おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



ブレッカー・ブラザーズ 1980年の熱演「Live and Unreleased 」

 

ここのところ、どこまでオフィシャルなのか、よくわからないライブ盤がロックやジャズの分野で次々と出ている。

その多くはラジオ放送用に録音されたもので、基本的にオンエアは1回、あっても再放送が1回程度のものであるはずだ。

もちろんそれはミュージシャンサイドの許可を得てのものだから、会場で無許可で録音して販売しているブートレッグ(海賊盤)とは違うわけだが、もともと放送用のをCDで売るのはどうなの、と少しわだかまりを感じてしまう。

 

2020年3月に出たこのブレッカー・ブラザーズのライブ盤にも、そんな印象を盛っていた。

だが、ランディ・ブレッカーがリリースに際し''5週間ものヨーロッパ・ツアーの中でも特別なものだった''とのコメントを寄せているくらいだから、公認の盤と考えていいのだろう。

自主流通やオークションでの販売ならちょっとためらってしまうが、Amazonやタワレコなど大手で扱われているのだから、これは買いだと判断した。ちゃんとミュージシャンにも還元されるのだろうし。

LPも出ていて心が揺れたが、価格も考えて、ここはCDにしておいた。

 

「ライヴ・アンド・アンリリースド」というタイトル通り、未発表のライブ音源で、収録は1980年7月2日、ドイツはハンブルグにある著名なホールOnkel Pos Carnegie Hallとのことだ。

ブレッカー・ブラザーズは、いまだジャズ・フュージョン史に語り継がれる名作「Heavy Metal Be-Bop」など、1978年までに3枚のアルバムリリース。

80年にはアルバム「Detente」を発表し、これにともなって5週間にもわたるヨーロッパ・ツアーを敢行した。

そのうちのハンブルグのステージを収めたのが、このアルバムというわけだ。

 

ホールという名前ではあるが、実際にはライブハウスクラスの規模のようで、聴衆との距離の近さが伝わってくるのが魅力。

メンバーはブレッカー兄弟以下、バリー・フィナティ(g)、ニール・ジェイスン(b)、マーク・グレイ(kyd)、リッチー・モラレス(ds)という面々。

演奏のレベルは非常に高く、録音も良い意味でラフで、熱気をリアルに感じる。
リリースにあたって、ほとんど音をいじっていないように聞こえる。

ランディ、マイケルの熱演はもちろんのこと、スペイシーなシンセを引きまくるマーク・グレイ、強烈なグルーブを叩き出すリッチー・モラレスも素晴らしい。

全10曲のうち5曲が10分以上もあるが、飽きさせずに聴衆をぐいぐい引っ張っていく力量は、さすがというほかない。

最近は、フュージョン系のアンサンブルも、クールで洗練されたものが多いけれど、こうした熱くエネルギッシュな音こそフュージョンと考えている人は多いはず。

そんな人には自信をもって勧められる作品だ。


Don't Get Funny With My Money (Live)


Some Skunk Funk (Live)

 

disk:1
1. Strap Hangin’
2. Tee’d Off
3. Sponge
4. Funky Sea, Funky Dew
5. I Don’t Know Either

disk:2
1. Inside Out
2. Baffled
3. Some Skunk Funk
4. East River
5. Don’t Get Funny With My Money

 

<了>