プライモーディアル・ウォーターズ / ジャメル・ディーン
LAジャズシーンの若き俊英が、現代ジャズの最先端の姿を示した、といってもいいだろう。
カマシ・ワシントンやサンダーキャットらとのコラボでも知られるピアニスト、ジャメル・ディーンの大作アルバム『Primordial Waters』。
過去にピアノ・ソロ作品はあるが、ユニットを組んでのフルアルバムはこれが初である。
2CDのやや異色な構成で、自身のグループ、ジ・アフロノーツを率いて録音したジャズ・サイドと、その音源を使ったヒップホップ/ビート・サイドの二部構成になっている。
ラッパーやビートメーカーとしても活躍する彼のことだから、こういうアイデアが出てきたのだろう。
ジャズファンの中でも“バップ命”みたいな人には「なんじゃこりゃ」かもしれないが、ヒップホップとの混交は、最も今日的なジャズのあり方のひとつだ。
ジャメル・ディーンのルーツは、西アフリカの民族集団ヨルバにあり、そのヨルバの創世記が、このアルバムのテーマだという。
ヨルバの伝統歌を下敷にし、ジャズとヒップホップの解釈、表現を加えて練り上げられたそうだ。
そのコンセプトから凡そ察しはつくと思うが、その演奏はスピリチュアルで壮大な叙事詩ともいうべきもの。
月並みな連想だが、サン・ラを思わせる部分もある。
静謐なピアノソロから破壊的なインプロビゼーションまで、表現の振り幅は広く、聴く者は緊張を強いられるが、それだけ聴き応えのある作品だといえる。
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