おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



山下達郎サンデーソングブック 5月12日「最近亡くなったミュージシャンを偲んで棚からひとつかみ」書き起こし

 

達郎氏による曲の解説部分を書き起こしています。インフォメーションやリスナーからのメッセージは割愛しています。 ネットに音源があるものは張り付けていますが、オンエアされた音源とは異なる場合があります。

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私も、年を重ねて参りまして、昔から音楽が好きで、60年代からずっとリアルタイムで、ロックンロール聴き続けて参りました。
やはり、自分が年を重ねてくるにつれて、私が愛聴していたそうしたミュージシャンが次々とやっぱり鬼籍に入っていく。
そういう、しみじみした気分になってしまいます。

特に今年入ってから、相次いでいろいろな方の訃報が飛び込んでまいりまして、それぞれがですね、1週間くらい、もしくは2週間、簡単に特集ができるくらいの方々なんですけども。
そういうプログラムを綿密に構築する、時間的な余裕がございませんので。
今年に入ってから、亡くなられた方を中心に、最近亡くなったミュージシャンを偲んで、今日は「棚からひとつかみ」でございます。
でも音楽はとっても明るい曲ばっかりです。
明るく音楽的に偲べるかなと。曲はいいです。

 

超常連Yさん、今日は珍しい質問であります。
『3月17日の放送で「パレード」が流れました。達郎さんの公式サイトでは「山下達郎1976年」となっていましたが、ネットのWikiで調べたところ、もともとはシュガーベイブ時代のレパートリーとして1974年ごろに作られた作品、とありました。アルバム「SONGS」にも収録されてたと思います。記事を読んだのですが、よくわかりませんでした。素人でもわかりやすく、達郎さん本人の解説でよろしくお願いします。シュガーベイブなのか達郎さんのソロ名義なのか。ピアノは坂本龍一さんでしょうか』

「パレード」は、もともとはシュガーベイブの時に作った曲で、ライブでもやっておりましたが、アルバム「SONGS」には収録できなかたんです。
で、現在「SONGS」に入っているのはボーナストラックで、シュガーベイブのデモの「パレード」です。
で、1976年にですね、ソロになる前に作りました、大瀧詠一さんと伊藤銀次さんと山下達郎、3人で作りました「ナイアガラトライアングル」というアルバムに私のソロ名義でレコーディングしました。
これが公式のテイクでございます。
それが、その後ですね「ポンキッキーズ」そういうものに使われた「パレード」として認知されています。
上原裕ドラム、寺尾次郎ベース、坂本龍一ピアノで、私のギター。
4リズムでレコーディングしたものに、ブラスとコーラスを足したものでございます。

パレード / 山下達郎(音源なし)


THE MAGIC GARDEN / THE 5TH DIMENSION



今年になってたくさんのミュージシャンの訃報が届きました。
たいへん残念ですけれども、彼らの偉業をしのびたいと思っています。
まずは、ハル・ブレイン。
3月11日に亡くなりました。享年90歳、大往生ですね。
私の最も敬愛するドラマー。自分もドラムやっておりましたので、ドラマーというのを始めて意識した人のひとりであります。
今はレッキング・クルーなんて誰でも口にしますけど、僕が昔ハル・ブレインとか言ったとき、誰それって、さんざん言われましたけどね(笑)
時の経つのは早いものですけど。でも、普通にハル・ブレインという名前がいろんなメディアで挙がるようになって、いい時代だと思います。
ほとんは、特集してもいいんですけど、先日も申し上げましたみたいに、90年代に1回やってますので。もうちょっと、それよりも突っ込んだプログラムにしなきゃなんないと。
そうすると時間と手間がかかるんで、ちょっと今できませんで、すいません(笑)
ひと段落しましたら、心の余裕が出ましたらハル・ブレインは、またやってみたいと思っています。
曲はフィフス・ディメンションのマジック・ガーデン。ジミー・ウェッブの名曲です。
1967年の同名のアルバムのタイトルソングです。
いかにもハル・ブレインらしい、ドライブした。
このあいだ特集したジョー・オズボーンと一緒に天国で演奏していることでしょう。


で、やはり大物が亡くなりました。
3月16日ですけれども、ディック・デール。
サーフィンミュージックの草分けの人であります。享年81歳。
今、もう誰でも「ミザルー」を知ってる時代でありますけれども、「ミザルー」はチャートに入ってないんですよね。ヒットしてないんですから(笑)
ですので、その時のヒットというものがですね、歴史に残るか残らないかという、そういうのとは別問題であります。
例えばこのディック・デールの作品が好きな人が、そうやって口にしてですね、そうやって、継がれていくという、そういうものであります。
もう、どこいっても「ミザルー」なので。
僕が一番好きなのは「キング・オブ・ザ・サーフ・ギター」という歌入りの曲なんですけど、今日はちょっと趣向を変えて「ミザルー」に勝るとも劣らないグルーヴの演奏。
1963年のレコーディング。HAVA NAGIRA / DICK DALE & HIS DEL-TONES


いわゆるトラディショナルソングでインストグループがたくさんカバーしていますが、このディック・デールのも俊逸です。スパニッシュメロディで。
ディック・デールはもともとプロのサーファーだった人ですが、サーフボードをギターに持ち替えて、サーフミュージックをはじめました。いわゆる草分けとして知られる人になりました。

 

次はR&B系で、マイケル・ワイコフ。3月13日に亡くなりました。
67歳だそうで、私よりちょっと上ですが、同世代ですね。
キーボードプレイヤーでシンガーでもあります。
スティービー・ワンダーのレコーディングに参加したあたりから、名前が知られるようになりました。
一番有名なのがRCAでのセカンドアルバム、1982年にシングルカットされまして、ソウル・チャート47位。リオン・ウェアの作品です。

LOOKING UP TO YOU / MICHAEL WYCOFF


マイケル・ワイコフは、こうしたしゃれた音楽やってた人なんですけど、80年代以後ですね、ありきたりですけどドラッグとアルコール中毒に悩まされまして、最後はゴスペルに救いを求めたという。
ちなみに息子がDJ.マイケル・ワイコフという、DJで活躍してるそうであります。
最近は二世とか三世とか、継承される感じになってます。

 

続いては本日の中では一番無名な人です。シドニー・ジョー・クォールズ。
R&Bのシンガー。享年65歳。53年生まれですから、私と同じ年であります。
南部からシカゴに移りまして、1974年にDakarレーベルでシングルヒットを出しましたけれども。
このひと、いわゆるアル・グリーン・クローンと言いましょうか、アル・グリーンに非常に傾倒してる人で、アル・グリーンにそっくりな歌い方するんです。逆に非常に評価が低かったんですが。
同じシカゴで、カール・デイビスのレーベル、Chi Soundから1979年にアルバムを一枚出します。
「So Sexy」というタイトルのアルバムですが、これが非常にいい出来でありまして。
ハツラツと歌ったアルバムで、僕はこの頃はシカゴのR&Bが好きだったんで、とてもよく聴いた1枚であります。
自分と同じ年とは、夢にも思いませんでしたけども。
今聴いてもですね、とってもおおらかな歌い方をする人であります。
1979年、シドニー・ジョー・クォールズのアルバム「So Sexy」から、私がいちばん好きな曲。I'LL RUN TO YOUR SIDE / SIDNEY JOE QUALLS

 

スコット・ウォーカーは3月26日に亡くなりました。享年76歳。
スコット・ウォーカーは、ウォーカー・ブラザースからソロ、そしてその後、非常にアバンギャルドな作品...沢田研二さんに似た感じがあります。大スターから、それを拒否した...語弊があるかな(笑)でもテイストが、スピリットとかそういうものが似てるような感じがします。
スコット・ウォーカーは特集をしたいんですが。
10代のころのアイドルシンガーみたいな作品から、晩年のすごく暗い作品まで、やってみたいんですけど、ちょっと今、心の余裕がないので、少し余裕ができたら、やってみたいと思います。
今日はすごくベタなやつ。68年の代表作。全英7位。JOANNA / SCOTT WALKER


スコット・ウォーカー、やっぱり特集やろうと思います。近日中に(笑)


さて、デヴィッド・ホワイト。
この方は作曲家であります。レン・バリー(Len Barry) 、レスリー・ゴア(Lesley Gore)、有名な曲がたくさんありますが、もともとはドゥワップ・グループでデビューした人で、ダニー&ジュニアーズというグループでスタートをしました。その時代のヒットソングは今やロックンロールのアンセムになっています。
1958年、全米19位。フィラデルフィア・ドゥワップのグループであります。

ROCK AND ROLL IS HERE TO STAY / DANNY & THE JUNIORS

その後、シャナナのカバーとかで、我々もよく知っています。
享年79歳。デヴィッド・ホワイトはその後ダニー&ジュニアーズを抜けまして、作曲家として大成功を収めます。
パートナーのジョン・マダラー(John Madara)という人と組みまして、マダラ=ホワイトというコンビで、幾多のヒット曲を出しています。


最後に紹介するのはギタリストです。レジー・ヤング。
私の最も好きなギタリストの一人であります。
南部のメンフィス、ナッシュビル、そういうところでですね、長い間活躍をいたしました。
享年82歳。ほんとに好きなギタリストです。
彼の代表作、1973年のDobie Grayのミリオン・セラー。

DRIFT AWAY / DOBIE GRAY


レジー・ヤングの無駄のないギター、すばらしいです。

 
というわけで今日は「最近亡くなったミュージシャンを偲んで棚からひとつかみ」というタイトルでお届けしました。
みなさん、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
いい音楽をありがとうございました。


最後は、5月になるとこの曲。アルバム「アルチザン」から。
片想い / 山下達郎(音源なし)

 

<了>