達郎氏によるジャニーズへの提供曲で、シングル作品で古いものというと、近藤真彦「ハイティーン・ブギ」を思い浮かべる人が多いかも知れないが、実はこれは2番目。
初の提供曲は同じく近藤真彦「恋のNON STOPツーリング・ロード」なのだが、これは「ギンギラギンにさりげなく」のB面だったのであまり知られることはなかった。
以下、リリース年順に並べてみる。
1981年 近藤真彦「恋のNON STOPツーリング・ロード」
1982年 近藤真彦「ハイティーン・ブギ」、そのB面「Momoko」
1984年 近藤真彦「永遠に秘密さ」そのB面「One More Time」
ここまで提供しているのはマッチにのみである。
そしてここから10年以上空く。
1997年 KinKi Kids「硝子の少年」
KinKi Kids「Kissからはじまるミステリー」
1998年 少年隊「湾岸スキーヤー」
KinKi Kids「ジェットコースター・ロマンス」
KinKi Kids「HAPPY HAPPY GREETING」
この期間は大半はKinKi Kidsの曲。
以後20年間には、たった2曲しかない。
(注:その後2022年、KinKi Kids「Amazing Love」がリリース)
2008年 NEWS「SNOW EXPRESS」
2016年 嵐「復活LOVE」
上にまとめたのは、あくまでも提供曲であって、達郎氏の既存の曲をカバーしたものは含めない。
例えばカバーには
KinKi Kids「いのちの最後のひとしずく」
増田貴久(NEWS)「FOREVER MINE」がある。
さて、ここからベストを選ぶ意味はあまりないとは思うのだが、達郎ファンとして選ぶとするなら、「硝子の少年」「復活LOVE」が同点1位である。どちらもメロディの完成度が素晴らしく、アレンジも達郎氏なので、曲全体が達郎テイストになっているのがポイントだ。
「硝子の少年」は、KinKi Kidsという超大型新人のデビューに、よくこんな陰のある短調の曲をぶつけてきたものだ。しかし、その「陰り」や「せつなさ」「はかなさ」が松本隆の詞とともに、KinKi Kidsに見事にはまった。彼らのキャラを決定づけたと言ってもいい。
「復活LOVE」は、この記事を書いている時点で最も新しい曲だが、実のところ2016年のど真ん中の音ではない。1990年代あたりのアーバンなソウルというか洗練されたファンクというか、そういうテイストなのだ。
こうした「仕込まれた古さ」は、ジャニーズのファンにけっこう多いとされるタレントよりも年上の女性層を意識している面があると思う。
「復活LOVE」については、達郎氏が自身のラジオ番組で、制作について語っている。(2016年2月21日オンエア)
達郎氏が言うとおり、裏方の話というのはけっこう珍しいので、以下に書き起こしを記しておく。(一部省略あり)
嵐みたいなスーパースターの場合はですね、いわゆる制作側からの話題っていいますか、裏方からの話題ってあんまり出てこないと思います。
今日は裏方の立場からですね、いくつかお話しましょう。こういう機会は、なかなかありませんので。
私は嵐のメンバーは、まだジュニアだった10代の頃に何度がステージを見ることが出来ています。
個人的にも、とくに松潤は中学生の時からよく知っておりまして、過去、私のライブにも何度も来てくれております。
そんな縁で、今回の楽曲の提供となりました。
色々とやり取りがありましてですね。具体的な要望なんかも受けて作りました。
若い頃から知ってるということは、例えば曲を作る時に、嵐らしさとかですね、昔でしたらキンキらしさとか、そういう各々の個性を楽曲に反映するというのは、とても助けになります。
特に最近のジャニーズはグループも数がとても多いので、グループごとの音楽的な個性化とか差別化が非常に図りにくい、難しい時代でして、どこの音楽制作陣も悩んでるところです。
そういった意味では、非常に幸運でした。
嵐も、もう結成15年超えまして、少年が大人に成長、立派な大人に成長し丁度よいタイミングで仕事ができたと思います。
人に曲を提供する場合、私の場合はですね、歌入れに可能な限り立ち会います。
今回は、全員の歌入れにフルタイムで付き合うことが出来ました。
一番その現場で感じたのが、5人皆それぞれとても特徴的な声を持ってるんです。
嵐のシングルの場合は、ボーカルに関しては大野くんが中心になって歌が進行するっていうのがだいたい定番なんですが、相葉くんとか二宮くんの声に、独特の哀愁がありまして、櫻井くんのフラットな・・それから松潤はハモリ好きなので、全部ハモってるんですが、この松潤のハモリを絡めていくと、得も言われぬムードが出てきます。
各自の歌の特徴っていうものがハッキリ対比できるように、なるべく声に加工しないで、ダブルボーカルとか、そういうのをしないっていう、そういう方針で制作しました。それが今回の一番の狙いでしょうか。
忙しい人達ですので、歌入れは全員、別々に行っております。
全員フルコーラス歌ってもらって、それを元に吟味して歌の分担を決定します。
したがってあとから言葉尻とか譜割り、そういうものがズレないように注意しなければなりません。
歌の切り替えとか順番の段取りは、長年嵐の制作に携わっているスタッフに決めてもらいました。その部分では、私は一切関与しておりません。
相葉くんが「僕のエンジェルが使ってくれなかった」とか、そういう事を言ったりしてますが、僕は関与しない問題です。濡れ衣です(笑)
ちなみに、嵐の音楽制作スタッフも非常に優秀な人達で、私の制作意図をよく理解してくれて、楽しく仕事ができました。
意思決定に一切浮ついたところはありませんで、皆誠実で実に的確な仕事ぶりでありました。嵐の作品がヒットをずっと続けている理由っていうのは、ここでよく分かった気がします。
そういう目に見えない裏方たちの努力にも是非、思いを馳せてあげて欲しいと思っております。
ちなみにですね、スタジオの歌入れの際は、大野くんと櫻井くんは普通に立って歌っております。
相葉くんは椅子に座って歌っております。
二宮くんは椅子の上にあぐらかいて歌っております。
松潤は何故かバランスボールに座って歌います。
皆さん、色々ですね(笑)
蛇足ですけれども、途中出てくる「I miss you」、ここは松潤がやっております。
最後の「おかえり」ってのは、相葉くんがやっております。
このセリフ入れようって提案したのは私ですが、選考したのは私ではありません。スタッフでございます(笑)
使われなかったと文句言われても、僕に言われても困りますが、でもファンの皆様には、きっと喜んで頂けると思います。 (書き起こし終わり)
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達郎氏による「硝子の少年」のカバーを張っておきます。