やや古い出典になるが、2015年4月、米ローリングストーン誌が「音楽史上最高のライヴ・アルバム ベスト50」を発表した。
「音楽史上」とは言っても、クラシックや民族音楽は含まない。
ロック、フォーク、ジャズ、R&Bなど、いわゆる大衆音楽からのセレクトである。
1位 ジェームス・ブラウン『ライヴ・アット・ジ・アポロ』(1963年)
2位 オールマン・ブラザーズ・バンド『フィルモア・イースト・ライヴ』(1971年)
3位 ジョニー・キャッシュ『アット・フォルサム・プリズン』(1968年)
4位 ザ・フー『ライヴ・アット・リーズ』(1970年)
5位 B.B.キング『ライヴ・アット・ザ・リーガル』(1965年)
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6位 キッス『アライヴ !~地獄の狂獣』(1975年)
7位 グレイトフル・デッド『ライヴ/デッド』(1969年)
8位 MC5『キック・アウト・ザ・ジャムズ』(1969年)
9位 ボブ・ディラン『ロイヤル・アルバート・ホール』(1998年)
10位 ニルヴァーナ『MTVアンプラグド・イン・ニューヨーク』(1994年)
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さすがに名盤と評されるものばかりだが、古いものが多いなあという印象。
大半が60年代、70年代の作品だ。
ディランの『ロイヤル・アルバート・ホール』のリリースは98年だが、録音されたのは66年である。
80年代はゼロ。
90年代のニルヴァーナのみが突出して新しい。
さて、このベスト50の中に、日本で録音されたライブ盤が2作品ある。
これは日本のロックファンには、なかなかうれしいことだ。
中年以上のロックファンの方は、どの作品か、すぐに察しがつくと思う。
まず、ディープ・パープル『ライヴ・イン・ジャパン』(1972年)が32位だ。
評の一部を抜粋しよう。
『ミュール』でのイアン・ペイスによる眩暈がするようなドラムソロから、ジョン・ロードによる『レイジー』の出だし部分の軽やかなオルガンの即興演奏、さらに20分にわたる『スペース・トラッキン』でのトリッキーなエンディングから、『スモーク・オン・ザ・ウォーター』でのイアン・ギランとリッチー・ブラックモアによるヴォーカルとギターの掛け合いなど、メタルのパイオニアである彼らはステージ上で使うトリックとアイデアのほぼ完全なスキルのコレクションを強引に手に入れた(そしておそらく確立した)。
来日メンバーは黄金期と言われる5人。
リッチー・ブラックモア Ritchie Blackmore ギター
イアン・ギラン Ian Gillan ボーカル
ロジャー・グローヴァー Roger Glover ベース
ジョン・ロード Jon Lord キーボード
イアン・ペイス Ian Paice ドラムス
日本盤のジャケットの写真は、日本武道館のステージ側からアリーナ席を捉えるショットだが、実際は収録された7曲のうち4曲が大阪フェスティバルホールでのものだ。
そもそもバンド側は日本での発売に限って許可していたが、その後、輸入盤として各国に出回り、日本国外ではタイトルが「Made in Japan」になって、 ジャケット写真も変更されて発売。
ビルボードで最高6位まで上昇し、プラチナディスクを獲得した。
海外でのジャケットはこちらである。
さて、もう1枚。
チープ・トリック『チープ・トリックat 武道館』(1979年)が13位という高い順位にいる。
これも評を引用しよう。
彼らは日本で絶大な支持を獲得し、ワイルドな音楽の夜をもたらすべく1978年4月に東京の日本武道館に到着した際はビートルズ並みの歓迎を受けた。このアルバムは当初日本国内のみでリリースされたものだが、アメリカのラジオ局が『甘い罠』のライヴ・バージョンを流し始め、輸入盤がかなりの高値で取り引きされるようになったため、レーベルがアメリカ国内でもリリースするという英断を下した。
当時、チープ・トリックは、本国アメリカではほとんど無名で、日本での人気の方がはるかに高かった。
来日メンバーは以下の4人
ロビン・ザンダー - ボーカル、リズムギター
リック・ニールセン - リードギター
トム・ピーターソン - ベース
バン・E・カルロス - ドラムス
現在ではドラムスのカルロスが脱退。別のメンバーになっている。
タイトルは「武道館」だが、実際にはパープルと同様、大阪での音源(厚生年金会館)も含めて編集されているという。
日本では78年秋に発売されたが、アメリカでも日本からの輸入盤が評判となり、1979年2月には、アメリカで正規リリース。全米4位というヒットとなり、チープ・トリックは本国でのブレイクを果たす。
また、この作品はパープルと違って、アメリカでも「At Budokan」のタイトルで発売されたため、コンサート会場としての「武道館」の名を世界に知らしめることになった。
ちなみに、この他で「At Budokan」の名がつくライブアルバムは、ボブ・ディランの「Bob Dylan at Budokan」、マイケル・シェンカー・グループの「One Night At Budokan」などが知られている。
<了>