ジョーイ・モーランドの名を聞いて、すぐにピンとくる人は、かなり年季の入った洋楽リスナーだろう。
元バッドフィンガーのメンバーである。
バッドフィンガーの前身は1961年に結成されたパンサーズ。
その後、アイヴィーズと名を変え、1968年11月、ザ・ビートルズのアップル・レコードから「メイビー・トゥモロウ」でデビューを果たす。
デビュー時のメンバーは、
ピート・ハム(ギター,ピアノ)、トム・エバンズ(ギター、ベース)、マイク・ギビンズ(ドラムス)、ロン・グリフィス(ベース)の4人。
その後ロン・グリフィスが脱退し、代わり加わったのがジョーイ・モーランドだ。
このときバンド名をバッドフィンガーとした。
1969年にポール・マッカートニープロデュースによるアルバム「マジック・クリスチャン・ミュージック」をリリース。
ビートルズの弟分的存在として見られ、人気も急上昇。
シングルの「マジック・クリスチャンのテーマ」「嵐の恋」は、いずれも全米トップ10に入った。
本格的にアメリカに進出するというタイミングで、ニューヨーク在住のマネージャーと契約するのだが、この男がとんでもない悪党。
横領など金銭に関するトラブルが続き、アップルのあと移籍した、ワーナー・ブラザースとの関係もこじれてしまう。
ずっとマネージャーを信じていたピート・ハムも、その不正を知り絶望し、1975年4月に自害する。
その後メンバーが分裂し対立して訴訟問題となり、そのトラブルに疲れたトム・エバズはピート・ハム同様、1983年11月に自害。
バンドの歴史に終止符が打たれた。
その後、マイク・ギビンズも、2005年にクモ膜下出血により他界。
存命する唯一の元メンバーがジョーイ・モーランドなのだ。
いささか悲しい話が続いてしまったが、彼のアルバム「BE TRUE TO YOURSELF」は、ポップで明るく活気がある。
ソルアルバムとしては6枚目で、前作の「Return to Memphis」(2013)から7年ぶり。
音はまさにビートルズの系統を受け継ぐものだ。
ビートルズそのものというよりは、その影響を大きく受けたELO、あるいはリンゴやジョージのソロを思わせる。
また当然、バッドフィンガーテイストもある。
参加ミュージシャンは、シカゴのジェイソン・シェフ(ベース)や、かつてウイングスの一員だったスティーヴ・ホリー(ドラム)など手堅い顔ぶれ。
ビートルズやバッドファンガーが好きな人にはぜひ、とおすすめしたい。
<了>