グレッチェン・パーラト / グレッチェン・パーラト
現代のニューヨークジャズの、というか、当代最高峰のヴォーカリスト、グレッチェン・パーラトの新作。
前作『ロスト・アンド・ファウンド』が2011年リリースだから、ライヴ盤が2013年にあったものの、それでも相当久しぶりで、ぶっちゃけ忘れかけていた。
知らない人のために言っておくと、40歳代半ばの女性である。
これまでに、ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、ケニー・バロン、エスペランサ・スポルディング、テレンス・ブランチャード、マーカス・ミラーなどなど、超大物たちとの共演を重ねてきていて、ライヴ盤を除くリーダーアルバムは、これが5枚目となる。
ピッチコントロール、トーンコントロールの妙は、まさに至芸で、かといって技術一辺倒ではなく、馥郁たるフェロモンも十分。
加えて今作は、リズム隊にベースではなくチェロを迎えた変則的なトリオでのブラジリアンテイストの作品になっている。
音数は少なめのアコースティックでミニマムなアレンジだが、その分、心地よい緊張がある。
選曲やアレンジも見事。
私の大好きなアニタ・ベイカーの86年作『ラプチュア』からのヒット曲「Sweet Love」は、実に新鮮だし、バッハの無伴奏チェロ組曲を歌った超絶技巧ぶりは、かのボビー・マクファーリンに匹敵するのでは。
近年は、家庭生活を優先していたがゆえの10年ぶりのようだが、インターバルを感じさせないどころか、想像をはるかに上回る圧巻の出来栄え。
ブラジル音楽の巨匠アイアート・モレイラらの参加は、彼女の大きな励みになったに違いない。
<了>
このほかのジャズアルバム紹介記事はこちら