おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



山下達郎サンデーソングブック2022年12月29日「30th Anniversary PREMIUM LIVE」第二部

番組中のトーク部分、ライヴのMCを要約して記しています。

(MC):
70年代にこうした曲をやってた時代っていうのは、先程の例えば「Paper Doll」とかですね、ああいう曲をやってた時代っていうのは、いわゆるフュージョン全盛と言いましょうか、楽器演奏がすごく重要視されてた時代でですね。今よりはるかに。
今は本当にボーカル・オリエンテッドって言って、ボーカルがもうとにかくメインですけども。
70年代のそうしたサブカルチャーの、こうした日本のロックとか、そういうようなシーンはもう演奏力というものがもう第一でありまして。

それの原因はベンチャーズにあるんですけども。
ベンチャーズの60年代のブームの時に、とにかくエレキブームで、エレキギター弾けるやつが一番音楽的に優秀だという、そういうような風潮になってまして。
一番ギターが上手いやつがリードギターで、その次に上手いやつがサイドギターで、その次はベースで、ドラムとキーボードは別の部屋なんですけど、結局何もできないやつがボーカルという。
そういう60年代から70年代って、そういう風潮が日本で出来上がってしまったために、歌の音楽というのが非常に軽んじられていく傾向でした。

70年代の頭ぐらいの僕がシュガーベイブ作った時代っていうのは、まさにそういう時代なので。
それに伴って、いわゆる8ビートよりも16ビート。ロックよりもジャズの方が優秀だって(笑)
そういうような風潮がありまして。
それに抗ってシュガーベイブを作ったんですけどウケないという。
踊れない!もっと踊れるものやれ!
そういうもので生きてきまして。それがねすごく傷ついて。

ソロになってから、少し、そういうインストに重点を置いた16ビート系統の音楽をずっと作ってきまして。
もともと嫌いじゃなかったんで。
そうしたR&Bとか、フュージョンは、あんまり好きじゃないですけど、いわゆる16ビートのミュージックはすごく好きだったんで。
必然的に、そうしますと楽器のソロのパートが多くなり、そういう中で、あの当時は土岐英史さんとか向井滋春さんとか、そういう現役のジャズ・プレイヤーがすごく仲良くしてもらったので、そういう人たちをレコーディングに呼んだり、ライブでも手伝ってもらってという。
そうした長いソロの曲というのを好んで書いてた時代があります。

で最近は、もうそういうのをやっていると、どんどんどんどん演奏時間が長くなってきて、一体誰のライブだか分かんなくなってくるという、そういうようなものになってきますので。
最近は曲数が多いので、なかなかできないんですけど。
こういう時ぐらいはですね、そういう曲を何曲か聴いていただきたいと思います。

2011年から僕のこのグループでサックス・プレイヤーとしてやってもらってます宮里陽太君は、非常に優れた日本でも有数の優れたサックス・プレイヤーであります。
普段は彼のコンボで聴く機会があるんですけども、私のライブでも長いソロで、素晴らしいやつをやってもらってますけども。
その中でも出色のやつで、次に出るライブアルバムにも必ず入りますが。
今日のやつがうまくいけば入るかもしれません(笑)
それは分かりませんが、これからそんな感じで聴いていただければと思います(笑)

DANCER(LIVE) / 山下達郎 "22/12/16 TOKYO FM ホール"
MONDAY BLUE(LIVE) / 山下達郎 "22/12/16 TOKYO FM ホール"
SOLID SLIDER(LIVE) / 山下達郎 "22/12/16 TOKYO FM ホール"


(MC):
そんな訳で、ツアー、今年本当は終わるはずだったんですけども、コロナにかかってしまって6本来年に持ち越しになってしまいました。
でも来年もそれが終わったらすぐ、またツアーのスケジュールが組まれております。
その間に「JOY 2」のアルバムの準備をしなければなりません。

本当は、これよりはもうちょっとスモールな編成で70ぐらいになったらやってるかなとも思ってたんですが。
そしたら、こういう今日お聴きいただいたような曲ばっかりでやってたのかな、なんて思いますけど。
人生は、なかなか面白いもので、思った通りにいかないっていうか、いい意味でも、思った通りにいかないこともありますし。
でも本当に今日は30周年記念で、こういう狭いスペースでやらなきゃならないので、こういう形でレパートリーを選曲してみましたけども。

これも、なんか自分の人生を振り返ると言いましょうかですね、若い頃のフラッシュバック、デジャブが湧き上がってきました。
走馬灯のようになってきまして。
本当にそういう意味では、いい機会を与えてくれました。
それはもうこの東京FMという中途半端なホールのおかげであります(笑)

これがもしセットのちゃんとスペースがあってコーラスも乗るようなあれでしたら、また違うアプローチだったんでしょうけど。
このコーラスなしでやらなきゃいけないという縛りがありましてですね。
コーラスなしでやれる曲をずらっと並べたら、こういうことになったというわけで。
これまた本当にいい機会を与えられて。
またチャンスがありましたらまたやってみたいと。
こういうようなレパートリでやってみたいと思っておりますけども(笑)

お客様の中には、なんか今日は地味だったなとかですね、知ってる曲なかったとか。
でもね、初めに申し上げませんでしたけども、ただですから(笑)
それを、くれぐれもお忘れなきようにですね(笑)

皆様と楽しく過ごしてまいりました。そろそろ最後の曲になりつつあります。
(会場:えぇ~っ)
文字通り老人虐待ですよ、それって(笑)
病人の布団を引き剥がすようなことをしてるじゃないすか(笑)。

でもしみじみ考えてみると、コーラスなしでやれる曲って、多そうで少なそうで多そうで、でも、ちゃんとやれる曲ってそんなにないです、流れがね、なので選曲に苦労したんです、これだって!

で、おしまいにやる曲というのがですね、実はないんです。コーラスなしの曲で、そういう賑やかな曲がないんです。
どうしようかなと思ったんですけども。
だからもう涙を飲んでというかですね、コーラスなしでも、やっちゃおうという感じで。
コーラス必要な曲なんですけども、最後に景気付けるには、このぐらいじゃなきゃ駄目だろという曲なので。

皆さん、今日は本当に30周年記念でお集まりいただきまして本当にありがとうございます。
また来年もツアーやりますし、来年は何度も申し上げたんですけどライブアルバムが出ることになります。
それからRCA時代のLPがですね本当に高値を呼んでおりまして。
この間、イギリスのディーラーから聞きましたら「SPACY」が250ポンドで売られておりましてで冗談じゃないって。
それなので、来年はRCAのそのカタログを順次アルバムとして、LPとして発売してまいりますので。
転売ヤーの餌食にかかんないように、しばらくお待ちいただければと思います。

すいません、お寒い中をですねお運びいただきまして誠にありがとうございます。
それでは、最後にこの曲を。

CIRCUS TOWN(LIVE) / 山下達郎 "22/12/16 TOKYO FM ホール"


(番組トーク)
というわけでお聴きをいただきましたのは、先日12月16日、東京半蔵門の東京FMホールにてライブレコーディングされました「30th Anniversary PREMIUM LIVE」
私のサンデーソングブック30周年を記念して行われたライブの模様をお聴きいただきました。

今日お聴き頂いた曲は、一番最初が「Windy Lady」
1976年の私の「CIRCUS TOWN」のアルバムに入っております。
元々はシュガーベイブのレパートリーでありまして、最近はこのアレンジがシュガーベイブの時代の1975年に演奏していたシュガーベイブのアレンジでやっております。22歳の時のアレンジでございます。

続きまして二曲目は「素敵な午後は」
アルバム「SPACY」。1977年のアルバムに入っております。昔からのお客さんには、お馴染みの曲でございます。
冒頭にも申し上げましたけれども、コーラスなしのアレンジの曲は70年代の作品に圧倒的に多くてですね。
当時も学園祭とかですね、ライブハウスで。

あの当時は、村上ポンタさんのドラム、岡沢章さんのべース、松木恒秀さんのギター、坂本龍一さんのキーボード、土岐英史さんのサックス
という編成でですね、コーラスなしで、こういうような曲をずっとやっておりました。
その時代のアレンジメントとその時代の感じで演奏しました。

で、全部そんなのだと、しゃくに障るので。ニューアルバムから一曲「人力飛行機」

その後また70年代に戻りまして、78年の私のアルバム「GO AHEAD!」に入っております、これお昔からのお客さんには人気曲であります「Paper Doll」
こうした70年代の作品は楽器のソロが多い。
どちらかというとジャズとかまあ16ビートのジャズ・ファンクとか、そういうようなものに近いアプローチであります。
で、この「Paper Doll」が特にですねリズム・セクション4人がソロを掛け合うという、そういうような形で展開されるております。

で、もっとさかのぼりまして久しぶりにシュガーベイブのアルバム「SONGS」からのナンバーをやっております。
しかもリズムセクションを入れてやっているという、非常に珍しいパターンであります。
久しぶりに「過ぎ去りし日々」
これもおなじみの曲であります。

ここで14時台の第一部が終わりまして、後半はこれも77年のアルバム「SPACY」に入っております「Dancer」
これも割と人気曲でありますが、久しぶりにやりました。
サックスの宮里陽太さんの素晴らしいプレーをお聴きをいただきました。

その次はまた78年のアルバム「GO AHEAD!」に入っております「Monday Blue」
こういう曲、なかなかやる機会がありませんので久しぶりであります。

そしてその次は77年の「SPACY」、「SPACY」と「GO AHEAD!」オンパレードで「Solid Slider」
これもおなじみでありますが、これも久しぶりでございます。

で、最後にファースト・アルバム「CIRCUS TOWN」から。
本来はコーラスが入ってるんですけども、コーラスなしでアプローチしております。
でも昔はですね70年代はこういう形で演奏しておりました。
全9曲お聴きをいただきました。いかがでしたでしょうか。

演奏メンバーをもう一回ご紹介しておきます。
ドラムス小笠原拓海、ベース伊藤広規、ギター佐橋佳幸そして私山下達郎、キーボード難波弘之、柴田俊文、サックス宮里陽太という7人編成でのライブでございました。

私のサンデーソングブックは、いわゆるオールディーズの番組で、こういったライブの関係はないんですけども。
私自身がミュージシャンなので、30年番組を続けたリスナーの皆様への感謝の気持ちを込めまして30th Anniversary PREMIUM LIVEと題しましてお届けいたしました。
そういうわけで、おかげさまでサンデーソングブックの方も30周年迎えまして、まだまだ続いていくと思います。
今後も私山下達郎の活動の一環としましてオールディーズプログラムをご紹介しつつ、こうしたライブ活動も合わせて行ってみたいと思っております。

ご清聴ありがとうございました。

<第二部 了>