中高年以上の世代には、映画「ブラック・レイン」を印象深く覚えている方が多いのではないか。
監督はリドリー・スコット。
公開は1989年。もう30年以上前になる。
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ブラック・レイン デジタル・リマスター版 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
- 発売日: 2011/04/28
- メディア: DVD
BLACK RAIN - Trailer - (1989) - HQ
アメリカ映画なのだが日本人俳優の出演者が非常に多く、日米合作のような印象の作品だ。
主演はアメリカの刑事役にマイケル・ダグラス。その相棒は若手の注目株だったアンディ・ガルシア。
日本側の刑事に高倉健。彼らの敵となる犯人が松田優作。
その他にも神山繁、安岡力也、内田裕也、ガッツ石松、若山富三郎、國村隼ら、いわゆるひとクセある個性派が顔を揃えた。
話の展開は割とシンプルだ。
日米の刑事達が協力して、逃亡する犯人と戦い逮捕するというもの。
当初はぎくしゃくした関係だったマイケル・ダグラスと高倉健が徐々に信頼関係を結んでいくという、男の友情の物語でもある。
この映画の公開直後に松田優作さんが急死したことから、なおのこと印象深い作品になった。
そしてこの映画の撮影中に優作さんはすでに癌に侵されていたことが明らかにされ、彼の役者魂が改めて評価されるとともに、その早い死が強く惜しまれた。
音楽はハンス・ジマー。
今では、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞それぞれ10回以上のノミネートを誇る、映画音楽の巨匠である。
「ブラック・レイン」を手掛けた時はまだキャリアの初期だが、さすがに完成度は高い。
この動画を見て欲しい。
セリフも効果音も全くなく映像と音楽だけである。しかし実に味わい深い。
Hans Zimmer - Black Rain (Final Ending Score)
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主題歌の「I'll be Holding On」もハンス・ジマーの作曲で、作詞はウェル・ジェニングス。
歌っているのはグレッグ・オールマン。
アメリカを代表するサザンロックバンド、オールマン・ブラザーズの主力メンバーの一人だ。
オールマン・ブラザーズが活躍していたのは主に1970年代で、解散と再結成を何度か繰り返すが、 2014年に事実上活動を停止。
2017年に惜しくもこのグレッグ・オールマンは他界。
また同じくオリジナルメンバーのブッチ・トラックスも死去する。
しかし今でもアメリカのロックバンドのレジェンドとして高く評価されており、発掘されたライブ音源などが度々リリースされている。
グレッグ・オールマンはソロ作も多い。
オールマン・ブラザーズバンドは、主にギターを中心としたアンサンブルを聴かせるバンドだが、ソロではその渋く味わい深いボーカルをじっくり聴かせてくれる。
この「ブラック・レイン」の主題曲もそんなグレッグ・オールマンの個性が生かされた曲だ。
Gregg Allman - I'll Be Holding On [Black Rain 1989 Soundtrack]
このグレッグ・オールマンの名唱に挑戦するかのように、西城秀樹さんがこの曲をカバーしている。
1991年5月に東京・厚生年金会館で開催されたデビュー20周年記念コンサートで披露され 、『HIDEKI SAIJO CONCERT TOUR '91 FRONTIER ROAD』に収録された。
最も直近での再リリースは2015年のDVDセット『THE STAGES OF LEGEND -栄光の軌跡- HIDEKI SAIJO AND MORE』、9枚組の中の4枚目である。
映画の主題曲をカバーするというのはなかなか難しい。
当然のことだが、映画のコンセプトとともに作品の世界観が完全に出来上がっているからだ。
その映画のファンにしてみれば、カバーでオリジナルのイメージを壊して欲しくないと思うのは当然だろう。
秀樹さんはあえて大きくアレンジを変えることなく、原曲のイメージに近いかたちでこの歌を歌いこなしてると思う 。
特にラストの歌い回しは圧巻だ。
演奏も達者である。
前半は音数を非常に少なくして歌を引き立てている。
ギターは織田哲郎さんだろうか、これもオリジナルに匹敵する出来栄え。
中盤以降、素晴らしい泣きのギターソロから、一気に畳み掛けるように、演奏も歌も盛り上がっていく。
この時、秀樹さんはまだ三十歳代半ばである。
今この年齢で、これほどの歌が歌える男性歌手は、日本にどれだけいるだろうか 。
<この項おわり>
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