オンエアされた曲に関する達郎氏のコメントを書き起こしています(一部要約あり)。インフォメーションやリスナーからのメッセージは割愛しています。
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1. 風の回廊 (コリドー) / 山下達郎 "ポケット・ミュージック 2020 リマスター"
2. THE WAR SONG / 山下達郎 "ポケット・ミュージック 2020 リマスター"
3. シャンプー / 山下達郎 "ポケット・ミュージック 2020 リマスター"
4. 新(ネオ)・東京ラプソディー / 山下達郎 "僕の中の少年 2020 リマスター"
5. GET BACK IN LOVE / 山下達郎 "僕の中の少年 2020 リマスター"
6. 踊ろよ、フィッシュ / 山下達郎 "僕の中の少年 2020 リマスター"
7. マーマレード・グッドバイ / 山下達郎 "僕の中の少年 2020 リマスター"
8. 蒼氓 / 山下達郎 "僕の中の少年 2020 リマスター"
9. 僕の中の少年 / 山下達郎 "僕の中の少年 2020 リマスター"
今週は、私の1986年のアルバム『POCKET MUSIC』
そして1988年のアルバム『僕の中の少年』
2枚まとめて、今週25日、2020年リマスター、三十数年ぶりにリマスター再発いたします。
先週から、それのご紹介をさせていただいております。
今日は『POCKET MUSIC』の途中から『僕の中の少年』まで、お届けしたいと思います。
先週は、竹内まりやさんの「souvenir the movie」の発売でございまして、おかげさまで、たいへんご好評いただいております。
引き続き、よろしくお願い申し上げます。
連休の午後のひと時、今日は、私の『POCKET MUSIC』そして『僕の中の少年』
一番、私のヒストリーで内省的な二作品をご紹介。
リマスター・バージョンでお聴きをいただきます。
本日も最高の選曲と、そして最高の音質でお届けをいたします山下達郎サンデーソングブック。
まずは、1985年の私のシングル、アルバム『POCKET MUSIC』最後に入っております、おなじみ「風の回廊」
風の回廊 (コリドー) / 山下達郎
THE WAR SONG / 山下達郎
あの当時は、まだアナログがちょっと優位でございました。
なので、アナログA面、B面という感じでございますが、B面のあたまに入っております「THE WAR SONG 」
私の全作品の中でも異色の作品でございます。
いわゆるプロテストソングといいますか、反戦歌の部類でございます。
もうちょっと諦観といいましょうかですね、なかなか思いが届かない、なんかボヤキみたいな(笑)
そういうような歌であります。
トラックは、とっても気に入っております。
2020年リマスターバージョンで、さらに高音質でお聴きをいただけるようになりました。
ようやく、本チャンのテスト盤があがってきまして、家で聴きましたけれども。
『POCKET MUSIC』は、特にですね、当時のデジタル・レコーディング、それからリマスターにすごく不満がありまして。
ようやく思った通りのですね音像を近づけてお聴きをいただくことができるようになりました。
ぜひともですね、新しくリニューアルされましたリマスター盤、お聴きをいただければと思います。
B面2曲目に入っております、この曲は、もともとはアン・ルイスさんの1979年のアルバムのために書いた書き下ろしの曲であります。
アン・ルイスさんのほかに、山下久美子さんのカバーなんかがありますが、それのセルフカバーであります。
ドラムのブラシのストロークとパーカッション以外は全部打ち込みで。
そうしたこう、ビートが遅くなるところとかも、全部打ち込みでやりまして。
どれくらいできるかという、まあ当時のマシンパワーの限界とか、いろいろあるんですけども、そういうものをですね、いろいろと実験的にやったものでございます。
間奏のサックスソロはアナログでございますが(笑)
シャンプー / 山下達郎
いわゆるスタンダード・ジャズソングを目指して書いた曲でありますが。
今から考えますと、なんでここまで打ち込みにこだわるかというと、自分がキーボード弾きじゃないから、ピアノ弾きじゃないので、ピアノをほんとにリアルタイムで弾いているかのような感じで演奏させてみたかった。そういう欲求もありますが。
1曲めにお聞きいただいた「風の回廊」がB面の最後でして、『POCKET MUSIC』は全10曲。
今回はボーナストラックが入っています。
デジタルで七転八倒したいちばん象徴的な『土曜日の恋人』がオリジナルのシングルヴァージョン。
それから最初に86年に発売したときのミックス、それからベストアルバム『TREASURES』で3回目にミックスした、3つミックスが入っています。
そのほかに91年にリミックスで『POCKET MUSIC』を出したときにボーナストラックで入れました「MY BABY QUEEN」、意外と人気曲ですが、これももちろん入っています。
あとはB面に入っています「LADY BLUE」、やはりアラン・オデイの英語詞ですが、これのライヴヴァージョンが収められています。
それに「土曜日の恋人」のカラオケが入っています。
「風の回廊」のカラオケも入れたかったんですけど、ギターを弾きながらミックスしてますので、カラオケが残ってないんです。ギターが入ってないんです。ですんで残念ながら。涙を飲んで。
先週に気がついたんですが、ライヴ用に『POCKET MUSIC』のアカペラを作ったことがありまして、それを入れればよかったと後悔してます(笑)まあ次のチャンスに、レアトラックで作ってみたいと思います。
『僕の中の少年』に移りたいと思います。
1988年、たった2年しか経ってないんですけども、だいぶデジタルレコーディングが進歩してまいりまして、24トラックが48トラックになったりしまして、少しリスクが軽減されてきました。
音的にも少し向上しました。
1988年の私のアルバム『僕の中の少年』1曲目に入っております、おなじみ「新・東京ラプソディー」
新(ネオ)・東京ラプソディー / 山下達郎
ちょうど35歳のときのアルバムですけれども、この時代はですね、とにかく戦前といいましょうか昭和初期の文化に耽溺しまして、特に映画にものすごく耽溺した時代でありまして(笑)
昭和11年の藤山一郎さんの大ヒット曲「東京ラプソディー」
♪たーのーしーみやこー
ってやつですが。
1936年、この時代の文化にすごく興味がありまして、それで思いついたのが「新・東京ラプソディー」(笑)
銀座の街並みといいましょうか、そういうものを想定して書いた曲であります。
これを1曲目に入れました。
この番組のリスナーのみなさん、それから私のレコードのリスナのみなさまは、もう耳タコだと思いますけど、80年代の頭にですね「夏だ!海だ!タツローだ!」とリゾート・ミュージックの代名詞みたいになって、そういうものに疑問がありましたので、アルバム『MELODIES』からずっとですね、もうちょっと内省的な音楽をしようと、目指してきまして、それが80年代の終わりにですね、こういう形になりました。
『僕の中の少年』という日本題のタイトル、私の全作品で、これ1枚であります。
で、そうしたリゾートミュージックというかアップテンポのシングルは、なんかこう、やりたくない!という、もうちょっとバラードをやりたい。
で、もってきてもらった仕事がですね「ゲット・バック・イン・ラブ」
1988年の春のシングルでございますが、TBSテレビのドラマ「海岸物語」のテーマソングであります。
これが「RIDE ON TIME」以来、8年ぶりにシングルヒットになりました。
だいたい、私、シングルはアルバムの2曲目というのが、通り相場になっております(笑)
ゲット・バック・イン・ラブ / 山下達郎
番組前半の曲は全部ライヴでやったことがありますが、後半は少なくなります。
リスナーから
当時達郎さんは、デジタル録音に苦労したと、よくおっしゃっていますが、アナログ録音に戻そうとは、考えなかったのでしょうか。
いや、何度アナログに戻ろうとしたことか....ありませんけれどもですね。
まったく機材の進歩はですね、どんどん進みまして、どうジタバタしましてもダメです。
エンジニアもやっぱりデジタルに耳を合わせていかなきゃなんないので、もう戻れないというですね。
みなさん、拒否されるんです。
今更、アナログに戻ろうなんて思いません。
で、『僕の中の少年』、もう1曲シングルが入っています。「踊ろよ、フィッシュ」
こちらはちょっと前で1987年のシングル。
ですので、『POCKET MUSIC』の延長で、とってもとっても苦労しましてですね(笑)
曲は気に入ってるんですけども、ポリリズムに凝りすぎまして、ライブ演奏が全く不可能だという1曲でございます(笑)
これもヴァージョンがたくさんありまして、やはりベストアルバム『TREASURES』のときに、いろいろエディットを加えまして、最終ヴァージョンに仕上げました。
これが後のベストアルバム『OPUS』にも入っています。
踊ろよ、フィッシュ / 山下達郎
レコーディングに苦労しますと、キー設定がどんどん上がっていくという悪い癖があります。
「高い高い病」といわれますが、これなんか、それの典型でございます。
ライブでやるときにですね、しょうがないので半音下げたりすると「あぁ、声が出なくなった」とか、いろいろ言われて、癪に障るんですけど。スタジオのときにキー設定、誤って...
これは全日空のCMのタイアップです。
石田ゆり子さんのデビュー作であります。まだ10代でした。
お次は、これもこのアルバムの人気曲ですが、やはり演奏ができない曲の典型でございます。
楽曲の構成に無理があるので、スタジオではアレでも、ライブでやると大変になります(笑)
やれればやりたいんですが、これも「高い高い病」であります。
こんなんばっかり(笑)
マーマレード・グッドバイ / 山下達郎
10代の頃から女性に対するペシミスティックな歌が大好きで。
ジミー・ウェッブとかバート・バカラック、ハル・デヴィッド、そういったのが好きで。
恋は成就しないと、そういうのが好きで、この歌もそういう自分の恋愛感を反映した曲です。
この「マーマレード・グッドバイ」、その前の「踊ろよ、フィッシュ」はどちらもキーの設定を誤っておりますので、実際にやってもライヴではできません(笑)
でも今日の前半の「風の回廊」「THE WAR SONG」「シャンプー」「新・東京ラプソディー」「GET BACK IN LOVE」は適正キーで収まっておりますので、ライヴで原曲キーでできます(笑)。
後半のこの2曲はダメなので、やるとしても半音下げていきますので。やったときはご了承ください。よろしくお願いします(笑)。よくあるんです、そういうの。
いろいろアルバムを作ってきましたけれども、『僕の中の少年』というのは、一番、そういう意味ではですね内省的と言いましょうか、自分の心の吐露というか、そういうのが、一番はっきり出てるアルバムであります。
35歳という年齢が、ちょうど何て言いましょうか、子供が生まれて、自分がやっぱり大人になっていく、ほんとの意味の大人になっていく。
我々はモラトリアムという、いつまでも少年でいたいという、そいうような世代だったんですけども。
自分が大人になっていくという、そういうようなものに対する、いろんな思いというのが、このアルバムに反映されております。
そうしたものの一番典型がおなじみの「蒼氓」という一曲であります。
いわゆるこうした芸能の世界に生きておりますとですね、有名とか無名とか成功とか失敗とか、そういうものと常に隣り合わせで生きておりますけれども。
なるべく、そういうようなことじゃなくて、平常心でいきたいといいましょうかですね。
できることならば、普通に生活者としてのですね心情を持ちたいと、そういうようなことを昔から考えておりまして。
そういうことを歌にしましたのが、この「蒼氓」という1曲であります。
無名性、匿名性への賛歌であります。
蒼氓 / 山下達郎
というわけで、大変駆け足でお届けしましたが、今週水曜日に発売になります『POCKET MUSIC』そして『僕の中の少年』、2枚まとめてですね、先週から引き続いてご紹介しました。
もうしあげたいことは、1曲1曲ほんとにたくさんあるんですけど、ライナーにたくさん書いてございますので、詳しくはライナーノートをですね、ぜひご覧いただきたいと思います。
おかげさまで、どちらのアルバムも、この三十数年間、一度も廃盤になることなくカタログとして継続することができております。
しかも三十数年たって、こうした形でリマスターが再び出せることがですね、ほんとに幸せいっぱいでございます。
さらに申し上げますと、限定発売ではございません。
ちゃんとバックオーダーでですね、注文すれば届くという、そういうような形での発売であります。
ひとえに長いこと、聴き続けてくださっているリスナーのみなさまのおかげです。
深く、深く御礼を申し上げます。
ぜひとも、2020年リマスター・バージョン、今週の水曜日発売でございます。
このあと『JOY』『アルチザン』それから『COZY』もやらなきゃなりませんし、2000年代のカタログもですね手を付けなきゃなりません。
それよりもなによりも(笑)、はやくオリジナル・アルバムを出さないといけません(笑)
そういう感じでがんばってまいりたいと思います。
来週は「スウィートソウルで棚からひとつかみ」の続きをお届けします。
最後は『僕の中の少年』のラスト・ソングでございます。タイトルソング「僕の中の少年」
僕の中の少年 / 山下達郎
<了>