ノット・ア・ノベルティ / ジェニファー・ウォートン
音楽の内容を知らずにこのアルバムのジャケットだけ見れば、ちょっとレトロなアメリカンポップスのガールシンガーだと思うだろう。
実は、ジェニファー・ウォートン(Jennifer Wharton)、ニューヨークで活躍中の、世界でも数少ない女性トロンボーン奏者。
それもバス・トロンボーン。
キャッチフレーズは「I play low notes」
低い音を吹くわよ!てな感じだろうか。
もともとはクラシックの演奏家で、キャリアを重ねるごとに、ジャズやブロードウエイ音楽へとフィールドを広げていった。
なかでもブロードウエイでの活躍はなかなかのもので、例えばキャロル・キングの半生を描いたミュージカル『Beautiful』で吹いたりもしている。
また、ビッグバンドへの参加も数多く、大学で後進の指導にあたるなど、八面六臂の活躍ぶりだ。
リーダーアルバムは、2019年リリースの『Bonegasm The Album』が初(のはず)。
そして2021年にリリースされた新作アルバムが『Not A Novelty』
ご存知の通りトロンボーンは、アンサンブルの中ではサブに回ることが多い。
もちろんカーティス・フラーや向井滋春など卓越したプレイヤーはいるが、同じ吹奏楽器のなかでも、トランペットやサックスのような派手さ華やかさはないので、渋い大人の楽器という印象は強い。
とはいえ、その豊かな包容力のある音色に、心奪われることも少なくない。
今回、彼女が挑戦しているのは、4トロンボーン。
つまり4本のトロンボーンのアンサンブルだ。
この試み自体、とりたてて珍しいものではないが、当然難しい。
他の楽器とのアンサンブルに比べれれば、音域は狭いし、そもそも4本の音色は近いのだから、下手をすると音のダンゴ状態になりかねない。
しかし、この作品、アレンジがなかなか巧みで、ハーモニーを重ねたと思ったら、それぞれが別のメロディを奏でたりと、緩急のつけかたがうまく色彩感がある。
曲調もオーソドックスなジャズからラテン、フュージョンぽいものまで多彩で飽きさせない。
アメリカのジャズチャートで結構、上位にきているのもうなずける。
トロンボーンの魅力を再認識させてくれる一作。サブスクでも聞けるので、ぜひ。
しかし、これ、ライヴハウスで聞きたいなあ。。。。
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