おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



【AOR】 ペイジ99 / ペイジ99 (2021)

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ペイジ99

ペイジ99

  • アーティスト:ペイジ99
  • Pヴァイン・レコード
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近年、聴き応えのあるAORというと、愛好家にはよく知られている通りオーレ・ブールドなどのヨーロッパ勢が中心。

“本家”であるはずのアメリカには、あまり元気がなかった。

たとえヒットしなくても、インディーズであっても、一定以上のクオリティがあれば愛好家は見つけ出し、SNSなどを通じて周知されるはずだが、それすらほとんどなかった。

しかしここへきて、ようやくと言うかやっとと言うか、注目すべきニューカマーが登場した。

PAGE99。

AORのファンなら誰でも、ペイジスとTOTOの「99」を思い浮かべるだろうが、実際これらに由来するネーミングらしい。

これでもう、音の方向性は察知がつく。

バンドではなく、ジョン・H・ニクソンという人によるプロジェクトが、その実態。

この人、バークリー出身で50歳代というから、新人といっても若くはなく、ニューエイジ系の作品を数多く手掛けてきた実績があるそうだ。

もともとTOTOなどが好きで、近年の欧州AORの活況を知り、んじゃ俺も、と立ち上げたのがこのプロジェクトらしい。

ほとんどの演奏がニクソンによるマルチプレイだが、サポートしているギタリストもいるようで、ヴォーカルも複数名いる。

収録曲のうちカヴァーが3曲。

エアプレイ「Nothing You Can Do About It」、ペイジス「Who's Right Who's Wrong」、TOTO「Lea」

自らのルーツを示した面もあるだろうし、愛好家への“つかみ”でもあるだろう。

あまりにもオリジナルまんまな気もするが、仕上がりはいい。

それ以上に見事なのが、オリジナルの数々。

メロディーはキャッチーだし、アレンジはこなれているし、演奏も抜けがよくて心地いい。

近頃のポップス、特にワンマンプロジェクトだと、どうしてもコンピュータメインの音作りになりがちで、デジタルくささが鼻につくことが、ままある。

ところが、このアルバムは、音に人肌感があるというか、スタジオの空気が鳴っている感じがリアルで、あの時代の音作りへのこだわりが、随所に感じられる。

アルバムジャケットの野暮ったさがいささか気になるが、音は極上のAOR。

遠くない将来の第二弾を期待したい。

 


<了>