おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



山下達郎サンデーソングブック2023年7月30日『アイク&ティナ・ターナーで棚からひとつかみ』

番組中の曲解説の主要な部分を書き起こしています。
ネットにある楽曲にはリンクを張っていますが、オンエアされた音源とはヴァージョンが異なる場合が多々あります。


1. SYNC OF SUMMER / 山下達郎 
2. A FOOL IN LOVE / IKE & TINA TURNER '60
3. IT'S GONNA WORK OUT FINE / IKE & TINA TURNER '61
4. I CAN'T BELIEVE WHAT YOU SAY / IKE & TINA TURNER '64
5. TELL HER I'M NOT HERE / IKE & TINA TURNER '65
6. RIVER DEEP-MOUNTAIN HIGH / IKE & TINA TURNER '66
7. BOLD SOUL SISTER / IKE & TINA TURNER '69
8. PROUD MARY / IKE & TINA TURNER '70
9. NUTBUSH CITY LIMITS / IKE & TINA TURNER '73

ティナ・ターナーが亡くなりましたので、追悼特集ばっかりなので嫌なので「ティナ・ターナーで棚から一つかみ」
で、2週間、カタログ数が多いので、キャリアの長い人なので、まずは今週はアイク&ティナ・ターナー。
こっちの方がティナ・ターナーでものすごくブレイクした時代よりも前でございます。
あんまり日本の放送ではかからないので「アイク&ティナ・ターナーで棚から一つかみ」
でもとにかく曲数が多いので、本当に舐める程度であります。
代表作かけて終わりという感じですけども、でもあんまり、かかりませんね。
初期デビュー作から70年代中頃まで、ソロになるまで、アイク&ティナ・ターナーの作品をお届けしたいと思います。

その前にシングルが発売になりました。
SYNC OF SUMMER / 山下達郎


ティナ・ターナーはテネシー生まれ。
テネシーのナットブッシュというところで生まれた人ですが、お姉さんが働いていたセントルイスのクラブで歌っていたところを、後に旦那さんとなりますアイク・ターナー、ギタリストで後はタレント・スカウトとしても活動していましたが、この人に見初められて、奥さんにされて、アイク&ティナ・ターナーというグループでデビューいたします。
1960年、デビューヒットがいきなりR&Bチャートの2位、ミリオンセラーになりまして、ここからキャリアがスタートします。
最初期はアイク・ターナーの作曲そしてプロデュースですが、その最初期のスー・レーベルは本当にろくなCDがなくて大変なんですけども。
1994年にピーター・バラカンさんが編纂してくださいました「ベスト・オブ・スー・レコード」
このCDのおかげでかけられます。
アイク&ティナ・ターナーの最初のスー・レーベルからのヒット「A Fool In Love」
続いて翌年61年、これもR&Bチャート2位、全米チャート14位まで上がります。「It’s Gonna Work Out Fine」
2曲つづけてお聴きいただきます。

A FOOL IN LOVE / IKE & TINA TURNER 

IT'S GONNA WORK OUT FINE / IKE & TINA TURNER


いわゆるノベルティ風の掛け合いの曲ですけれども、これ、ずっと当然のことながらアイク・ターナーとティナ・ターナーの掛け合いだと思ってたんですけど。
私、具体的なアイク&ティナターナーのレコード集め出したのは70年代の過ぎてから、ま当然なんですよ、日本であんまり出ていませんでしたので。
「プラウド・メアリー」のヒットが出た後に集め始めまして、その頃聴いて、これ当然アイク・ターナーの声だと思ってたんですけども
実はニューヨークのスタジオミュージシャンミッキー・ベイカーの声だったんだそうです。
なかなか分からないことが多い。
ついでにそのバックコーラスもシルヴィア・ロビンソンとミッキー・ベイカーですね。
ミッキー&シルビアのバックコーラスだそうであります。
スー・レーベルはニューヨークのレーベルなので、ニューヨークのミュージシャンが参加してることが多いです。

 

64年にケント・レーベルに移籍しまして。
移籍というか、まあ要するに契約料とかそういうことですね。ビジネスで。
ケント・レーベルから出しました最初のシングル、R&Bチャート95位というチャート・アクション。
I CAN'T BELIEVE WHAT YOU SAY / IKE & TINA TURNER


初期は非常にブルース色が強い、シャウター然としたスタイルでしたけれども、だんだん年が経るにつれて、少しずつ柔らかくなってくるとポップ色がついてきて、60年代後期になると今度はファンク色が出てくるという、そんな感じですが。
アイク・ターナーは割と商売気が強い人なので、レーベルを色々と動きまして売るというか、それでギャランティを稼ぐという。
ロマ・レーベルという60年代中期に作られたレーベルがありまして、ボブ・クラスナウっていう元々はキング・レコードの宣伝をやってた人ですが、この人が作ったレーベル、これはR&B関係の名盤がとても多いですけれども、ここでアイク&ティナ・ターナーが何作か作っております。
中でも私、アイク&ティナ・ターナーの全作品でもとりわけ好きな1曲。
1965年、R&Bチャート33位。
ボブ・クラスナウのプロデュースによるので、今までの作品とは趣が若干異なります。私好み。

TELL HER I'M NOT HERE / IKE & TINA TURNER


こういう具合にレーベルを色々と移っておりますけれども、やっぱりティナ・ターナーの歌唱力に惹かれる人がたくさん出まして。
そんな一人にフィル・スペクターがおりまして。
フィル・スペクターとアイク・ターナー揃ってDV親父でありますが。『TINA』という映画を観ればその凄さがわかりますけれども。
これがくっつきまして、66年に制作したシングルが「River Deep,Mountain High」
ジェフ・バリー&エリー・グリニッチのコンビの作品ですが、これにもうエコーの渦というウォール・オブ・サウンドの中でも一際すごい作品ができました。
アメリカでは正直こけました。
ところがイギリスで3位に上がるヒット曲になりまして、ヨーロッパで大人気になりました。
この辺からヨーロッパでのティナ・ターナーの人気がだんだん大きくなっていきます。
1966年、ちなみに日本では出ませんでした。

RIVER DEEP-MOUNTAIN HIGH / IKE & TINA TURNER 


しかしこのティナ・ターナーていう人は本当に歌が上手いので、どんなトラック、どんな演奏でも歌で持っていってしまう。
そういう人であります。
このときは26,7歳というから、驚くべき。

申し遅れましたが、アイク&ティナ・ターナーというのは必ず女性コーラスがバックについておりまして。
アイケッツという女性三人組。
この人たちも非常にセクシーなコスチュームでありましたけども。
この中からジョシー・アームステッドという、この人もソロ・シンガーになりますけれども、その後、作曲家としてかなりの作品を残します。
とりわけアシュフォード&シンプソンとのコンビで、レイ・チャールズの「Let's Go Get Stoned」とかヴァレリー・シンプソンの「Silly Wasn't I 」とか、数多くの名曲を残しました。
この人がアイケッツのメンバーとして所属しておりました。そんなような余談もございます。

後半は60年代後半から70年代にかけての、だんだんファンク色が強くなっていくのと、あと白人のオーディエンスが増えていくという、その中で大ヒットが生まれるという経過をご紹介したいと思います。

69年にブルー・サム・レーーベルに移籍します。
ちょっと意外です。
ブルー・サムっていうのは、どっちかって言うとわりとソフィスティケートされた音楽が中心なんです。
でもここのブルーサム時代のアルバムも素晴らしい出来のものが多いです。
シングルでもいい曲がたくさんあるんですけども、ファンク色が強くなってまいります。
特にスライ&ファミリー・ストーン出てきましたので、そうした所にかなり影響を受けたのがありありと分かります。
そんな1曲、1969年R&Bチャート22位、全米チャート59位まで上がります。
完全なダンスミュージック。

BOLD SOUL SISTER / IKE & TINA TURNER


このあとリバティ・レーーベルに移りますが、ここでアメリカで大ヒットソングが生まれます。
日本でも大変にこの曲がヒットしました。
クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルカバーであります「プラウド・メアリー」
これがR&Bチャート5位、全米チャートでも4位まで上がります。
日本でも、これはラジオで非常にヒットしまして、ここで一挙に知名度もどんとあがる1曲となりました。
1970年のアイク&ティナターナー「プラウド・メアリー」
PROUD MARY / IKE & TINA TURNER


来週はそういうわけで、アイク・ターナーと別れソロになって、80年代から怒涛の進撃が始まります。
その辺をほんとに、また舐める程度ですけどもご紹介したいと思います。
70年代過ぎるまでは、僕なんかはアイク&ティナターナーって、なんかセクシィ路線で。
すごいコスチュームで。後ろの女の人たちもすごいコスチュームで。
そういう、いわゆるイロモノみたいなそういう感じで惑わされてたんですけども。
レコードでちゃんと聴くとですね、とんでもない(笑)とてつもない(笑)
特にやっぱりこのティナ・ターナーの、この声の持つ悲しみとか、切迫感というのが、ひしひしと伝わってまいります。

今日の最後は、今度はユナイテッド・アーティスト・レーベルに移籍しまして放ちましたヒット。
特にイギリスでは全英4位、ヒットなりました1曲。
ティナ・ターナーの生まれ故郷でありますナットブッシュという街を題材にしました「ナットブッシュ・シティ・リミッツ」
アメリカでもソウル・チャート11位、全米チャート21位というスマッシュになりました。
不思議なことに「プラウド・メアリー」はイギリスではチャートインしなかったんですけど、こちらの方がヒットしたという。
こう落差がですね出てきますが、それも80年代、90年代には統一されます
というわけで「アイク&ティナ・ターナーで棚からひとつかみ」
本日の最後は1973年のシングル。
NUTBUSH CITY LIMITS / IKE & TINA TURNER