ランディ・ニューマン(Randy Newman)の名前を聞いて、すぐにそのキャリアが頭に浮かぶ人、代表曲のメロディが口ずさめる人は、そう多くはないだろう。
しかし、この曲を知っている人は、かなりいるはずだ。
大ヒットアニメの「トイ・ストーリー」シリーズ。
その音楽を手がけているのがランディ・ニューマンである。
1995年の1作目、1999年の2作目、2010年の3作目と続き、この2019年夏に日本でも公開予定の4作目も、同じく彼が担当する。
制作サイドからも、ピクサーのファンからも、相当評価が高いのだろう。
でなければ、ここまで続かない。もはや彼の音楽がなければ「トイ・ストーリー」世界観は成り立たないといってもいいくらいだ。
「トイ・ストーリー」だけではない。
「カーズ」「モンスターズ・インク」「バグズ・ライフ」などの音楽もランディ・ニューマン。
さらに遡れば「レナードの朝」「マーヴェリック」などの秀作の音楽も手がけている。
ではこの人、映画音楽専門のプロフェッショナルかというと、そうではない。
もともとはシンガーソングライターである。
1943年ロサンゼルスに生まれ、1968年にアルバムデビュー。
1970年、ランディ作の「ママ・トールド・ミー・ノット・トゥ・カム」をスリー・ドッグ・ナイトがカバーして全米第1位となり、ランディ・ニューマンの名が世に広く知られるようになる。
彼の最高傑作とされるのが1972年にリリースされたアルバム「セイル・アウェイ」である。
楽曲は全体としてシンプルで地味と言えば地味だが、陰影のあるメロディと朴訥とした歌いぶりが、実に味わい深い。
全12曲のうち3分を超えるのは3曲だけ。
通して聴いても30分ちょっとしかないのだが、あたかも映画を見ているかのような印象さえある。
プロデュースは、ドゥービー・ブラザーズやリトル・フィートなどを成功させたレニー・ワロンカーとラス・タイトルマン。
バックには、ライ・クーダー、ジム・ケルトナー、ウィルトン・フェルダーら、西海岸の辣腕ミュージシャンの名前が並ぶ。
セールス的に大ヒットしたわけではないのだが、評論家やプロのミュージシャンなど玄人筋からの評価が非常に高く、今でもロック史上に残る名盤に数えられる。
その1曲目が、アルバムのタイトルでもある「セイル・アウェイ」。
この曲を西城秀樹さんがカバーしており、1978年にリリースされた「バレンタイン・コンサート・スペシャル 西城秀樹 愛を歌う」に収録されている。
正直なところ、このころの秀樹さんのファンと、ランディ・ニューマンのファンは、ほとんど重ならないと思う。しかし秀樹さんは、歌って当然とばかりの自然体で、しっとりとした歌唱を聴かせてくれる。
このコンサートの演奏は新日本フィル、指揮と編曲は服部克久氏。
20歳代前半でありながら、制作陣に恵まれていると改めて思う。
ちなみに秀樹さんの大ファンを任じ、カバーもしているダイヤモンド☆ユカイ氏。
「トイ・ストーリー」の日本語版の主題歌を歌っているのは彼だ。
ユカイ氏もまた、ランディ・ニューマンのファンだそうである。
#この項おわり
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