世界最高峰のセッションドラマーのコンピ盤がリリースされた。
2019年3月、享年90で他界したハル・ブレイン。
彼の参加した楽曲を集めた追悼企画盤「ハル・ブレイン・ワークス(Hal Blaine Works)」である。
これは日本独自の企画だそうで、選曲は萩原健太氏が努めた。
内外のポップスに精通した音楽ジャーナリストで、米米クラブのプロデュースなどで知られる氏の論評やレコメンドを、私は長く参考にさせていただいている。
とてもバランスのとれた音楽ジャーナリストだと思うからだ。
ここでいう“バランス”とは、専門家としての知識や分析と、いち音楽ファンとしての喜びやはしゃぎぶりとのバランスである。
知識ばかりをひけらかされても味気ないし、すごい!カッコいい!と感想ばかりを声高に叫ばれても引いてしまう。
文章は確かな知識と分析に裏打ちされていて、かつ、文体にはミュージシャンへの敬意と同好のファンへのシンパシーが感じられる、てのが理想。
萩原氏はその理想に最も近い書き手だ。
でもこの選曲にはけっこう苦労されたと思う。
ハル・ブレインが録音に参加した曲は3万5000曲以上。
約150曲が全米ベスト10入りし、約40曲が1位を獲得している。
その中から選ぶ、というのも無茶な話である。
そして、こうしたコンピ盤の常として、入れたいけれど契約上無理という楽曲がある。
そんななかで選ばれた全25曲。
1曲目の「ビー・マイ・ベイビー/ザ・ロネッツ」は鉄板でしょう。
これの許諾がおりてなかったら、初っ端はどうすんだという、ハル・ブレインの代名詞のような曲。
1995年に山下達郎氏が自身の番組でハル・ブレイン特集をしたときも、冒頭はこの曲だった。
このコンピ盤については、いろんな通販サイトや音楽情報サイトにインフォが出ているけれど、どこも邦題の曲名を列記しているだけなのが、いささか不満。
ハル・ブレインのコンピとはいえ、基本は“歌もの”で主役はシンガーなのだから、彼らの名も書くべき。
というわけで以下に書いておく。
01. ビー・マイ・ベイビー/ザ・ロネッツ
02. ジップ・ア・ディー・ドゥー・ダー/ボブ・B・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズ
03. 悲しき雨音/カスケーズ
04. 僕を縛らないで/エルヴィス・プレスリー
05. ダ・ドゥ・ロン・ロン/ザ・クリスタルズ
06. ヘイ・リトル・コブラ/リップ・コーズ
07. 誰かが誰かを愛してる/ディーン・マーティン
08. 恋の雨音/ザ・ロネッツ
09. リンゴー/ローン・グリーン
10. ミスター・タンブリン・マン/ザ・バーズ
11. 夢のカリフォルニア/ママス & パパス
12. グッド・ヴァイブレーション/ビーチ・ボーイズ
13. メリー・メリー/モンキーズ
14. ビートでジャンプ/フィフス・ディメンション
15. 花のサンフランシスコ/スコット・マッケンジー
16. ヤング・ガール/ゲイリー・パケット&ザ・ ユニオン・ギャップ
17. ザ・スネイク/アル・ウィルソン
18. ア・リトル・レス・カンヴァセーション/エルヴィス・プレスリー
19. ロミオとジュリエット/ヘンリー・マンシーニ楽団
20. 輝く星座〜レット・ザ・サンシャイン・イン/フィフス・ディメンション
21. ある愛の詩/アンディ・ウィリアムス
22. 嘆きのインディアン/マーク・リンゼイとレイダース
23. 愛ある限り/キャプテン&テニール
24. わが友カリプソ号/ジョン・デンバー
25. 真実の愛/レナード・コーエン
惜しむらくは、カーペンターズとサイモン&ガーファンクルが含まれていないこと。
契約上、無理だったんでしょうね。
カーペンターズの「クローズ・トゥ・ユー」「トップ・オブ・ザ・ワールド」
サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」「ミセス・ロビンソン」
これら全米ナンバーワンの超有名曲も、叩いているのはハル・ブレイン。
Spotifyとかで、自分なりのハル・ブレイン コンピを組むのも楽しいので、ぜひ。
こちらの動画はハル・ブレインが参加した全米1位の曲をダイジェストしたもの
<了>