PAGE 99 / PAGE 99
近年、聴き応えのあるAORというと、愛好家にはよく知られている通りオーレ・ブールドなどのヨーロッパ勢が中心。
“本家”であるはずのアメリカには、あまり元気がなかった。
たとえヒットしなくても、インディーズであっても、一定以上のクオリティがあれば愛好家は見つけ出し、SNSなどを通じて周知されるはずだが、それすらほとんどなかった。
しかしここへきて、ようやくと言うかやっとと言うか、注目すべきニューカマーが登場した。
PAGE99。
AORのファンなら誰でも、ペイジスとTOTOの「99」を思い浮かべるだろうが、実際これらに由来するネーミングらしい。
これでもう、音の方向性は察知がつく。
バンドではなく、ジョン・H・ニクソンという人によるプロジェクトが、その実態。
この人、バークリー出身で50歳代というから、新人といっても若くはなく、ニューエイジ系の作品を数多く手掛けてきた実績があるそうだ。
もともとTOTOなどが好きで、近年の欧州AORの活況を知り、んじゃ俺も、と立ち上げたのがこのプロジェクトらしい。
ほとんどの演奏がニクソンによるマルチプレイだが、サポートしているギタリストもいるようで、ヴォーカルも複数名いる。
収録曲のうちカヴァーが3曲。
エアプレイ「Nothing You Can Do About It」、ペイジス「Who's Right Who's Wrong」、TOTO「Lea」
自らのルーツを示した面もあるだろうし、愛好家への“つかみ”でもあるだろう。
あまりにもオリジナルまんまな気もするが、仕上がりはいい。
それ以上に見事なのが、オリジナルの数々。
メロディーはキャッチーだし、アレンジはこなれているし、演奏も抜けがよくて心地いい。
近頃のポップス、特にワンマンプロジェクトだと、どうしてもコンピュータメインの音作りになりがちで、デジタルくささが鼻につくことが、ままある。
ところが、このアルバムは、音に人肌感があるというか、スタジオの空気が鳴っている感じがリアルで、あの時代の音作りへのこだわりが、随所に感じられる。
アルバムジャケットの野暮ったさがいささか気になるが、音は極上のAOR。
遠くない将来の第二弾を期待したい。
<了>