おとのほそみち

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miwaのミューズノート ゲスト:槙ようこさん 書き起こし(後半)


NHK-FMで毎週火曜日オンエアされている「miwaのミューズノート」。
10月18日のゲストは漫画家の槙ようこさん。その二人の対談部分を書き起こしました。これは後半部分です。

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miwa:先生の音楽体験をお聞きしたいのですが、普段はどんな音楽を?

槙:きれいな歌声とキレイなメロディは創作意欲が沸くので、そこから探すんです。誰か知らなくても試し聞きしてみて「これ好き」というのをプレイリストにどんどん入れて。

miwa:例えば誰ですか。

槙:miwaさん。すごくきれいでずっと聞いていられます。

miwa:ありがとうございます。洋楽だと?

槙:最近は「グリー」ですね。

miwa:ドラマも?

槙:全部見ました。

miwa:海外ドラマお好きなんですか?

槙:大好きです。

miwa:「ゴシップガール」とか。

槙:見ました。

miwa:へえ。好きなものが似てるかもしれないですね。
日本のドラマもお好きだと。仕事が終わると日常の生活を取り戻すために。

槙:日常はほんと大事ですね。

miwa:執筆中は音楽を流すんですか?

槙:執筆中はもったいないので、休憩でこれを聞くと決めて、一曲をすごく集中して聞くんです。すると集中力が戻ってくるんです。ロウソクを見つめるみたいなことと同じで。

miwa:針に糸をとおすような集中力で。

槙:ずっと流すのは音楽がもったいなくて、一曲大事に聞く感じです。

miwa:おやつタイムみたいな、楽しみのひとつとして。

槙:「はい休憩、ポチ」みたいな。

miwa:もう一曲お気に入りの曲を選んでもらいました。

槙:グリーのドラマの最終回で歌う曲で「デイドリーム・ビリーバー」を選びました。

miwa:カラオケとか行くんですか。

槙:行かないです。もう10年以上行ってないです。

miwa:じゃあ、ご自分では歌は。

槙:でもドライブ中には歌います。

miwa:この曲とかも。

槙:歌います。


miwa:作品づくりについてお聞きしたいのですが、物語の結末まで決まっていることが多いですか?

槙:大体の流れは決まってますね。

miwa:思い通りの長さになりますか?

槙:そうですね。自分で決めます。ゴールに向かって書くという。

miwa:どうやって序盤に決められるんですか?

槙:最初に決めておけば出て来る。

miwa:決めておく期間は何日くらい?

槙:それはいろいろで連載を決めるときは、こういうキャラにしたいと決めてからは、けっこう何カ月も温めたりしますね。

miwa:何年にもわたるものがスタートするには、準備期間として何カ月も。

槙:そうして書いていくうちに、話の筋は決まってますが、キャラが生きて来るので、間に話を入れていく感じですね。

miwa:よく、キャラが勝手に動いてくれると漫画家さん仰るじゃないですか。それは、どういう感覚ですか。

槙:動くんですよ。自分で動かそうと思ってるうちは、まだ書いちゃだめだと。動いてから書くという感じですね。miwaさんも歌詞が勝手に出て来るとか。
 
miwa:降りて来るタイプじゃないんで、自分の中で決めて決めて直して直してみたいな感じなので、ぱっと出来ることもありますが、難産なのが多くて。曲は割と早くても歌詞は遅いことがあります。 

槙:このテーマでって、恋愛とか。

miwa:恋愛とかは少女漫画にとてもお世話になっています。

槙:何か出ます?少女漫画で(笑)

miwa:日常にはない「キューン」を圧倒的にもらえるので。例えば玉ねぎを切るシーンで涙が出たら萌え袖で拭いてもらえるなんて経験は、日常生きてて絶対ないじゃないですか。

槙:それがどう歌詞になるんですか。

miwa:それでキューンときたら書けるんです。こんな優しい男の子がいたらいいなとか、主人公像を。好きだけどうまくいかないときの気持ちとかも、少女漫画はぎゅっとつまってるじゃないですか。相手に向かう気持ちとかも。それを自分の中に落とし込んで書くという感じですね。

槙:時間帯はいつとか。

miwa:夜型ですね。朝はあまりやらないです。朝起きてひらめいたことは、意外と後から使えることが多くて。そのときはまとめられないけど、バーッと書いておいて夜にまとめることが多いです。

槙:曲のストックとかあるんですか。

miwa:けっこうあります。タイアップのたびに3、4曲提出したりするので、曲は増えていきます。

槙:いつメロディとか浮かんでくるんだろうと思って。

miwa:制作期間があるので。いまはツアー中ですが、プロモーションのときはいろんなメディアに出たりとか、制作期間にはいつまでに何曲作ると決めて、それに向かっていくという。

槙:おうちでですか

miwa:家とかスタジオとか。漫画家の先生は毎月締め切りがあって、大変だろうなと。

槙:締め切りはあまり考えないようにしてます。つらくなるので(笑)

miwa:ぎりぎりのタイプですか。それとも前もって...

槙:スーパーギリギリ、超ギリギリです(笑)
でもギリギリにならないとできないタイプなので。あせって初めて出るみたいな。
あせってくれないとあせる感じです。「何で自分はあせらないの」と。

miwa:そこでエンジンがかかって。

槙:かかってくると「何でこれが最初に出ないんだろう」と。

miwa:わかります。「何でこんな簡単な答えが出ないのか」みたいな。

槙:ねえ、すごい簡単だったりします。

miwa:私も学生のころから、それが変わらなくて。テストなのに漫画読んで時間減らしてからみたいな。

槙:私もそれでした。

miwa:早く終えてごほうびにすればいいのに、逆で、先に読んであせるみたいな。

槙:家庭教師の先生がいたことがあって、漫画を置いていたらすごく怒られました。でも、「漫画は読むよ」と。

miwa:そうですよね。私も母親に「まだ漫画読んでんの?」と。

槙:「読むよ」と(笑)
その方がテンションが上がるし、自分が元気でいるのが一番。それを優先します。

miwa:わかります。集中の仕方がだいたい一緒で。朝型ですか夜型ですか。

槙:今は朝型です。日が昇る前に起きるのが好きで、3時4時に起きると安心する。

miwa:何に対して...

槙:締め切りに対して(笑)まだ誰も起きてない時間が安心するんで、その時間に描くと。

miwa:何時に就寝するんですか。

槙:11時とか12時。

miwa:短い...

槙:3時4時に起きてずっと描いてます。

miwa:毎日ですか?

槙:原稿中は毎日です。

miwa:どれくらいの期間ですか?

槙:1週間強、2週間弱くらいですね。

miwa:それがネームとかですか。

槙:そうですね。カラー描いたり、いろいろです。

miwa:今月はコミックスも出ますし。

槙:うれしー

miwa:直したりもするんですか。

槙:自分の中では何回も直すというか。できたものを担当さんに見てもらうと。

miwa:ダメ出しってあるんですか。

槙:そうなんです。でも伝え方がすごく上手なので、私もわかりやすくて直せるんですけど。あまり誰かの意見が入っちゃうと「んんー?」て分かんなくなっちゃうんで、自分が何を描きたいかを一番大事にしています。

miwa:私は「愛してるぜベイベ★★」がとても好きなんですが、「なかなか始められなかった、でも絶対書いてやる」という感じでスタートさせたというのをどこかで読んでびっくりというか。そこまで貫き通してくださったからこそ、こんな作品が生まれたのだなと。負けないんですね。

槙:かわいいセンサーじゃないですけど、自分がいいと思ったものは絶対に信じるようにしています。そこだけは疑わない。

miwa:これは受けないとか、ヒットしないとか言われたとき、どうやったら折れないでいられるのか。

槙:全然耳に入らないです。自分の中に入れないんです。自分の気持ちだけ守るみたいな。そうじゃないと、ブレちゃうし描けなくなるんで。

miwa:逆境の中でスタートして不安にならないですか。

槙:ならないからできるんですかね。でも、いい意見があったら耳にピーンと入ってくるから、入らないってことはそうなんだろうと(笑)心に響く意見をくださいと。

miwa:その自信はどこから生まれてくるんですか。

槙:どうでしょう、経験と...

miwa:高校生のときとかはそうなれないときも...

槙:直観と経験と合わさって、自分がやりたいと思ってるんだから、やんなきゃ意味ないって。

miwa:私がやるべきことだと。

槙:そこが個性につながると思ってるので、大事にしてます。

miwa:心に響きました。
私は8年やってますけど、まだまだ人の意見は入ってきちゃうんで。

槙:それこそどうするんですか。

miwa:自分が持ち直すまでに時間がかかります。けっこう真面目なので、まず聞いてしまう。ポピュラーというものをすごく大事にしているので、いろんな人に受け入れられたり、共感されたりするのは、大衆を意識しないとという気持ちがどこかにあるので。「違う」と言われると、私のセンサーはどこかおかしいのかなと。それをリセットするまでに時間がかかる。それこそ少女漫画を読んで立て直すときはあります。

槙:見習います。それも大切だなあと。

miwa:いやいや。自分を保ち続けるのは大事だし、強い心がないとできないと思うので、すごく勇気をもらいました。
それではここで、私が「ロマンチカクロック」を意識して、主人公の杏花音ちゃんの蒼に対する気持ちだったりとか、どうやったらライバルに勝てるかとか、あいつを振り向かせるにはどうすればいいのか、というのをイメージして選んだのが私の「It's you!」という曲です。

 

miwa:今回は槙ようこ先生をお迎えしましたが、9割9分私がしゃべり続けてて、お呼びしたのに申し訳なかったなあと(笑)

槙:貴重な時間をいただいて楽しかったです。

miwa:疲れてないですか。

槙:大丈夫です(笑)

miwa:「きらめきのライオンボーイ」の7巻が今月発売ということで楽しみです。
主人公がmiwaという漫画が全然なくて「来たー」ってなったんです。懐かしの前髪パッツンのロングヘアーなので、今は切っちゃいましたが、miwaファンの方もぜひ読んで欲しいです。先生、ありがとうございました。

槙:ありがとうございました。

 

#この項おわり

 

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