おとのほそみち

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山下達郎サンデーソングブック 2020年10月18日「ドゥー・ワップで棚からひとつかみ」書き起こし

オンエアされた曲に関する達郎氏のコメントを書き起こしています(一部要約あり)。インフォメーションやリスナーからのメッセージは割愛しています。リンクを張っている音源は、オンエアされた音源とは異なることが多々あります。

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1. DRIVE ME CRAZY / 水口晴幸 "BLACK OR WHITE" '80
2. SH-BOOM / THE CHORDS '54
3. WHY DO YOU HAVE TO GO / THE PARAMOUNTS '61
4. THE MAGIC KISS / THE KEYSTONERS '56
5. WHY / MAD LADS '62
6. HEARTBEAT / THE WHIRLWINDS '63
7. THIS SILVER RING / THE CASTELLES '54
8. CAN'T WE TALK THIS OVER / NOLAN STRONG & THE DIABLOS '57
9. I'LL CRY TOMORROW / THE SERENADERS '64

 

29年目に入りまして1462回目のサンデーソングブック。
先週、スイート・ソウル、久しぶりにお届けしましたけども、たいへんご好評いただきました。
今週は、さらに私の趣味でございます。
ドゥー・ワップ。
1950年代前半から60年代前半のアメリカのヴォーカル・グループの一連の流れをドゥー・ワップと称します。
先週と同じで、後付けの言葉でございますが。
はっきりとした定義とか、そういうものはありません。
何がドゥー・ワップで、何がドゥー・ワップでないか、そういう論争もずいぶん行われてきましたけれど。
それでも、ドゥー・ワップという音楽が発生してから、もう70年近くたちますので、そろそろ考古学的な世界になってまいりました。
私の一番好きなスタイルの音楽です。
ちょうど私の生まれたころから始まった音楽のスタイルでございます。
趣味がこうじて『ON THE STREET CORNER』なんていうですね、一人でアカペラでドゥ・ワップずいぶんやりました。
というわけで今日は『ドゥー・ワップで棚からひとつかみ』
これも久しぶりでございます。
一昨年、ワーナーでですね「ドゥー・ワップ・ナゲッツ」という3枚を発売しまして。
おかげさまでレコード大賞の企画賞をいただきました(笑)
その後、続編を計画しておりますけれど、いろいろ契約問題とか、そういうものが大変だったんですけども、ちょっと視点をかえて、インディで出そうかななんて思っております。
ですので、今日お聴きをいただく曲も、今度それが出る場合には収録される曲ばっかりです。
世界中で、いまドゥー・ワップ、これだけかける番組は、私の番組しかございません(笑)
でもですね、選りすぐりで、今日は届けしたいと思います。
日曜日の午後のひと時、今日も素敵なオールディーズソングで、今日はドゥー・ワップの至極の名曲をお届けします。

その前に、筒美京平さんがお亡くなりになりまして。
もう、いろんなところで、いろいろな方が、追悼の言葉を発していらっしゃいます。
私もですね、たくさんお便り、メールいただいております。
皆様の中の筒美京平さんの名曲もたくさんリクエストいただいておりますけれども、今日はドゥー・ワップ特集ですので。また日を改めてということで。
筒美京平さん、私も本当にかわいがっていただきました。
でも、具体的に仕事をしたことはですね、コーラスでお手伝いしたことが1回と、それから筒美京平さんの曲をですね、私、1回だけ編曲をしたことがあります。
1980年に元クールスのメンバーでありました水口晴幸さんのソロアルバムを作りましたときに、筒美京平さんに1曲書いていただきまして、それを私が編曲いたしました。
当時の「ライド・オン・イム」の演奏メンバーであります
青山純、伊藤広規、椎名和夫、難波弘之で、レコーディングしました。
思い出の1曲でございます。
今日は、これを追悼の気持ちを込めてお聴きいただきたいと思います。
1980年 水口晴幸さん「BLACK OR WHITE」のアルバムの1曲目「DRIVE ME CRAZY」
作曲筒美京平さん、作詞は水口晴幸さん本人でございます。

DRIVE ME CRAZY / 水口晴幸




SH-BOOM / THE CHORDS


1950年代前半から1960年代前半のほぼ10年くらいのあいだに、はじめはアフリカン・アメリカンのヴォーカル・グループでしたが、それを白人の子どもたちが真似してホワイト・ドゥー・ワップのムーブメントが発展してきました。
10年間くらいのあいだに、こうしたヴォーカル・グループがすごく流行りました。
今のラップ、ヒップホップに近い運動でした。
いつも申し上げていますがラップ、ヒップホップのおじいちゃんという感じ。

まずは超有名なところから。
2018年に私「ドゥー・ワップ・ナゲッツ」というシリーズ3枚、ワーナーから出しまして、おかげさまで大変好評いただいたんですが、本当にそれは私のライヴの開演前にかけております、私の個人コレクションをCD化したもので、すごくマニアックなコンピです。
それがご好評いただいたので、2019年にワーナーの「ポップ・ロック・ナゲッツ」というシリーズのVOL.8として、ドゥー・ワップを中心に編成されたコンピレーション、こちらはもうちょっと有名な曲がたくさん入っています。
これも大変いいコンピです。
皆川さんの解説がものすごく濃くて、解説だけでも読み応えがあります。ぜひともどうぞ。
その一曲目に入っていますザ・コーズ。
これはロックンロール発祥の一曲だと言われています。1954年、全米5位まであがりました。
当時としては、こうしたR&B系の曲としては大ヒットです。
クリュー・カッツというカナダの白人グループがこれをカヴァーして全米NO.1で、ミリオンセラーになりました。
お株を取られたんですが、こちらの方がオリジナルです。
歴史的にはクリュー・カッツはなくなりましたけれど、コーズは今でもラジオでたくさんかかる名曲です。
「SH-BOOM」、1954年、R&Bチャートでは2位。
あんまりマニアックでもしょうがないので、1曲目はこうしたスタンダードで。
思い起こせば高校生のときに、アトランティックのサブ・レーベル、キャットから出ていますが『ATLANTIC HISTORY OF RHYTHM & BLUES』というコンピが出まして、その中に入っていたこの「SH-BOOM」にものすごくノックアウトされました。
それと同時にFENのジム・ピューターというオールディーズのDJが、ある日かけてくれました、R&Bヴォーカルグループ特集、ドゥー・ワップの特集なんですが、それで人生が変わってしまいました。
以来、泥沼のように60年近くドゥー・ワップを聴き続けております。
今日はそんな中から私の個人コレクションからリマスターしてお聞きいただきます。
すべて私のライヴの開演前に会場で流しているものから、セレクトしています。
選びに選んだので名曲揃いです。ほとんどヒットはしていません。


次はテネシーのドゥー・ワップ・グループ、パラマウンツ。
同名グループはたくさんありますが、そのひとつで、リード・ヴォーカルはロバート・ナイト。
のちに「EVERLASTING LOVE」で大ヒットを出しますが、まだこの頃は十代だったそうです。
歌っているのが、デルズがVee Jayから出した曲のカヴァーで、「WHY DO YOU HAVE TO GO」。
デルズのオリジナルもいいですが、このパラマウンツも絶品です。

WHY DO YOU HAVE TO GO / THE PARAMOUNTS


録音はナシュビルなので音がいいです。
先程のコーズはアトランティックなのでトム・ダウドです。
今聴いても十分な音圧です。

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お次のキーストナーズはフィラデルフィアのグループ。
1956年の作品で、これはわりと知られた人気曲です。
できがいいので昔からラジオでよくかかってました。
1956年にマイナーレーベルのG&Mというところから出ましたけれど、その権利をEPICが買いまして、リレコしまして2ヴァージョンありまして、どちらもいいですが、僕はEPICが好きで。録音はいいので、結局それ(笑)
今日はそちらの方を。

THE MAGIC KISS / THE KEYSTONERS


これは白人のグループだと言われています。上手い。


さて、ドゥー・ワップとは何か?
いま一言でいいますと、1950年代初期から1960年代初期にかけてのアメリカのヴォーカル・グループ、最初は黒人のヴォーカル・グループが中心だったんですが、そのあと白人それもマイノリティーのイタリア系とかポーランド系とかの少年たちがドゥー・ワップをやりはじめて、これがホワイト・ドゥー・ワップ。
その中から白人と黒人の混成、クロスオーバーのグループがたくさん出てきて、そういうものが渾然一体となりまして、こうしたヴォーカル・グループの大ブームが起こりました。
星の数ほどレコードが出ています。
しかもインディーなので少ないものは500枚、それくらいしかプレスのないものは天文学的な値段がして、なかなか手に入りません。
CD化もされていますが、ほとんどがブートで板起こし。アナログ盤から録音したもので、そういうような音の良くないものでも我慢して聴かなければならない。
最近ではSpotifyとかiTunes、Amazonのprimeとかで出てきていますが、まだまだデジタル化が遅いという感じです。

お次はカリフォルニアにまいります。
ハリウッドのグループ、マッド・ラッズ。のちのスタックスのR&Bのグループとは違います。
カリフォルニアもドゥー・ワップが盛んな土地でした。
プロデュースはH.B.バーナムで、のちにR&Bの有名なアレンジャーになる人ですけれど、この人もこうしたヴォーカルグループで活動してまして、プロデューサーとしても活動をはじめました。
これはそんな一曲。1962年の作品で「WHY」。

WHY / MAD LADS


マッド・ラッズは、その前はヤング・スターズと名乗っていて、ドゥー・ワップ・グループは、名前が5つ6つあるグループがたくさんあります。
名を変えてはチャンスを窺う、インディーならではの感じです。


次はフィラデルフィアにまいります。
歌っていますのがホワールウインズ。
このグループの背景はなかなかおもしろいものがありまして、曲のクレジットにはヤング/エリスと書いてあるりますが、これが鈴木啓志さんの見立てによると、トランプスのアール・ヤングとジミー・エリスではないかと。
このグループには一時バニー・シグラー(Bunny Sigler)も入っていたと。
トランプスはその前にはエクスセプションズ(Exceptions)という名前で活動してまして、その前がこのホワールウインズということです。
みなさん、調べて調べて調べまくって。
こうした解説付きで、次の「ドゥーワップ・ナゲッツ」の4以降、鈴木さんの解説でやっていただきます。
ごたくはともかく非常に出来のいい曲です。
ベースのナンセンスシラブルが感動的です。
1963年の「HEARTBEAT」。

HEARTBEAT / THE WHIRLWINDS

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次は私が死ぬほど好きなフィラデルフィアのキャステルズ。
ジョージ・グラントという素晴らしい声を持ったシンガーで、フィラデルフィア・スイート・ソウルのいちばんの源泉だと解釈できます。
私も『ON THE STREET CORNER 3』で「HEAVENLY FATHER」をカヴァーしました。
今日は1954年の、これも素晴らしい一曲「THIS SILVER RING」

THIS SILVER RING / THE CASTELLES

メンバー全員このときまだ15とか16とか、そんな感じ。
キッズ・グループならではの甘さが死ぬほど好きです。


ドゥー・ワップという言葉ができたのは1960年代後半の話なんですが、そのときはこうした音楽のうち何がドゥー・ワップで、何がドゥー・ワップではないという論争がありました。
プラターズはドゥー・ワップじゃないとかありましたが、今はもう何でもかんでも一緒くたで、すごくファジーになってしまいました。聞いてよければいいという感じで。
そんな中でこのグループはドゥー・ワップシーンで大変有名なグループです。
ノーラン・ストロングというリードヴォーカルの人がやっておりましたデトロイトのザ・ダイアブロス。
私の『ON THE STREET CORNER』に入っています「THE WIND」のオリジナルです。
この曲も人気の高い曲です。1957年の「CAN'T WE TALK THIS OVER」

50年代の黒人ヴォーカルグループの極致です。

CAN'T WE TALK THIS OVER / NOLAN STRONG & THE DIABLOS

 

今日の最後は、ジョージ・カー。
スイート・ソウルからラップまであれですけど。
この人も最初はドゥー・ワップでありまして、セレネイダースというグループで活動しております。
このセレネイダースというグループは、他にもSidney Barnes、Timothy Wilson、そうそうたるソウルシンガーが所属しておりました。
すばらしい作品ばっかりなんですけども、時間がなくなってきましたので曲名だけ。
1964年の最末期ですね。「I'LL CRY TOMORROW」

I'LL CRY TOMORROW / THE SERENADERS



ドゥー・ワップで棚からひとつかみ、ご清聴ありがとうございました。

<了>