番組中の曲の解説部分を書き起こしています(部分的に省略)
貼り付けている音源は、オンエアされたものとは違うことが多々あります。
1. GOOD LOVIN' / THE YOUNG RASCALS '66
2. WHAT IS THE REASON / THE YOUNG RASCALS "COLLECTIONS" '66
3. LOVE IS A BEAUTIFUL THING / THE YOUNG RASCALS "COLLECTIONS" '66
4. A GIRL LIKE YOU / THE YOUNG RASCALS '67
5. IT'S WONDERFUL / THE RASCALS '67
6. HEAVEN / THE RASCALS '69
7. CARRY ME BACK / THE RASCALS '69
8. RIGHT ON / THE RASCALS '71
9. NAMA / THE RASCALS "SEARCH AND NEARNESS" '71
私の60年代、中学高校の時のアイドルでありましたヤング・ラスカルズ。
そのヤング・ラスカルズのドラマーでありましたディノ・ダネリが亡くなりました。
ディノ・ダネリの追悼を兼ねましてオール・ヤング・ラスカルズ。
今日はラスカルズ特集になります。
と言っておりましたら、訃報がいろいろ入ってまいりまして。
トム・ベルでありますとか、バート・バカラックでありますとかですね、いろいろ入っておりましたが、私にとって最重要なミュージシャンの一人でありますヤング・ラスカルズのドラマー、ディノ・ダネリ。
私自身ドラムやっておりましたので、この人のドラム、本当に素晴らしい。
影響を受けたとか、そういうんじゃない、全然真似ができません。
そういうわけでディノ・ダネリの悼特集を、今日はお届けします。
1966年、ヤング・ラスカルズの全米ナンバー・ワンのミリオン・セラー「グッド・ラヴィン」
GOOD LOVIN' / THE YOUNG RASCALS
今日はディノ・ダネリ、60年代のアメリカン・ロックンロールを代表するドラマーの一人でございます。
1944年、ニュージャージーで生まれました。
昨年の12月に亡くなってしまいました。78歳でございました。
ジャズのトレーニングを受けまして、60年代ですので、ロックン・ロールに入ってきまして。
ヤング・ラスカルズというグループを作りました。
ヤング・ラスカルズというのは当時でも珍しいベースのいないバンドでありました。
ハモンド・オルガンとドラムとギターという編成で、イースト・コースト辺りのクラブを荒らしまわりました。
一世を風靡いたしました。
アトランティック・レーベルの契約した初めての白人グループでございました。
それの初めての大ヒット・ナンバー、66年の「グッド・ラヴィン」で始めてみました。
もう、今日はシングル、アルバムいろいろありますけれども。
私の好きなディノ・ダネリのドラムをフィーチャーした、ディノ・ダネリのドラミングが炸裂する曲を、今日はたっぷりとお聴き頂きます。
「グッド・ラヴィン」に続きまして、同じ年、66年、セカンド・アルバム『コレクションズ』の1曲目に入っております、これが私生まれて初めて買ったヤング・ラスカルズのアルバムでありますので非常に印象に残っております。
当時のロックシーンでも非常にユニークなドラミングをみせます。
もう1回聴いたら忘れられないドラムソロ
WHAT IS THE REASON / THE YOUNG RASCALS
ディノ・ダネリは、ジャズのトレーニングを受けた人でありまして、ジーン・クルーパに憧れたという。
ジーン・クルーパは戦前の人ですけれども。
ジーン・クルーパがバックを務めるベニー・グッドマン・オーケストラのカーネギーホールでのレコーディングが、戦後発見され発売されましたので。
ここの世代のベンチャーズのメル・テイラーとかそうですけども、ジーン・クルーパに影響された人が結構たくさんいます。
ディノ・ダネリもそんな一人でありますが、非常にエキサイティングなですね、素晴らしいドラミングをする人であります。
曲を聴いていても、とにかくドラムに耳がいってしまうという。
中学生の私がしびれました。
同じアルバム『コレクションズ』、この66年のアルバムに入っております、初期の有名な作品。
ザ・ヤング・ラスカルズ「Love Is a Beautiful Thing」
LOVE IS A BEAUTIFUL THING / THE YOUNG RASCALS
この時代のアメリカの3大ライブバンドと言われました、ヤング・ラスカルズ、他の二つはドアーズとジェファーソン・エアプレイン。
考えてみたらドアーズもベースがいないバンドで、不思議でありますが。
ドアーズとジェファーソン・エアプレインはウエスト・コースのバンドですけど、ヤング・ラスカルズは、イースト・コーストの、それもクラブバンド、踊らせるバンド。
そういうようなジャンルに入りましたけれども。
リードボーカルが二人おりまして,フェリックス・キャヴァリエとエディ・ブリガッティ、この二人のコンビで作曲も担当しまして、フェリックスの曲、エディ・ブリガッティの詩、そういうコンビで少しずつクリエイティビティを増してきまして、作品の能力が上がっていきます。
それをバックアップするトム・ダウド。
アレンジャーのアリフ・マーディン。
そうした人たちの力添えもありまして素晴らしい作品を生み出していきます。
1967年、全米10位のヒットソング「ア・ガール・ライク・ユー」
途中のディノ・ダネリのフィルが、もうたまらない一曲
サード・アルバム『グルーヴィン』に収録されております。
A GIRL LIKE YOU / THE YOUNG RASCALS
オリジナルUS盤はA面の1曲目にこの「ア・ガール・ライク・ユー」ですが、日本盤は「グルーヴィン」が全米ナンバーになりましたのでA面の1曲目が「グルーヴィン」になっております。余談でございますが。
このディノ・ダネリという人は、ドラマーなんですけれども美術の心得があってですね、この67年のアルバム『グルーヴィン』のイラストはディノ・ダネリが描いておりまして。
この先のアート・ディレクション、それからイラスト、オブジェ、そういうようなものを手がけるようになってきました。
それがまたラスカルズのアルバムの特徴、音楽だけでなくアーティスティックな特徴をすごく発揮する要因ともなっています。
で先ほど申し上げましたみたいにヤング・ラスカルズというグループはベースがいませんので、レコーディングではこの頃からベーシストを足すようになります。
それもいわゆるジャズの一流どころ、ロン・カーター、チャック・レイニー、リチャード・デイビスとかですね。
そうしたそうそうたるベース・プレイヤーに参加してもらって、それに加えてアリフ・マーディンのオーケストレーションが加わりまして、その結果、非常にゴージャスな作りになっております。
テクニック的にも非常に上がって参ります。
でもディノ・ダネリのドラミングがそれに全く負けることなくですね。
多くのロック・グループはですね、レコーディングはスタジオミーシャが代わりにやるというような中で、ヤング・ラスカルズは自分たちで演奏しているという。当たり前っちゃ当たり前ですけども。
元々バンド始めた時は、ラスカルズという名前だったんですけど、同名グループがいましたのでヤングをつけてヤング・ラスカルズとしてデビューしました。
この頃になりますと、そのラスカルズさんの方が全然いなくなってしまいまして、元の名前に戻ります。
67年のことでございますけども。
ラスカルズ名義で作品を発表するようになりました。
その最初あたりのヒット・シングル1967年、全米20位「It's wonderful」という非常にサイケな作品でありまして。
シングル・バージョンの方が面白いんですけれど、今日はディノ・ダネリの追悼なのでディノ・ダネリのドラムがよく聞こえるステレオ・バージョンでお聴き頂きます。
この曲間奏のサックスがスティーブ・マーカスで、この人もジャズのプレイヤーです。
私は中学から高校にかけてこうしたラスカルズのレコードで、そうしたジャズのミュージシャンのクレジットというのを、アトランティックのミュージシャンを耳にして、だんだんジャズの世界に目を開かせてもらったという、そういう恩恵を受けた作品でもあります。
IT'S WONDERFUL / THE RASCALS
ジャズ系のドラマーなので、いわゆる走るといいましょうか、ラッシュするという感じでありますが、それがまたいいんです。
このスピード感って言いましょうか、だんだん走ってくる感じと言いましょうか。
今のコンピューター・ミュージックに慣れた人だと「何か走ってる」なんて、いや違うんです。
これは、人間のやってるグルーヴです。
今日はとにかくディノ・ダネリのドラムがいいやつを自分で選んでやってますんで。
いきなり67年から1年飛びまして。
ラスカルズの全作品の中でも、1番好きな1曲。
アルバム「Freedom Suite」に入っております、1969年全米39位というですねスマッシュ・ヒットでございますけど。
演奏も最高のグルーヴをしております。
ベースのリチャード・デービスのあのコーダのあれといい、それに呼応するディノ・ダネリのフィル・インといい素晴らしい作品。
HEAVEN / THE RASCALS
だんだん、だんだんチャートが振るわなくなってきますけれども、それには原因がありまして。
いわゆる公民権運動の中で、そういうような運動に参加することによって南部でのライブ活動が無くなるという、そういうなことがありまして。
それでメッセージ性が非常に強くなってくると、だんだん、いわゆる商業性が希薄になってくという、そういう時代になっていきます。
それでも作品は本当に素晴らしいものなので。
私は、そういうチャートとか全く気にせずに聴いておりました。
後半もそうした私の好きなディノ・ダネリのドラミングをフィーチャーしたラスカルズの作品をお楽しみ頂きます。
69年のアルバム「See」、マグリットのジャケットで有名なやつですけども。
これに入っております、シングルカットされまして全米26位、素晴らしい演奏であります。
私の高校2年の時のあれですけど。
このハイハット・ワークのコンビネーション素晴らしいっていったらないですね。
追随を許さないという。
CARRY ME BACK / THE RASCALS
だんだん、ラスカルズのメンバーが分裂しまして。
71年のアルバム「Search and Nearness」、アトランティックの最後のアルバムですけども、これでエディ・ブリガッティが脱退してしまいました。
いわゆるストックで作られたアルバムでございますけども。
でも内容は、私すごく好きなんですけど。
このアルバムの1曲めに入っております、日本ではシングルカットされました。
このスネアのポイントが素晴らしい1曲であります。
1971年のアルバム「Search and Nearness」から「ライト・オン」。
何せ、この歌に呼応する、歌を非常によく聴いているドラマーで、歌にレスポンスするというその瞬間のそのスリルというか、それが素晴らしい。
RIGHT ON / THE RASCALS
せっかくでディノ・ダネリの追悼特集なので。
ディノ・ダネリのドラム・ソロをフィーチャーした作品
71年のアルバム「Search and Nearness」のA面の最後に入っております「ネイマ」。
NAMA / THE RASCALS
というわけでディノ・ダネリの追悼特集でございました。
ラスカルズが解散した後はブルドッグ、フォトメーカーというバンドを経まして、リトル・スティーヴンのプロジェクトに加わりまして、長いこと活動を続けました。
本当にうまいドラマーであります。
私の音楽的な基礎を作ってくれた音であります。
中学、高校の時の私のベースであります。
心よりご冥福をお祈りしつつ。
2012年にラスカルの再結成された時にニューヨークまで見に行きまして。
その時も素晴らしいドラミングを聴かせてくれました。
思い出とともにご冥福をお祈りしたいと思います。
<了>