近年ヒットを飛ばし続けているYOASOBIのニューアルバムを聞いて、さすがに完成度が高いと唸らされた。
楽曲は時代感覚を織り込んだ最先端のポップスとしてよく作りこまれているし、ikuraちゃんのボーカルの巧みさも際立っている。
音程はものすごく安定していて、日本語の発音も明瞭。
起伏の激しいアクロバティックなメロディーラインであっても、安定感、明瞭さは1ミリもブレない。
ではクールで機械的かというとそうではなく、情感やフェロモンも十分感じられる。
天賦の才能に加えよほど訓練を積まなければ、ここまで歌うことはできないだろう。
かのユーミンさんも以下のコメントのように高く評価している。
「ikuraちゃんが本来、ボカロ(音声合成)でやるようなラインをたぶんものすごく一生懸命して、習得して、人間の声でやっている。機械では出せない切なさがちゃんと出ているから、言語を超えて伝わる」と絶賛だ。
出典 https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2023/10/08/kiji/20231008s00041000681000c.html
さて、このYOASOBIの作品とikuraちゃんのボーカルを聞いて、誰かに似ているなと思っていたのだが、あれこれ記憶を辿って行き着いたのは、約30年前に聞きまくっていたPSY・S(サイズ)である
PSY・Sは1985年にレコードデビューしたポップスユニット。
約10年間の活動期間の間にオリジナルアルバム9枚をリリースした。
キーボードを中心としたマルチプレイヤーで作曲編曲を手掛ける松浦雅也さんと、ヴォーカリストCHAKA(チャカ、安則まみ)さん2人のユニットである。
当時最先端の電子楽器フェアライトを駆使したエレクトリックポップが楽曲の中心。
決して大ヒットを連発していたわけではないけれど、アニメ「シティーハンター」の主題歌やコーセー化粧品のイメージソングなども手掛け、メジャーシーンでコンスタントに約10年活動したのだから十分な実績を残したといっていい。
彼らのファンではなくても、当時日本のポップスをよく聞いていた人が今改めて聞けば「あー覚えてる、覚えてる」となるはずだ。
男女二人のユニットという編成はYOASOBIと同じ。
それぞれの制作スタイルの詳細まではわからないが、多芸多才なサウンドクリエーター(松浦、Ayase)の頭の中にある音像を、ボーカリスト(CHAKA、ikura)が肉体化するという点では類似性があると感じる。
そしてCHAKAさんとikuraちゃんのボーカルスタイルは、声質やファルセット使いなどに差はあるものの、わりと近いと思える。
冒頭に書いたikuraちゃんの特徴、音程の確かさや 日本語の発音の明瞭さはそのままCHAKAさんにも当てはまり、レベルとしてはさらに上であると思う。
ボーカルに対してふさわしい表現ではないかもしれないが、とにかく解像度が高い。
音の一つ一つ、言葉一つ一つの輪郭が非常にクリアでシャープなのだ。
とてもテンポが早く複雑なメロディーラインであっても、このクリアさがブレないし揺れない。
でありながら、技巧一辺倒ではなく、演歌的なそれと比べればもちろん控えめではあるが、情感も漂う。
今回聞き直してみて、日本のポップス史上、屈指のボーカリストだと改めて感じた。
YOASOBIとPSY・S、CHAKAさんとikuraちゃんが、どこまで似ていると感じるかは人それぞれだが、約30年前に、同スタイルのエレクトロポップユニットが活躍し、良質なポップミュージックをリリースしていたことは、もっと再評価されていいと思う。
以下にPSY・Sの曲をいくつか貼り付けておく。
若い人からすれば、イントロは今の楽曲と比べてかなり長く思えるだろう。
30年以上前のテクノロジーでの作品なのだから、今の音とくらべれば、ややチープに聞こえる部分もある。
それでも楽曲の水準は高いし、繰り返すが何よりもCHAKAさんのボーカルは素晴らしい。
まずは、アッパーな曲。サビの声の伸びやかさ。
「Parachute Limit」
「Angel Night〜天使のいる場所〜」
こちらはミディアム。じわりとくる情感。
「ファジィな痛み」
スロウ。たおやかさと透明感。
「花のように」
「CHILD(LIVE)」
幸い歴代のアルバムはサブスクで聞けるので、ぜひチェックしてもらいたい。
本稿は、PSY・Sの過去の作品を振り返る内容だが、CHAKAさんは還暦オーバーの現在もバリバリのボーカリストで主にジャズの分野で活躍しておられる。
と言いつつ、私もしばらくライヴには出向いていないので、近いうちに機会を見つけてぜひにと思っている。
<了>
