「Am I the same girl」はスウィング・アウト・シスターの1992年のヒット曲。
洋楽ファンでなくても、当時ラジオでかかりまくっていたことをご記憶の方は多いだろう。
思わずステップを踏みたくなるような、軽やかなファンクチューン。
だがこれは、スウィング・アウト・シスターのオリジナルではない。
この曲の作者は1972年の全米ナンバーワンヒット「Oh, Girl」で有名なシャイ・ライツのリードボーカル、ユージン・レコード(Eugene Record)とソニー・サンダース(Sonny Sanders)。
最初にレコーディングしたのはユージン・レコードの奥さんであるバーバラ・アクリン(Barbara Acklin)。
68年にR&Bチャート3位のヒットシングル「Love Makes a Woman」を放ったシンガーだ。
同じ68年に彼女は「Am I The Same Girl」をレコーディングしたものの、実はすぐにはリリースされなかった。
この歌のプロデューサー、カール・デイヴィス(Carl Davis)は、バーバラの歌を消して、歌メロををピアノ演奏にしたヴァージョンを制作しちゃったのだ。
「インストにしたら売れる!」というひらめきがあったのだろうか、このヴァージョンは「Soulful Strut」というタイトルでリリースされる。
演奏したのはヤング・ホルト・アンリミテッド(Young-Holt Unlimited)。
Chessの看板バンド、ラムゼイ・ルイス・トリオのメンバーだったエルディー・ヤング(b)とアイザック・”レッド”・ホルト(ds)が66年に独立して結成したユニットだ。
ちなみに2人が脱退したあとラムゼイ・ルイス・トリオに加入したのが、のちにアース・ウインド&ファイアで大成功をおさめるモーリス・ホワイトである。
演奏したのは~、と書いたけれど、実際にはエルディー・ヤングとアイザック・ホルトではなく、スタジオミュージシャンによるものでは、と言われている。
しかしこれがなんと68年に、全米R&Bチャート3位、総合でも3位という大ヒットを記録。ミリオンセラーになった。
カール・デイヴィスの目論見は、見事に当たったわけだ。
そして、すでにこの曲を録音していたバーバラ・アクリンも、69年にヴォーカルヴァージョンをリリース。
このときのタイトルが「Am I The Same Girl」で、全米R&Bチャート23位、全米チャート79位。
「Soulful Strut」には及ばないものの、そこそこのヒットになった。
そして、92年にスウィング・アウト・シスターがカバーし、ヒットさせる。
良い曲は歌い継がれる、その典型のような一曲だ。
BPMはどれもほとんど同じ。このテンポ、このグルーヴが、この曲の命ということだろう。
なお、イギリスの女性歌手ダスティ・スプリングフィールド(Dusty Springfield)も、69年にカバーしていて、こちらもなかなか良い出来栄えである。
<了>