バート・バカラック、92歳にして、枯れた味わいどころか、むしろ瑞々しく心に沁みるメロディが満載の新作が誕生した。
相方のダニエル・タシアンは、ナッシュヴィル在住の40代のソングライター/プロデューサー。
昨年のグラミーで、アルバム・オブ・ザ・イヤーに輝いたカントリー・シンガー:ケイシー・マスグレイヴスの『GOLDEN HOUR』をプロデュースした人だ。
バカラックはこのアルバムがたいそうお気に入りでダニエルに関心を抱き、人を介してコンタクトをとったらしい。
そして90代と40代、世代を超えたコラボアルバム『ブルー・アンブレラ』が誕生した。
バカラックの新曲のみによるアルバムは、2005年の『アット・ジス・タイム』以来、15年ぶり。
そもそもは二人の書き下ろした新曲5曲によるデジタルEPとしてリリースされたのだが、高い評価を受けて2曲が追加された。
ヴォーカルはすべてダシアンで、バカラックは作・編曲+ピアノ演奏が2曲。
これはコロナウィルスの影響で、移動が制限されたためらしい。
だが、バカラックが参加していない曲にも、彼らしさがたっぷり。
美しくメランコリックなメロディーが満載で、はじめて聴くのにどこか懐かしい。
これは、ダニエルのプロデューサーとしての手腕もあっての成果だろう。
そのダニエルの歌は、ちょっと線が細くて頼りない感じもあるけれど、それなりに味わいがあって、曲の雰囲気にあっている。
このアルバム、フィジカルCDの発売は日本だけで、ライナーノーツはなんと大御所の朝妻一郎さん。
ストリーミングでも聞けるけれど、手元においておきたい一枚だ。
<了>