マーヴィン・ゲイといえば、1960年代後半から70年代前半にかけてヒットを連発し、全米ベスト10に入った曲は15曲くらいある。
しかし1位となると、さほど多くはない。
代表曲である「What's Going On」(1971)は最高位2位。
3週間にわたって2位だったが、1位はとれなかった。
1960年代に1位を獲得したのは1曲だけで、1968年の「I Heard It Through the Grapevine(悲しいうわさ)」がそれである。
1970年代は2曲あり、1973年の「Let's Get It On」、1977年の「Got to Give It Up(黒い夜)」が1位をとっている。
この「黒い夜」が、事実上、マーヴィン・ゲイの最後のヒット曲になってしまったわけだが、40年以上が過ぎたいま聞いても、ほとんど古さは感じない。
マーヴィン自身のペンによるミドルテンポのファンクで、グルーヴィーな演奏とツヤのある歌いまわしが実に心地よい。
英語版のWIKIによれば、もともとは「ダンシング・レディ」というタイトルでレコーディングが開始されたらしい。
ジョニー・テイラーの1976年のヒット「Disco Lady」に触発され、ゲイはテイラーのヒットに対するアンサーソングを考えていたらしい。
しかし「ダンシング・レディ」というタイトルのままだったら、この曲に対する印象は、かなり変わっていたような気がする。
この1977年という年は、名曲が目白押し。
スティービー・ワンダー「Sir Duke」
イーグルス「Hotel California」
アバ「Dancing Queen」
バーブラ・ストライサンド「スター誕生の愛のテーマ」
フリートウッド・マック「Dreams」
全部この年の1位獲得曲だ。
この中に割って入っていったのだから、やはり大したものである。
さて、この曲を盗用していると訴訟騒ぎになった作品がある。
ロビン・シックが2013年に放ったヒット「Blurred Lines(ブラード・ラインズ〜今夜はヘイ・ヘイ・ヘイ)」だ。客演にT.I.とファレル・ウィリアムスが参加している。
アメリカはもとより世界各地で大ヒットし、日本版のMVも制作された。当時AKB48の大島優子と小嶋陽菜が出演している。
この曲をマーヴィン・ゲイの遺族が「黒い夜」の盗用だと、ロビンらを訴えたのだ。
ロビン側も弁護士を立てて盗用はしていないと主張したが、裁判所は曲が盗作だと認定し、マーヴィン・ゲイの遺族へ730万ドル(およそ8.9億円)を支払うよう、ロビンらに命じた。
マーヴィン・ゲイ側の弁護士はリチャード・ブッシュという人物で、エド・シーランの「Photograph」の盗用問題の際も、訴える側に立った。
この件はのちに和解したが、和解条件は公表されていない。
弁護士として、ただビジネスをしているだけなのだろうが、いち音楽ファンとして良い印象を抱くことはできない。
<了>
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