いやはや、これがサブスクで聞けるとは、なんと喜ばしいことか。
ロバータ・フラックが1969年にリリースしたデビューアルバム『ファースト・テイク』のデラックス・エディションである。
私が最も好きな女性シンガーで、日本では「やさしく歌って」ばかりがやたらと有名だが、デビュー当時からその才能は傑出していた。
といっても、私も当時はまだコドモであって、大学に入ったころに初めて聞いたのだが、気品と色気が絶妙に混ざりあった歌と演奏に、どはまりしたものだ。
デビューアルバムといっても、彼女はすでに30歳を過ぎていて、決して若かったわけではない。
ナイトクラブなどでキャリアを重ねて、ようやくデビューを果たしたそうな。
そして、のちにこのアルバムは名盤としての評価が定着するが、リリース当初はそうでもなかったらしい。
まあ、地味と言えば地味だし。
だが、このアルバムに収録された「The First Time Ever I Saw Your Face(愛は面影の中に)」が、2年後にクリント・イーストウッドの初監督映画『恐怖のメロディ』で使われることになった。
車を運転中、ラジオでこの曲を聞いたクリントが気に入り、直接ロバータ・フラックに電話したそうな。
この映画をきっかけにして注目が集まり、なんとこの曲は1972年の全米年間チャートで1位を記録するほどのメガヒットになった。
合わせてこのアルバムも、一気に売れて、評価も高まったというわけだ。
まったく、何がどう転ぶかわからない。
で、リリースから50周年の2019年にデラックスバージョンが企画されたのだが、何の理由からか遅れて、2020年夏にリリース。
この手のデラックス盤にありがちなように、フィジカルのみ(2CD+1LP)
海外サイトへのオーダーでしか手に入らなかったので、躊躇したままになっていた。
それがなんと2021年2月にサブスクで聞けるようになったのだ。
オリジナル8曲に、「愛は面影の中に」のシングルバージョンなどのボートラ数曲。
さらに、未発表デモ音源が10曲以上もあって、全24曲。
デモといっても、彼女の歌世界はやはり圧巻。
かのマーヴィン・ゲイの「Ain't No Mountain High Enough」もやっていて、聴きごたえがありまくり。
ほんとに良く出してくれたものだと思う。
もう80歳代の半ばだから新作やコンサートは望めないだろうけれど、お元気でいていただきたい。
Roberta Flack - “Hush-A-Bye” from FIRST TAKE: 50th Anniversary Edition
<了>