FM COCOLOで毎週月曜日にオンエアされている「J-POP LEGEND FORUM」を毎週興味深く聴いている。
DJは田家秀樹氏。
番組ブログの紹介文をそのまま引用すると
「音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。」という内容。
楽曲制作やプロモーションなどの苦労話や裏話、エピソードなどが次々と飛び出すのだが、きっと今だから言えることもたくさんあるのだろう。
ベテランの音楽評論家らしく田家氏のナビゲートも巧みで、決して話のプロではない人からも、うまく話を引き出している。
2020年2月のゲストは音楽プロデューサーの草分けである寺本幸司氏、
4週間にわたって登場し、自身が担当した浅川マキ、りりィ、下田逸郎、桑名正博について語った。
桑名正博は私もかなりのファンだったので、楽しく興味深く聴いた。
なかでも驚いたのは、あの名曲「月のあかり」が留置場で誕生したということだ。
その寺本氏の話を以下に書き起こしておく。
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「哀愁トゥナイト」が20万枚くらいのセールスをして、バックオーダーがどんどん入ってくる時期に、桑名が大麻で捕まったんですよ。
この話はあまりラジオでしたくないんですけど、しなきゃならないのでしますけど、捕まった西麻布署から歩いて5分もしないところに僕の事務所があったんですけど、そこの留置所に収監されるわけですね。
1週間くらい経ったあとに面会しました。
いちばん始めに「寺本さんごめんなさい」っていうから、謝るとかよりも「大丈夫か?」って言ったら小声になりまして「いい曲ができました」って。
何もすることがないし、1人で独房の中にいるとき、こんな曲ができましたと、僕の目の前で小声で歌ったのが「月のあかり」なんですよ。
もうフルコーラスできている。
ちょっとゾクゾクっとして、そこにいる監視人がずっと見ていて、サビになると大きな声になるじゃないですか。
そろそろ時間ですって言われ、そこで桑名と僕は別れて下田(逸郎)に連絡して、「すごくいい曲を作りやがったよ」って話をした。そのあと出てきて、RCAの大きな客間で5、60人の記者とか集まって、テレビもきたから、そこで僕は一言、「罪を憎んで人を憎まずといいますけど、桑名の才能は世間で十分仕打ちも受けていますし、よろしくお願いします」って言って。
変な言い方ですけど、明くる日の記事もそんな悪くなかったんですよ。
ほっとして半年くらい経つかどうかで、桑名が懲役2年、3年の執行猶予だったんですけど、執行猶予期間中に小杉理宇造から「筒美京平さんと松本隆さんが、桑名さんが消えてしまうのはあまりにもったいないから、ぜひ1枚レコードを出そうと言ってきたんだよ」っていう話があって。
僕はまさかまだ執行猶予期間中だしと思ったけど「寺本さんの記者会見がよかったみたいで、桑名の人柄もあるし、そんなにヘビーな空気もないし」っていうので、桑名を大阪から呼んで作ったのが『テキーラ・ムーン』っていうアルバムなんですよ。
(書き起こしおわり)
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下田逸郎氏は当時活躍していたシンガソングライター。
小杉理宇造氏は山下達郎なども手掛けた音楽プロデューサー。
『テキーラ・ムーン』は1978年リリースの桑名のサードアルバム。
筒美京平&松本隆作品が中心だが、「月のあかり」が曲が桑名、詞は下田逸郎である。
『テキーラ・ムーン』のCDは現在、中古盤が流通している。
「月のあかり」はベスト盤にも収録されている。
シングルカットはされていないが、情感あふれる名バラードで、桑名の代表曲の一つに数えられる。
鈴木雅之、玉置浩二という日本屈指の実力派ヴォーカリストがカバーしているのも、名曲であればこそだ。
3人とも、しみじみとうまい。(鈴木雅之のは3分50秒あたり)
鈴木雅之 『鈴木雅之カヴァーアルバム「DISCOVER JAPANⅡ」ダイジェスト映像』
- アーティスト:玉置浩二
- 発売日: 2014/12/03
- メディア: CD
- アーティスト:鈴木雅之
- 発売日: 2014/09/10
- メディア: CD
<この項おわり>