達郎氏による曲の解説部分を書き起こして記載しています。
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1. LOVE SPACE / 山下達郎 "スペイシー" "オーパス" '77
2. 雨の女王 (LIVE) / 山下達郎 "イッツ・ア・ポッピン・タイム" '78
3. PAPER DOLL (LIVE) / 山下達郎 "イッツ・ア・ポッピン・タイム" '78
4. DANCER / 山下達郎 "スペイシー" '77
5. MONDAY BLUE / 山下達郎 "ゴー・アヘッド" '78
6. 個室 / 中原理恵 "キリング・ミー" '78
7. I'VE GOT YOU UNDER MY SKIN / 村上"ポンタ"秀一 with 山下達郎 "WELCOME TO MY LIFE" '98
先日、3月9日に、日本を代表するドラマーであります村上ポンタ秀一さんがお亡くなりになりました。
享年70歳。
ポンタさんとはすごく古い付き合いで、特に70年代、77年から79年あたりは私のレコーディングに参加してくれまして。
私のミュージシャンキャリアの中で、非常に重要な位置を占めるドラマーでありました。
その後もセッションでですね、いろいろ一緒に楽しくやって参りました。
ちょっと遅れましたけれども、今日はポンタさんの追悼特集をしようと思います。
こういう具合にミュージシャンがお亡くなりになりますと、特集とかそういうのが、いろいろなことが行われますけれども、私、そういうのがですね、いまいち抵抗がある人間でありまして。
ですので、ひと月ほど、ほとぼり冷めたころに行おうと思って、待っておりました。
大瀧詠一さんについて語れるまで7年もかかりましたので、そんな感じでございます。
村上ポンタさんは、ほんとに、日本の代表するドラマーであります。
特にスタジオ・ミュージシャン全盛期のころに、数限りない仕事をなさった方であります。
たとえばピンクレディとかですね、そういうようなものをかける番組がありますけど、私の番組で、そういうのをしてもしょうがないので。
前に青山純さんが亡くなった時と同じで、私の仕事の中でのポンタさんとの思い出なんかをお話させて頂きつつ「極私的 村上ポンタ秀一 追悼特集」
そういう形でいってみたいと思います。
55分じゃですね、なかなか思うように構成できませんけれども。
文字よりも音。
曲が長いので、あまりたくさんかけられませんけれども、気は心、という感じでございます。
日曜日の午後のひと時、本日は村上ポンタ秀一さんの華麗なドラミングでお楽しみをいただければと思います。
本日も最高の選曲と最高の音質でお届けをいたします山下達郎サンデーソングブック。
で、一曲目はですね、先日ポンタさんが亡くなったときに、かけました、私の1977年、セカンドアルバム「SPACY」に入っております「LOVE SPACE」
当時の、77,8年にポンタさんでライブやってた時のライブソースをですね、昨日一晩探したんですけど、なにしろ全部カセットである上に、オーディエンスの録音なので音が最低で。
しかも演奏もですね、なんか間違えてたりですね、歌も、ぜんぜんアレだったり。
結局使えるものが何にもありませんので、レコーディング・バージョンでいきたいと思います(笑)
LOVE SPACE / 山下達郎
先日3月9日に亡くなられました村上ポンタ秀一さんの追悼でございます。
私の仕事の中でのポンタさんの作品をお聴きをいただきつつ、偲んでみたいと思います。
今から43年前の3月9日に、六本木ピットインでライブをしました。
それが同年の78年の5月にアルバムになりまして、ライブアルバム「IT'S A POPPIN'TIME」というアルバムになりました。
ちょうど、その日の録音でございます。
その日の録音から43年たって、ポンタさんが亡くなったという、なんか因縁めいたことでございますけれども。
ライブアルバムなんですけれども、新曲を入れましてですね。
アナログ2枚組でA・B・C・DとありますがA面には新曲が並んでおります。
そんな中の、このアルバムのといいましょうかライブのために書き下ろしまして、したがってスタジオレコーディングがない曲なんですけれども。
珍しいパターンでございます。
「雨の女王」という一曲でございます。
ポンタさんらしい、歌をよく聞いているテイクでございます。
この時代は、村上ポンタ秀一ドラムス、岡沢章ベース、松木恒秀ギター、坂本龍一キーボード。
それと私のギターという、そういう形で、少ない数でありますけれども、ライブはやっておりました。
ライブレコーディングなので、吉田美奈子さん、伊集加代子さん、尾形道子さん3人のコーラスと、土岐英史さんのサックスという、そういう編成でやりました。
雨の女王 (LIVE) / 山下達郎
次におかけするこの曲も、このアルバムで初めて世に出た曲なんですけど、実は、この前にレコーディングをされております。
78年の春にシングル用にレコーディングしたんですけども、レコード会社に没られましてですね。
それが後の78年の「GO AHEAD」のアルバムに入ります。
「ペイパー・ドール」という曲ですけれども。
ほんとは、この曲ができていたんですけども、世に出るのは、このライブアルバムが先になってしまったと。
ですので、アレンジも若干違いますけれども。
この「ペイパー・ドール」のバージョンはシカゴ・ソウルのムードがいっぱいありますね。
もう完璧なリズムセクションのタイムでございます。
非常に気持ちのいいトラックになりました。
同じ「IT’S A POPPIN’ TIME」のアルバムから「ペイパー・ドール」
こういうビートですとですね、またネットなんかでですね”あ「TRIPPING OUT」だ”
とかですね、そういうのが出ますけど。
カーティスの「Something to Believe In」のアルバムは80年の作品ですけど、私の方が先なんですよ。
そのあとに「甘く危険な香り」になるんです(笑)
PAPER DOLL (LIVE) / 山下達郎
リスナーから『若かりし頃、10代のころ「IT’S A POPPIN’ TIME」のすごさがよくわかりませんでした』と。
素直なお便りでございます。そりゃ、そうでしょ(笑)
このアルバム、全員20代ですからね。
私が25でポンタさんが26かな。
岡沢さんもそんなもんで。松木さんも30そこそこですからね。
すごいですね(笑)すごく老成感っていいましょうか(笑)
ポンタさんの思い出は、ほんとにたくさんありますけれども。
この時代、シュガーベイブのバンド解散しまして、ソロになった時にですね、やっぱりうまいミュージシャンとやりたかったんですけども、ミュージシャンってのは、一人ひとりがですね、いろいろな性格の方がいて。
気難しい人とかですね。非常にエクセントリックな人とか。
そんな中で、ポンタさんは非常に珍しい、すごく寛容なですね、どんな音楽に対しても、あまり偏見を持たない寛容な人だったので。
そういう意味では、こうしたアンサンブルをまとめるとか、軸になって色々な人間関係をですね、うまく取り持つという、そういうような能力があります。
それはもう亡くなるまで、ずっと後輩をかわいがったりですね、いろいろなコミュニティで人間関係がスムーズにいくという。
その反面、大酒のみで(笑)
そういうことも、ありましたけれども。
でも、誰にでも愛されるキャラクターでありました。
70年代当時、16ビートのうまいミュージシャンというのが、なかなかいませんでですね。
ポンタさんは、そういう中でも、ずば抜けてうまい人だったので。
そういうポンタさんのドラムで何か曲をやろうかなと思いはじめまして、さきほどの「雨の女王」なんかも、ポンタさんのドラムを想定しましたけれども。
私は、だいたいアルバムを作るときに、そういう意味ではシンガーソングライターでもあるんですけども、ドラムがこの人だったら、こういう曲がいいんじゃないかとか、そういうような感覚が昔からありまして。
ポンタさんでやるんだったら、こういう曲だという形でアルバムに曲を入れておりました。
70年代の話です。
1977年の私のソロ・セカンドアルバム「SPACY」というアルバムは、村上ポンタさんのドラムで、細野晴臣さんのベース、松木恒秀さんのギターで、佐藤博さんのキーボードという、私にとってはドリーム・チームという。
この編成は、後にも先にも、この「SPACY」のアルバムしかありません。
その中で作った一曲がですね、これはもうポンタさんしかできないなという、ひたすら16ビートでおしまくるという一曲であります。
アナログA面の最後に入っております「DANCER」
フルバージョンでお聴きをいただきましょう。
これサンプリングして歌のっけたヨーロッパのアレもありますけど、そういう話は、また後日(笑)
DANCER / 山下達郎
なんといってもポンタさんはですね、バラードが素晴らしいんですね。
特にライブの場合は、彼にまかしとけば、バラードは全て段取りがですね、きっちりと組んでくれるという。
よく歌を聴いてる人なんで、それはレコーディングでも変わりません。
私、ポンタさんと70年代に、そういう形でレコーディングに付き合ってもらいましたけど、これは、僕のベストの演奏のひとつだと思います。
1978年の私のソロアルバム「GO AHEAD」に入っております。
ポンタさんドラム、岡沢さんベース、松木さんギター、佐藤博さんキーボード。
しかし、70年代の曲は、暗い(笑)
MONDAY BLUE / 山下達郎
『極私的 村上ポンタ秀一 追悼特集』でお届けしておりますが、曲が長いので全然かけられない(笑)
もう一週、やっちゃおうかな。よし、もう一週いこう。
来週も、引き続きいきます。
今日は、しゃべる時間すらなくなってきたという。
曲が長いんですいません。
同じ、1977、8年はですね、自分が人に書いた曲の演奏も、ポンタさんに頼んだやつがたくさんあります。そんな中の一曲。
これはポンタさんのキャラクターがよく出てるドラムだと思います。
1978年に中原理恵さんのアルバムに提供しました。
彼女のセカンドアルバム『Killing me』の中に入っております「個室」という一曲を、お聴き頂きましょう。
作詞吉田美奈子、作曲山下達郎、編曲も私ですが。
ポンタさんのドラム、岡沢さんのベース、松木さんのギター、坂本龍一さんのキーボード
個室 / 中原理恵
「文春ウィークリー」で、ポンタさんについて長いインタビューを受けておりまして、それが掲載されます。
「シュガー・ベイブの後、なぜポンタにドラムを頼んだか」山下達郎が初めて語った戦友・村上“ポンタ”秀一 | 文春オンライン
そうした個人的な交際の深い話はですね、かなり突っ込んだところまでインタビューでお答えしておりますので。
それと並んで、お聴きいただくとですね、こちらは「音」で向こうは「語り」でですね、おわかりいただけるかと思います。
来週は、私が書いた曲とか、アレンジした曲とか、そういうのを含めてやってみたいと思います。
この続きは、また来週。
『極私的 村上ポンタ秀一 追悼特集』
今日はPart1ということになりました。来週のPart2を、またお楽しみに。
今日の最後は、1998年のポンタさんのソロアルバム
『WELCOME TO MY LIFE』でやっております、コール・ポーターの「I've Got You Under My Skin」をお聴きいただきながら、また来週。
I'VE GOT YOU UNDER MY SKIN / 村上"ポンタ"秀一 with 山下達郎
<了>