おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



Handle with Care / Traveling Wilburys (1988)

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これほどの‘スーパー・グループ’は後にも先にも他にない。

1988年に結成されたトラヴェリング・ウィルベリーズ(Traveling Wilburys)。

メンバーの顔ぶれが強烈だ。

ジョージ・ハリスン
ボブ・ディラン
トム・ペティ
ジェフ・リン
ロイ・オービソン

各アーティストの所属レコード会社が異なるため、メンバーの実名は伏せられ、サングラス着用という‘覆面バンド’だったが、立ち姿や声で誰だかすぐにわかる。

彼らの最初のシングルが「Handle with Care」

クレジットでは5人の共作になっているが、実際に書いたのはジョージ・ハリスンである。

全米チャートで最高位が45位。

メンバーが凄いわりには今ひとつの感じもするが、なんせ‘覆面バンド’だし、プロモーションも全くといっていいほど行われなかったので、これはしょうがない。

 


そもそもは1988年、ジョージ・ハリスンが、ロイ・オービソンとジェフ・リンと一緒に食事をしたとき、自身のアルバム『Cloud Nine』(1987年)からの12インチEP「This Is Love」のB面の曲について相談。

そのレコーディングのため、3人でカリフォルニア州にあったボブ・ディランのホームスタジオを借りることになり、ディランとトム・ペティも誘って、5人でレコーディングしたのが、この「Handle with Care」だ。

ジョージがレコード会社にこの曲を提出したところ、シングルのB面にはもったいない!と言われ、アルバム制作を持ちかけられて、トラヴェリング・ウィルベリーズが誕生することになった。

よくもまあ、この5人のスケジュールが合ったものである。

 

The Traveling Wilburys Vol 1

The Traveling Wilburys Vol 1

シングルは45位どまりだったが、アルバム『Traveling Wilburys Vol.1』は、全米3位を記録した。

スーパーグループとは言えギタリストばかりなので、バンドとしてはかたちにならない。

レコーディングではマルチプレイヤーでベースもキーボードも弾けるジェフ・リンが、八面六臂の活躍をしたのだろう。
ドラムにはジム・ケルトナーが参加している。

 

アルバムは極めて好評だったが、なんとリリースから数カ月後の1988年12月にロイ・オービソンが急死。
レコーディング中だったセカンドアルバムは、未発表に終わる。

90年にロイ以外の4人で『Traveling Wilburys Vol.3』をリリースし、全米11位を記録。

ここで事実上、活動を終える。

 

彼らがツアーを行うことはなかったが、トム・ペティはたびたびコンサートで「Handle with Care」を演奏している。

また、2002年11月29日、ロイヤル・アルバート・ホールで開催された、ジョージ・ハリスンの追悼コンサート『Concert for George』では、トム・ペティとジェフ・リンが「Handle with Care」を歌った。

そのトム・ペティも2017年、天へと旅立った。

 

 <了>