おとのほそみち

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BEAUTIFUL SCARS / MERRY CLAYTON (2021)

ビューティフル・スカーズ / メリー・クレイトン (2021)

 

メリー・クレイトンは1948年年生まれ、ニューオーリンズ出身のR&Bシンガー。

1963年にシングル「The Doorbell Rings」でソロ・デビュー。

また、エルヴィス・プレスリー、ジェイムス・テイラー、ビージーズなど、様々なアーティストのバック・コーラスを務める。

アカデミー賞受賞作『バックコーラスの歌姫たち(原題:20 Feet from Stardom)』にも、彼女のキャリアが描かれている。

 

なかでも、いちばん有名なのは、1969年、ローリング・ストーンズのアルバム『レット・イット・ブリード』の収録曲「ギミー・シェルター」。
ストーンズの代表曲のひとつでもある。

コーラスというよりは、ミック・ジャガーとのデュエットで、桁外れにパワフルなそのヴォーカルで、ロックファンの度肝を抜いた。

そもそもはボニー・ブラムレットが参加する予定だったらしいが、ブラムレットが体調不良で、代役としてクレイトンが起用された。

まったく人生、どう転ぶかわからない。

1970年、初のソロ・アルバム『ギミー・シェルター』を発表。

70年代には4枚のアルバムをリリースしたが、80年代以降は寡作になり、2021年にリリースされたこのアルバムは何と27年ぶりで、ようやく通算6枚目

それだけに、満を持してというか、相当気合が入っている。

プロデュースが大物ルー・アドラー。

演奏は、共同プロデューサーも努めるテリー・ヤングのキーボードに、ネイザン・イーストのベース、ハーヴィー・メイスンのドラムス、ハーブ・アルパートのトランペットと、この顔ぶれにそそられる人も多いのではないか。

タイトル曲「Beautiful Scars」はダイアン・ウォーレンの新曲。
また、コールドプレイのクリス・マーティンが楽曲を提供するなど、話題はてんこ盛りだ。

歌は、もちろん申し分ない。

1曲めは、あのレオン・ラッセルの名曲「A Song For You」。

クワイヤを伴っての熱い歌声に心が震える。

基本的には全曲ゴスペルだが、音作りはわりとコンテンポラリーなので、最近のR&Bが好きな人でも素直に聞けそうだ。

月並みな表現だが、ほんものの歌をじっくり聞きたいときにふさわしい1枚だ。

 

Beautiful Scars

Beautiful Scars

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<了>