おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



エルトン・ジョン(Elton John) 1979年 モスクワでのライブ盤が素晴らしい

 

 エルトン・ジョンの歴史的な快挙、ロシアでのライブ・アルバム『Live From Moscow』がCDパッケージでリリースされた。

 このアルバムは、1979年、まだ冷戦下にあったロシア(旧ソ連)で開催されたもので、いわゆる「西側」の著名なロックアーチストのライブとしては事実上、初めて。

 すでに映像作品はリリースされているが、CDで音源が正式に発売されるのは、本年2020年発売のこの盤が初となる。

 このときの「Daniel」の映像を見ればわかるが、当時のエルトンはまだ華奢で物憂げな若者といった風情。

 それ以上に興味深いのは観客の表情で、異様に緊張した空気が漂っている。
 ここでいったいどんなパフォーマンスが行われるのか見当がつかない、ゆえの緊張だろうか。

 しかしエルトンのパフォーマンスは素晴らしい。

 レイ・クーパーのパーカッションとの二人だけでのステージだが、これはロシアに限らず各地でやっており、日本公演もこのスタイルだったことがある。
 エルトンにしてみれば、お手の物だ。

 セットリストには代表曲がずらりと並ぶ。

 40年前とは古いなあ、と思われるかもしれないが、エルトンの代表曲というのは、ぶっちゃけ大半が1970年代の作品なのだから、ほとんど問題ない。

 そして歌もさることながら、ピアノの上手さが光る。

 特にブギウギスタイルのファンキーなピアノは圧巻で、アドリブでかんがん弾きまくり、かなり長いソロもある。

 このピアノの腕があればこそ、パーカッションと二人だけというスタイルも成り立つのだ。

 最初は緊張気味だった聴衆もだんだんとテンションが上がり、ラストのロケンロールの連発では、大きな盛り上がりを見せる。

 自分の作品ではなく最後にビートルズの「Get Back」「Back In The U.S.S.R.」をもってきたのは、より有名な曲で盛り上げたかったことに加え、エルトンに“西側代表”という意識があったのかもしれない。

Live From Moscow

Live From Moscow

  唯一不満があるとすれば「ユア・ソング」が入っていないこと。

 このように映像作品にはあり、オフィシャルチャンネルでも見られるのになぜ?とは思う。

 

 しかし気になるのはそれくらいで、ライブ作品としての質は高く、CD化にあたってリマスターされたらしく、音もなかなかいい。

 エルトンファンのみならず、多くのポップスファンにすすめたい作品である。

 

【収録曲】

ディスク:1
1. Daniel
2. Skyline Pigeon
3. Take Me To The Pilot
4. Rocket Man (I Think It’s Going To Be A Long, Long Time)
5. Don’t Let The Sun Go Down On Me
6. Goodbye Yellow Brick Road
7. Candle In The Wind
8. I Heard It Through The Grapevine

ディスク:2
1. Funeral For A Friend
2. Tonight
3. Better Off Dead
4. Bennie And The Jets
5. Sorry Seems To Be The Hardest Word
6. Crazy Water
7. Saturday Night’s Alright (For Fighting)/Pinball Wizard
8. Crocodile Rock/Get Back/Back In The U.S.S.R.

 

<この項おわり>