おとのほそみち

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山下達郎サンデーソングブック 4月28日「男性裏声シンガーで棚からひとつかみ Part.2」書き起こし

達郎氏による曲の解説部分を書き起こしています。インフォメーションやリスナーからのメッセージは割愛しています。 ネットに音源があるものは張り付けていますが、オンエアされた音源とは異なる場合があります。

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先週に引き続きまして、今週も『男性裏声シンガーで棚からひとつかみ』
先週の聴取率週間の苦肉の策でございましたけれども、今週は、ただの延長です。
惰性。悪のり。
でも、選曲はちゃんとしております。
先週より、ちょっと幅広く、裏声のシンガー、やっぱりR&B、ロックンロール、いろいろ出てきます。
ちょっと変則的な歌い方してる人、いろいろ。

で、私の裏声の曲から始めます。
1983年のアルバム「メロディーズ」から。

「夜翔(Night-Fly)/山下達郎(音源なし)

 

「Easy To Love/Leo Sayer」

先週は割とベタで代表的な作品ばかりでしたけど、今回はちょっと自分の趣味も入れて幅広く。
まずは、レオ・セイヤー。
この人は、裏声と地声のコントラストが非常にはっきりしている、上手い人です。
イギリスの多芸多才な人ですけれども。
1977年の作品。78年の春に全米36位。
アルバム『Thunder In My Heart』からのシングルカット。
ジェフ・ポーカロのドラミングがすばらしい。いい録音している。(エンジニアは)ハワード・スティール(Howard Steele)ですね。
レオ・セイヤーとアルバートハモンドの共作です。

 

お次はR&Bでございます。
R&Bは、スウィートソウル系、いくらでもあるんですけども。
裏声のシンガーで有名なところ。ロン・タイソン。
この人は、もともとフィラデルフィアエシックスというグループで活動を開始しまして、そのあとに、そのエシックスが発展的に解消しましたので、ラヴ・コミッティーという4人組のボーカルグループで、70年代にアルバム2枚出しました。ヒット曲も何曲かあります。
そのあと、このロン・タイソンはテンプテーションズに参加しまして、エディ・ケンドリックスから続く裏声担当のメンバーになります。
日本にも何回か来日しまして、たいへん上手い歌を聴かせてくれました。
そのロン・タイソンをフューチャリングしましてラヴ・コミッティーの、これはノットオン・アルバムでございます。シングルのみの作品。1976年、全米ソウルチャート32位。

「Heaven Only Knows/Love Committee」

 


60年代のイギリスのグループは、みんな裏声が好きでありまして。ビートルズもそうですし。
ポール・マッカートニーの「ロング・トール・サリー」とかですね、ああいうの聴くとわかりますけれども。
そんな中でとりわけ裏声の上手かったグループがトレメローズでありまして。
1967年、全英37位。チャートはふるわなかったんですけど、これ、ほんとに僕、よく聴きまして。裏声、一所懸命これで練習したもんでございます。
もともとは、イタリアのスクーターズというグループの曲をカバーしたものですけれども、出来じゃトレメローズが圧倒的に優れております。

「Be Mine/The Tremeloes」


「サイレンス・イズ・ゴールデン」で有名なトレメローズ。演奏力も非常に優れたグループですが、日本ではあまり紹介されなかったので知名度がなかったですが。

 


パワーのある、通る、裏声の他にですね、もうちょっとこう、柔らかい、スウィートな裏声。特にその裏声と地声の区別がはっきりしない人たちというのがおりまして。
そうしたものの中からザ・チャイライツ。シカゴのボーカルグループでございます。
リーダー、リードボーカル、プロデューサー、ソングライターのユージン・レコードの歌い方も、そうしたスウィートな典型でございます。
なんでもいいんですけどね(笑)これにしました、今日は。
1971年のアルバム『Give More Power to the People』からのシングルカット。

「I Want To Pay You Back (For Loving Me)/The Chi-Lites



ブリティッシュポップからもうひとつ。
60年代にたいへん活躍しましたジョン・カーター、ケン・ルイスのソングライター・コンビ。
たくさんヒット曲がありますけれど、この人たちが自分達でグループを組みまして、出しましたヒット曲。
1965年、全英8位。「Funny how love can Be」という曲です。
これもファルセットで歌われた、たいへんきれいな曲あります。
ソングライター・チームが作ったユニットなので、スタジオ・ミュージシャンがいろいろ参加しておりまして、ジミー・ペイジなんかもレコーディングに加わっております。どの曲だか、わかりませんけれども。そういうような時代でありました。

「Funny How Love Can Be/The Ivy League 」


ビーチボーイズフィル・スペクターにあこがれて製作されたのは、もう一目瞭然でございます。
先週も、申し上げましたけれども、裏声から地声に戻るとこ。
 ♪ Funny how Love can be,girl

ここがミソなんですけれどもね。そういうやつが聴こえます(笑)60年代らしいやつ。

 

R&B系で裏声で歌うシンガーで、カーティス・メイフィールドを落とすわけにはいきません。
さきほどのユージン・レコード。先週お聴きいただきましたスモーキー・ロビンソンなんかも、そうですけれども。
裏声と地声の差がですね、わりと曖昧といいましょうか。
僕、スモーキー・ロビンソンにその話をですね、一回会ったことがあって。その話聞いたことがあるんですけども、彼は、自分があんまり裏声を出してるとか、そういう意識がないんだそうです。
変声期があんまりはっきりしなかったというようなことを述べておられました。
ですから、ま、小田和正さんと、なんか似た感じだとか、そういう感じだと思います。
カーティス・メイフィールドも、そういう意味では、裏声と地声の区別が意外と滑らかだと。はっきり分けない、そういう感じであります。
全員がボーカルグループから出身した、ボーカルグループのパートも兼ねたリードシンガーだということが、そういうことを作ってるんだと思いますけれども。
ですので、スモーキー・ロビンソンにしてもユージン・レコードにしてもカーティス・メイフィールドにしても、ソロになった時に、やはりボーカルグループのバックアップがないから、裏声シンガーは線が細いとか、そういうことをずいぶん批判されたようですけれど、全然そういうことはありません。
カーティス・メイフィールドは、一発で聴いてわかる素晴らしい表現力を持っております。なんでもいいんですけども、今日は70年のソロファースト『カーティス』のアルバムから。

「The Making Of You/Curtis Mayfield




だんだん、時間がせまってきまして。まだ、かけたいのが、たくさんあります(笑)
これいってみましょうか。ルー・クリスティ。
ルー・クリスティはイタリア系の白人で、ドゥワップグループ クラシックスのメンバーでありました。その後、ソロになりまして、ヒット曲がいくつかあります。
日本ですと「魔法」という曲が、これも日本だけのヒットですけども。
やっぱり今日は、裏声シンガーの特集なので。裏声が目立つやつ。
セカンド・ヒット、1963年全米6位という曲があります。

「Two Faces Have I/Lou Christie」




もう一曲、いけますね。ダメ押しのフィリーソウル。有名なヤツだけど、とっても上手い。
フィラデルフィアの5人組のヴォーカルグループ、ブルー・マジック。
リードヴォーカルはテッド・ミルスの素敵なファルセットでございます。
1974年の全米ソウルチャートNO.1。

「Sideshow/Blue Magic」



 

というわけで『男性裏声シンガーで棚からひとつかみ』、2週間お届けしました。
まだまだ、もう2週間でも3週間でもいけるんですが。数は、もういくらでもありますからですね(笑)
パッと思いつくだけでも、アルビーシュアとかマックスウェル、レディオヘッドトム・ヨークとかですね。
日本でも平井堅さん森山直太朗さん、たくさんいらっしゃいます。
裏声シンガー、これからも続いていくと思います。

最後は、私の1998年のアルバム『COZY』から「群青の炎」

「群青の炎-ULTRAMARINE FIRE- /山下達郎




裏声の男性のシンガーはですね、日本では特にコミカルなテイストが蔓延しておりまして。なかなか正確な把握がされないという。キングトーンズのときにも申し上げましたけれども。

少しでも一助になればという感じでございます。

 

<了>