おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



山下達郎サンデーソングブック2022年1月23日『虎で棚からひとつかみ』

曲の紹介部分を要約して記載しています(青文字は書き起こし)。
ネットに音源があるものは貼り付けていますが、必ずしもオンエアされたものと同じではありません。

1. BLOW / 山下達郎 "レアリティーズ" '02
2. TIGER RAG / LES PAUL & MARY FORD '52
3. PAPER TIGER / SUE THOMPSON '64
4. TEACH ME TIGER / APRIL STEVENS '65
5. TIGER MAN / RUFUS THOMAS '53
6. TIGER IN THE RAIN / MICHAEL FRANKS "TIGER IN THE RAIN" '79
7. WILD AS A TIGER / THE ISLEY BROTHERS '65
8. TIGER BABY / SILVER CONVENTION "SAVE ME" '75
9. TIGER IN YOUR TANK / MUDDY WATERS "AT NEWPORT 1960" '60
10. EYE OF THE TIGER / SURVIVOR '82


番組の方はですね、時々干支の特集をしてきました。
去年は丑年なので「牛で棚からひとつかみ」
今年は寅年なんで、これ幸いと「虎で棚からひつかみ」
これでしのいでみたいと。
タイトル優先のこういう特集はですね、とかくこう曲があんまりおもしろくない、こじつけだとか、そういうようなのがありますので、そういうことの無いように(笑)
曲もいいけど、虎もいいという、そういうようなアレでがんばって、やりました。
今日は虎づくしでございます、「虎で棚からひとつかみ」

季節柄、こんな曲はいかがかなと「BLOW」。
ちょうどリクエストが来ていたので、今週は「クリスマス・イブ」2021年版に収録されているおうちカラオケのヴァージョン。
BLOW / 山下達郎

 

レス・ポール&メアリー・フォードの代表作。
ダビングに次ぐダビング、サウンド・オン・サウンド、テープの倍速、あらゆる手を駆使している。
TIGER RAG / LES PAUL & MARY FORD

 

カントリー系の女性シンガーのスー・トンプソン。
この曲は1964年、全米23位のスマッシュ・ヒット。
「張り子の虎」という意味のタイトル。
PAPER TIGER / SUE THOMPSON

 

タイガー、虎という存在は、多分に性的ニュアンスを持つ動物です。
他にも、馬とか、ライオンもそうです。だいたいネコ科はそういう感じですけど。
でもトラは特にポピュラーミュージックではそういう感じが大きいようです。
そんな中の典型の一曲、エイプリル・スティーブンス。
のちにニノ・テンと組みまして「ディープ・パープル」という大ヒット曲を生みますけども。
エイプリル・スティーブンスの初期の一曲、これは完全にそういう世界の歌でございます。
1965年、チャートは86位とふるいませんで、けれども大変有名な曲であります。
マリリン・モンローがこれをカバーしてるという。うなずけます。
TEACH ME TIGER / APRIL STEVENS


次も有名な曲で、サン・レコードのサム・フィリップスのプロダクションによる、ルーファス・トーマスの最初期の一作。1953年の「TIGER MAN」。
プレスリーが1968年にカムバックしたときにこの曲を歌って、すごくいい出来だけれど、やはりオリジナルを聴かないと。
この曲のギターはたぶんスコッティ・ムーアだと思うが、素晴らしい。
TIGER MAN / RUFUS THOMAS


次はしっとりしたやつでマイケル・フランクス。
1979年のアルバム『TIGER IN THE RAIN』はジョン・サイモンのプロデュースで、それまでのトミー・リプーマとは違った音がしている。
こういったときでなければマイケル・フランクスがかけられないと。
歌詞はどうとも取れるが音は柔らかい。
TIGER IN THE RAIN / MICHAEL FRANKS

 

 

後半はロケンロールな世界。アイズリー・ブラザーズの1965年のシングル「WILD AS A TIGER」。
ギターはジミ・ヘンドリックスで、それで有名になっったものだから、ジミ・ヘンドリックスの作品だかだかアイズリー・ブラザーズのシングルだかわからなくなっている。
ジミ・ヘンドリックスのほうは「WILD LITTLE TIGER」になっているが同じ曲で、オリジナルはアイズリー・ブラザーズ。
アイズリー・ブラザーズも歌の中ではWild little tigerと歌っている。レコード会社のミスプリか?
WILD AS A TIGER / THE ISLEY BROTHERS


シルヴァー・コンベンションの1975年のアルバム『SAVE ME』に入ってる「TIGER BABY」。
TIGER BABY / SILVER CONVENTION 


番組の最初の方に申し上げましたみたいに、このタイガーという言葉には、特に英語圏では性的ニュアンスが非常に濃いんですが、一番端的に表しているのがブルースの世界でありまして。
マディ・ウォーターズが1960年にレコーディングしました「Tiger In Your Tank」という曲があります。
作曲したウィリー・ディクソンが、エッソのガソリンのキャンペーンで、ガソリンスタンドの給油塔の上に虎が乗っかってるという「Put A Tiger In Your Tank」というコピーを見て、ウィリー・ディクソンが作ったと。
もうそのものズバリのですね。メタファーであります。
「お前のタンクにオレのタイガーを突っ込む」という、そういうメタファーに満ちた歌であります。
1960年のニューポート・ジャズフェスティバルでのライブレコーディングが有名であります。
オーティス・スパンのピアノがすばらしい、ジェイムス・コットンのハープがすばらしい。
 TIGER IN YOUR TANK / MUDDY WATERS

 

タイガーといえば日本ではこれが今はいちばん有名なんじゃないかと。
1982年、映画『ロッキー3』のテーマ・ソングで思い切りヒットした「EYE OF THE TIGER」。
日本でこのサヴァイヴァーは一発屋みたいにいわれていますが、アメリカではベスト10ヒットが何曲もあります。
シカゴのグループでThe Ides of Marchの元メンバーが何人かいます。
私はサヴァイヴァーが結構好きで、「EYE OF THE TIGER」のシングルを買ったりしました。
『ロッキー3』のタイアップで全米NO.1を6週間続けた大ヒット。
ヒットし過ぎたので大変だと。タイアップの怖さということを思わせる曲を最後に。
「虎で棚からひつかみ」ご清聴ありがとうございました。
EYE OF THE TIGER / SURVIVOR


<了>