フィーディング・ザ・マシーン / ビンカー&モーゼス
イギリスはサウス・ロンドンのジャズ・シーンにおいて、フリー・インプロヴィゼイションの旗手と目される、サックス奏者のビンカー・ゴールディングとドラマーのモーゼス・ボイドによるデュオ。
ファーストアルバムは2014年の『Dem Ones』で、これ一回こっきりかと思いきや、2017年には『Journey to the Mountain of Forever』、2018年と2020年にはライヴ作品『Alive in the East?』『Escape the Flames』と、コンスタントにリリースを続けてきた。
今回の『Feeding the Machine』は、スタジオ作としては5年ぶりということになる。
前回のスタジオ作『Journey to the Mountain of Forever』はゲストを交え、スケールの大きな叙事詩的な音絵巻を描いていたが、今回の演奏者はビンカーとモーゼスの二人だけ。
ただし、イギリス人若手ベーシスト、マックス・ラザートがテープ・ループとエレクロニック・エフェクツで参加している。
おそらくは、サックスとドラムの生音をマックスによるマシンでフィードバックさせ、そのフィードバックに対してさらに生演奏を被せているのだろう。
マシンでのエフェクトのかけ方もかなり変則的でスリリング。
生音とマシンを交えた、フリーインプロビゼーションとも言えそうだ。
そして、プロデュースとエンジニアリングは、なんとヒュー・パジャム。
スティングやデヴィッド・ボウイなどを手掛けたロック界の大物である。
レコーディングはピーター・ガブリエルのリアル・ワールド・スタジオにて行われたそうだ。
なるほど、今回の作品には、EDMと言ったら言い過ぎだが、アンビエントやエレクトロぽい印象の曲もある。
マックス・ラザートやヒュー・パジャムを起用した狙いは、そこにあるのだろう。
<了>
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