリングアレンジをお願い致しました。
一番最初のセッションが、この「けんかをやめて」でございました。
以来33年、色々な形で助けていただきました。
それのとっかかりでございます。

色々とお話をしていきたいと思いますけれども、服部先生のですね、僕と竹内まりやの作品に関しましては、普通はこうしたポピュラーミュージックのストリングス編成ってのは6・4・2・2と言いまして
ファースト・バイオリン 6人
セカンド・バイオリン 4人
ビオラ、チェロが、それぞれ2人、6・4・2・2という、これが一般的なんです。日本では。
彼の場合には、それよりも大編成でストリングスをレコーディングします。
あくまで我々の場合だけですけれども。
他は知りません。
ですので、非常にゴージャスな響きになります。
この「けんかをやめて」なんか典型的でありますけれども。
「けんかをやめて」のレコーディングで、もう1曲レコーディングしましたのが、「駅」でありまして。
これも1987年のアルバム「リクエスト」に収めました。
こちらの方が、ストリングスが途中から出てきますので、そこのさわりをお聴きいただきつつ。

駅 / 竹内まりや

 

この曲で一番覚えてるのは、間奏がですね、はじめ服部先生がお書きになられた間奏はメロディーをなぞる形だったんです。
現場で服部先生に「メロディじゃなくてなんか違うフレーズに...」
「あ、そう。15分ぐらいちょうだい」って。
15分で、この間奏、書かれまして(笑)
それが、すごくよく記憶に残っております。

服部克久さん、1936年、昭和11年のお生まれであります。
皆さまよくご承知の通り、お父様が服部良一さんでございます。
高校を卒業しまして、パリの国立音楽院コンセルヴァトワール、そこに留学なさいました。
1958年に卒業されて、日本に戻って参りました。
時あたかもですね、テレビの勃興期でございます。
そっからテレビの中での色々と音楽に関わっていくんですけれども、当時はもう歌謡曲全盛でありまして、いわゆる歌謡作曲家という人たちなんです。
歌謡曲のヒット曲たくさん出してたんですけども、絶対的な編曲家不足でありまして。
特にですね、服部先生がですね、クラシックなアカデミックな編曲をする方って、とても少なかったんです。
でもクラシックはクラシックのヘゲモニーってのがありまして。
クラシックのアカデミズムと、それからポピュラーミュージックの、そうしたものと橋渡しと言いましょうか。
そういうところで、服部先生というのはすごく重要な役割を果たされました。
ですので、作曲家であるとか、編曲家であるとか、色々と呼び名はありますけれども、あの時代、服部先生がですね、日本の特にポピュラー・ミュージックの、おしゃれなですね、モダニズムとか、そういうようなものに貢献された業績というのは、本当に大きなものがあります。
我々は、遅れてきた世代ですので。
中学高校の頃は、それこそ「サウンド・イン・S」とか「ミュージック・フェア」とか、そういうようなものの、本当にきれいな、あのストリングスとそれからオーケストレーションが聴こえてました。
それが、服部先生でありまして、いつか、そういうのをお願いしようと思っておりました。
80年代に、まりやのアルバムでお願いすることになります。
で、味をしめまして。
本来は、ストリングス・アレンジだけっていうのは、ほとんどですね、やってくださらないんですけども、本当に良い時期でありまして。
1989年、竹内まりやのシングル「シングル・アゲイン」、これのストリングスお願いしまして。
専門的なことになりますけども、例えばハーモニックスとかですね、それからストリングスのディレイでフィードバックかけるとか、そういう指示をなさるという、そういうコンテンポラリなアプローチにすごく熱心でありまして。
メカ好きなんですよね。
携帯電話も、とにかく出たらすぐ買う。そういうメカがものすごくお好きで。あと強い。
やっぱりそういうことが、音楽家としてのスタンスにも、よく出ておられます。

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シングル・アゲイン / 竹内まりや


1989年、竹内まりや「シングル・アゲイン」、こういう具合に80年代、ストリングアレンジからまずお願いして、ずっと目論んでおりました、服部先生にすべてのオーケストレーションを頼みまして、スタンダードをやってみたいと、実験を色々重ねまして、私の「シーズンズ・グリーティングス」というクリスマスアルバムにつながるんですけど、それは今日の後半で申し上げたいと思います。

80年代90年代、いろいろなお願いをしまして、まりやの場合は、2001年のアルバム「ボナペティ」というのがありますが、この中に入っておりますクリスマス・ソング「すてきなホリデイ」という、ケンタッキーのですね、クリスマス・キャンペーンで作られた曲ですけれども。
これを全面的にオーケストレーションをお願いしまして。
せっかく服部先生の追悼なので、服部先生が全部なさったやつをですね、お聴き頂ければと思います。
竹内まりや2001年のアルバム「ボナペティ」から「すてきなホリデイ」
おなじみでございます。
夏にクリスマス。はい。

すてきなホリデイ / 竹内まりや



01年の「すてきなホリデイ」をお聞き頂いております。
とにかく服部先生の編曲はですね、ラインがきれいなんですね。美しいライン。
この番組で昔からよく申し上げておりますけれども、例えば、いいなと思う、例えばドラマーが全部ハル・ブレインだったとかですね。
そういうようなのと同じで、聴いて、このアレンジは、このグロッケンの音がとか。
そういうの全部服部先生だったというのが、僕の中高のときのですね、そういう記憶とともにありますので。
先ほどの「シングル・アゲイン」のライン、「駅」のライン、本当にメロディーラインが美しいんですけれども、それはまさに作曲家のセンスがあるアレンジメントなので。
そんな話を申し上げますと、照れ屋ですんで「ああ、そ」という感じで(笑)

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お次は2014年のアルバム『TRAD』に入っておりますタンゴ。
何しろ服部先生の世代ですから、何でもやれます。
フルバンやれる。タンゴ、カンツォーネ何でも来いという。
他にも前田憲男さん、宮川泰さん、同世代にみなさんオールマイティーな方がいらっしゃいます。
考えますと服部先生は1936年ですから、エルヴィス・プレスリーが1935年、ミッシェル・ルグランが1932年。
実際に同じ学校の先輩後輩同士で交流がおありでした。
だからロックンロールにも強いということがあります。
というわけでタンゴの編曲もまた素晴らしい。
2014年のアルバム『TRAD』から「最後のタンゴ」
珍しく伊集院静さんの作詞、作曲竹内まりや。

最後のタンゴ / 竹内まりや

 

NHKの「ラジオ深夜便」のために書かれた曲です。
伊集院さんの詞、服部先生のタンゴのアレンジ。大人の音楽でございます(笑)
スタジオ・ミュージック全盛の時代に生きた方なので、スコアを拝見してますとですね、例えばストリングスのアレンジもですね、ビオラから妙なところでチェロに交代するんですね。
「先生、これやるとダイナミックス変わりませんか?」
「うーん、これの方がね、弾きやすいんだよ」
「でもこれ音が、音量変わるでしょう?」
「音量変わったら、フィーダで直せばいいんだもん」
そういう短時間で仕上げるという合理性をですね、それを遺憾なく、そういうところで一言一言、出てくるんです。
そういうような想い出がたくさんあります。
というわけで、前半は竹内まりやさんの作品で服部先生にお願いしたものをお聞きいただきました。

前半の最後は、2004年に、服部先生の「音楽畑」のライブが100本到達した記念で、渋谷のオーチャードホールでライブを開きました。
そのときに竹内まりやがゲストで出まして、前年にお願いした竹内まりやのカバーアルバム『Longtime Favorites』という、いわゆる60年代ポップスを中心に、アビーロードでストリングスを録りました。
そのときにお願いしたなかから「ボーイハント」
コニー・フランシスがオリジナルで、日本では弘田三枝子さん、漣健児さんの日本語詞でおなじみ。
これをライブで歌ったときの録音が残っておりますので、前半はこれで締めたいと思います。
2004年11月29日、オーチャードホールでの竹内まりやwith服部克久、東京シティポップスオーケストラだったかな。「ボーイ・ハント」

ボーイ・ハント (LIVE) / 竹内まりや (音源なし)

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前半は竹内まりやさんの作品でしたが、後半は私の作品で。
なにしろ80年代の相性があまりにもよかったので、これはストリングスだけではもったいないと。
フル・オーケストラでお願いしようと。
で、思いつきましたのが、クリスマス・アルバムでございまして、1993年に出しました「シーズンズ・グリーティングス」
このなかで、スタンダード・ナンバーをですね、服部先生にお願いしまして、何曲かレコーディングいたしました。
そのとき、いろいろとお願いをしまして。
なにしろ、私、フランス近代が好きなので。ラヴェル、ドビュッシーが好きなので。
フランス近代で(笑)
それで当時はですね、服部先生はほんとに忙しくて。
服部家の家訓というのがありまして「来た仕事は、断るな」
ですので、殺人的なスケジュールで、そうなりますと行列を作ってる状態なので。
服部先生のご自宅にですね、押しかけまして。
私だけのために時間をください(笑)
それで「しょーがねーな」と(笑)
4日、5日、打ち合わせをさせて頂きまして。
で、それで最初にですねレコーディングしましたのが「煙が目にしみる Smoke Gets In Your Eyes」
そのレコーディングの、あれ一発録りですので、当然、歌も仮歌ですけれども、入れなきゃなんないので。
それで、一番最初に始めるときにですね、服部先生が一言、おっしゃったのが
「お前の好きなフランス近代にしてやったぞ」って(笑)
イントロが、ビオラとチェロの掛け合いで始まるという、これ非常にですね、すごい(笑)
今日はライブ・バージョンでお聴きをいただきます。
昨年、2019年1月18日に新宿LOFTでやりました、カラオケをバックにやりましたライブです。
P.A.OUTですけども、大きなホールでやるよりもライブハウスの方が、ちょっと歌がメロウになるんです。やさしい感じが出るので、今日はこれでいってみようと。

SMOKE GETS IN YOUR EYES (LIVE) / 山下達郎 (音源なし)

ライブハウスなので、マイクをオフらない(笑)
LOFTも大変でございますが、でもLOFTのオーナーの平野くんはですね、根性入っておりますから、あんまり心配しておりません(笑)

時間がなくなってしまいました。55分ではとても無理だとは予想はつきましたが。
今日は竹内まりやさんの作品中心で、私の作品は少なめで。
2008年の私の「ずっと一緒さ」
これのおうちカラオケバージョンを。
ライブでは意味ないので。服部先生のストリングスをかけないと意味ないので。

気の短い方でして、ある日、ある楽器のダビングで、いつも呼ぶ方がですね風邪ひいて来られなくなりまして。
若いミュージシャンが来たんですね。女性の。
その方がですね、「先生、これは、こうですか? これは、こうですか?」
そういうアレをしてると、だんだんと機嫌が(笑)
「パッとやって、パッと出来なきゃダメだ」っていうわけですね。
だんだんと機嫌悪くなってきて(笑)
私、横にいてですね、「先生、これ聞いてますよ」って。
その後の一言が、すごく印象に残ってるんですけどね。
「勉強は、学校でやれ」
やっぱり、パッと座ってパッとできないとダメだと。
すごくそういうところはですね、シビアな方でありまして、考えさせられました。

また、納涼夫婦放談のときにフォローします。
竹内まりやさんの思い出話もいろいろありますので。
今日は私の現場での思い出話を中心にお送りしました。

ずっと一緒さ(おうちカラオケ Take Out)/山下達郎(音源なし)

 

<了>