ザ・セヴンス・ハンド / イマニュエル・ウィルキンス
イマニュエル・ウィルキンスはフィラデルフィア出身のアルトサックス奏者、コンポーザー。
2015年からジュリアードで学び、いくつかの客演によって注目を集め、2020年に『Omega』でデビュー。
これが大きな話題となり高い評価を集め、ニューヨーク・タイムズ紙は2020年のジャズ・アルバム第1位に選んだ。
新人のデビュー・アルバムが、である。
表現の幅はきわめて広く、オーソドックスで伝統的なスタイルから、フリーキーな雄叫びのような音まで変幻自在。
やろうと思えばなんでも演奏できちゃう人なのだろう。
さまざまなジャズな歴史を受け継ぎつつ、自らのものとして昇華した迫真の演奏。
だからこそ『Omega』は、多くのジャズファンから支持を集めた。
そのイマニュエル・ウィルキンスのセカンド。
ミカ・トーマス(p)、ダリル・ジョーンズ(b)、クウェク・サンブリー(ds)とのカルテットに加え、ゲストとしてエレナ・ピンダーヒューズ(fl)、ファラフィーナ・カン・パーカッション・アンサンブルを迎えての作品。
期待に違わぬというか、期待以上の完成度で、よりスケールを増し、スピリチュアルな方向に振ったようにも聞こえる。
イマニュエルのオフィシャルサイトによれば、このアルバムは7章からなる組曲だそうだが、全体で約60分のうち、最後の7章「Lift」はなんと26分半もある。
前半の6曲はどれも短めでバラエティ豊か。
アフロぽいパーカッションチームが参加した曲もあれば、静謐でクラシカルな印象の曲もあり、フルートのソロをフューチャーした曲もあって、飽きさせない。
そして最後の26分の「Lift」は、相当な部分がインプロビゼーション。
まったくのフリーとは言えず、各メンバーが相互の反応や連鎖もあったりはするのだが、フリーぽいことは確か。
前半に比べて何で?とは思うが、いまの社会情勢などを鑑み、アフリカン・アメリカンとしての意志・姿勢を表現するのなら、こうした混沌とした音を選ぶのは必然だったのかもしれない。
多くのジャズファンが聞きやすい作品とは言い難いが、聞き応えのある作品であることは、確かだ。
<了>
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