ソウル、R&Bの愛好家にはいまさら言うまでもないが、マリリン・マックー&ビリー・デイヴィス・ジュニアは、1960年代の後半から70年代の前半、The 5th Dimensionというグループのメンバーとして活躍。
68年の「輝く星座(Aquarius/Let the Sunshine In)」で、グラミー賞最優秀レコード賞を受賞するなど、The 5th Dimensionはヒットを連発した。
69年に二人は結婚。1975年にはグループを脱退して夫婦デュオとして活動をスタートした。
「星空のふたり(You Don't Have to Be a Star)」がいきなり全米1位に輝き、翌1977年の東京音楽祭でもグランプリを受賞。
その後、デュオとしての作品数はさほど多くはないが、それぞれソロシンガーとしても、役者としても、活躍を続けてきた。
現在、マリリンは77歳。ビリーは82歳。
約50年間、夫唱婦随でキャリアを重ねて来たのだから素晴らしい。
日本にはこのような夫婦デュオはいないし、芸能界を広く見渡しても、活動歴が数十年に及ぶ夫婦は、漫才の宮川大助・花子くらいだろう。
そんな二人が、13年ぶりにリリースしたアルバムが、この『blackbird Lennon-McCartney Icons』。
タイトル通り、ジョン・レノンとポール・マッカトニーの作品のカヴァーだ。
ビートルズの作品が中心だが、レノンの「Starting Over」「Silly Love Song(心のラヴソング)」なども採り上げている。
とにかく歌がうまい。特にビリーは80歳を過ぎているとは思えないほどエネルギッシュ。
しかし、ただ熱く押しまくるのではなく、マリリンともども、緩急をつけた余裕のある歌いっぷりで、これこそベテランの味だろう。
アレンジも見事。
ぶっちゃけビートルズのカヴァーなんて星の数ほどあるわけで、原曲通りに歌ってもしょうがないし、下手に拡大解釈して「これ何の曲?」と思われてしまっては、本末転倒。
しかし、このアルバムは、例えば「Help」をゴスペル風にアレンジするなど、おおっそう来たか!と唸らされる仕上がりがいくつもある。
80歳前後という年齢でありながら、挑戦心あふれる作品をつくりあげた二人に、大きな拍手を送りたい。
【収録曲】
01. Got To Get You Into My Life
02. The Fool On The Hill
03. Blackbird
04. Yesterday
05. Ticket To Ride
06. The Long and Winding Road
07. Silly Love Songs
08. Help!
09. (Just Like) Starting Over
10. And I Love Her
<了>