おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



山下達郎サンデーソングブック2023年1月29日『極私的 高橋幸宏 追悼』

番組中の曲の解説部分を要約して書き起こしています。ネット上の音源を張っていますが、オンエアされたものとは異なる場合があります。

 

1. サマー・ビーチ・ガール / バズ '75
2. ELASTIC DUMMY / 高橋ユキヒロ "サラヴァ!" '78
3. BACK STREET MIDNIGHT QUEEN / 高橋ユキヒロ "サラヴァ!" '78
4. WALK ON THE WAY OF LIFE / 矢野顕子 "東京は夜の7時" '79
5. JUST IN THE RAIN / ラジ "ラヴ・ハート" '78
6. JUST ANOTHER NIGHT / アン・ルイス "ピンク・キャット" '79
7. あしたこそ、あなた / 矢野顕子 '81


高橋幸宏さんがお亡くなりになりましたので、幸宏さんさんの追悼特集をしようかと。
そこら中で、もうテレビの特集までありますので、ここで「ライディーン」をお聴きいただいても、あんまりなので。
得意の「極私的追悼特集」
私と幸宏さんが仕を事一緒にした作品で、ちょうど55分収まります。ですので他とは全く選曲が違います。
私と幸宏さんの一緒にやったコラボレーションの作品で、今日は偲んでみたいと思います。
日曜の午後のひと時、今日は高橋幸宏さんの作曲、それから素晴らしいドラムをお楽しみいただきたいと思います。

 

先日お亡くなりになりました高橋幸宏さん、ドラマーであり、それから作曲も手がけられます。
YMOで一世を風靡いたしました。
素晴らしいドラマーであります。
サディスティック・ミカ・バンドからプロのキャリアをスタートしまして、その後、スタジオミュージシャンを経てYMO、そしてソロ作品もたくさん残されました。

僕と幸宏さんが一番最初に会ったのは1975年のことでありまして、お兄さんの高橋信之さんはコマーシャルをたくさん手掛けている方で。
僕コーラスのスタジオ・ミュージシャンやっておりましたので、それの仕事なんかをしておりましたら、幸宏さんから声がかかりまして。
特に僕がビーチボーイズが好きだというのが、幸宏さんの耳に入りまして、彼もビーチ・ボーイズが好きな人なので。

BUZZ(バズ)、男性デュオ・グループのBUZZのですね、1975年のシングル盤の「はつかり5号」。
これのB面にですねビーチ・ボーイズのオマージュ・ソング、幸宏さんの作曲になります「サマー・ビーチ・ガール」という。
伊藤銀次さんがギターを弾いております。
私はこれのコーラス、ベースパートとトップの裏声のパートを担当しまして。
真ん中の3パートはBUZZのお2人と私と3人でやった。
これが最初の幸宏さんと仕事の出会いであります。
サマー・ビーチ・ガール / バズ


幸宏さんは私と同じ年で、1952年の6月6日、私1953年の2月4日でございます。
学年が全く同じなんだけど、学年上みたいに、いつも「幸宏さん、幸宏さん」って言ってましたね(笑)
音楽だけでなく、武蔵野美術大学のデザイン科に行かれた方ですので、ファッション関係のセンスもたくさんあります。

幸宏さんのインタビュー記事が出てますけど、その中にも書かれてますけども、どっか野音かなんかのイベントでですね、僕が出た時に、キーボードが坂本龍一さんだったので当時、その時に幸宏さんと坂本君が出会って、そこからYMOに発展していくという。
YMOのプロジェクト、始める頃にもう、お互いにスタジオ・ミュージシャンをたくさんやっておりましたので。

幸宏さんの1978年のソロ・デビューアルバムで「サラヴァ!」というアルバムがありますが、ここに2曲ほど私コーラスで参加しておりますので、それをお聴きいただきます。

サラヴァ!

サラヴァ!

Amazon

これは、YMO前夜の作品であるので。
当然、坂本君がアレンジ、全面。幸宏さんのドラム、細野晴臣さんのベースという、素晴らしい演奏のアルバムであります。
この中からまずは「エラスティック・ダミー」、これは坂本龍一さんの曲です。
私と吉田美奈子さんでコーラスをやっております。
ELASTIC DUMMY / 高橋ユキヒロ

これ、なんと一発録りじゃなくて、全員別に録ってるというですね。
クリックで全員別に演奏してるという驚くべきトラックであります(笑)。
ギターのソロは松木恒秀さん。
しかし、もうこの幸宏さんのですね、このスネアの、このスナップのですね、音。このシャープさ。素晴らしい。

 

もう1曲、この「サラヴァ!」ではコーラスやらせてもらってます。
こちらは幸宏さんのボーカルが入っております。
2000年代になってこの「サラヴァ!」
幸宏さん、歌を歌い直してですね再発しましたけど。
僕、この元のアルバムの歌のが好きなので(笑)
オリジナルのアルバムから「Back Street Midnight Queen」
ギター・ソロは和田アキラさんですね。
BACK STREET MIDNIGHT QUEEN / 高橋ユキヒロ


78年はYMOができた年でありますが、細野晴臣さんは、ずっと昔から幸宏さんを狙ってたんだという、そういうようなことを私に語ってくれたことがあります。
で、979年ぐらいからYMOがメガになっていきますが、その前夜です。
矢野顕子さんのバックアップも、細野さんと幸宏さんと坂本龍一さんで担当しております。
その時代、ライブアルバムが出ております。
「東京は夜の7時」という、1979年に出ました(録音は78年)。

東京は夜の7時

東京は夜の7時

Amazon

これも私と吉田美奈子さんで、ライブでコーラスをやっております。
このライブの最後の曲で全員がソロ回しで、メンバー紹介されるという。
これで珍しく細野さんがベース・ソロ、それから幸宏さんのドラム・ソロが入っております。
長いですけど、お聴を頂きましょう。
78年の矢野顕子さんのアルバム「東京は夜の7時」から「Walk On The Way Of Life」
中野のサンプラザか渋谷公会堂か、どっちかですけれども。
WALK ON THE WAY OF LIFE / 矢野顕子


私と幸宏さんの一緒にやった仕事で、今日は、申し遅れましたが、時系列順にお届けしております。

1978年に女性シンガーのRAJIE(ラジ)さん。元ポニーテールですね。
このアルバムのプロデュースを幸宏さんがなさった時に私コーラスで呼ばれまして。
幸宏さんの作詞作曲のシカゴソウル風の「ジャスト・イン・ザ・レイン」という曲のコーラスを担当いたしました。
途中でラジさんとデュエット状態になるという。
1978年、ラジさんのセカンドアルバム「Love Heart」から「ジャスト・イン・ザ・レイン」
この曲のパーソナルは、先程の矢野顕子さんと全く同じです。
幸宏さんのドラムで細野さんのべース坂本君のキーボード、そして松原正樹さんのギターというラインナップであります。
JUST IN THE RAIN / ラジ


もう1曲いけますね。
年が明けて1979年、とにかくもう、細野さんと幸宏さんのベースとドラムのコンビネーションが、こういう仕事一緒にしているとあんまり素晴らしいんで(笑)
1979年に、私アン・ルイスさんのプロデュースをしました。
「PINK PUSSY CAT」というタイトルのアルバムですが。

この「PINK PUSSY CAT」というタイトルが、なんかわいせつだとかレコード会社が言いまして、邦題は「PINK CAT」になってしまいます。
このアルバムで、細野さんと幸宏さんにお願いしまして、何曲かレコーディングをしました。
そのうちの1曲「Just Another Night」。

この曲は後に大作曲家なりますダイアン・ウォーレン、どっかのインタビューで私申し上げたことがありますけども。¥、ダイアン・ウォーレンは、なかなかですね向こうで芽が出なくて。
もうやめて国に帰ろうかと思っている時に、私のパートナーでありましたアラン・オデイが、優秀なソングライターがいるんだけど使ってくれないかと売り込みにきまして。
それでいい曲だったので、このアン・ルイスさんのアルバムのためにレコーディングをしました。

これがダイアン・ウォーレンの作品が、レコード化された最初のものになりまして、それでダイアン・ウォーレンは勇気が出て、もう一回がんばってみると。
それで数年後にですね、大作曲家になるというそういう逸話があります。

1979年のアン・ルイスさんのアルバム「PINK PUSSY CAT」から「Just Another Night」
こちらの方は、幸宏さんのドラム、細野さんベースで、ギターは松原正樹さん、キーボードは佐藤博さんというラインナップ。
JUST ANOTHER NIGHT / アン・ルイス


というわけで高橋幸宏さんの追悼特集、極私的な特集でお届けしました。
だいたい79年から80年の初頭ぐらいまで一緒にやりましたけども。
その後YMOもとにかくメガヒットになって。
こちらも「RIDE ON TIME」のヒットから、全国ツアー、そういうような自分の活動が主になりますので。
そうしたスタジオ仕事からだんだん離れていきますので、それ以降は、ほとんど一緒にすることはありませんでしたけども。
この70年代の中期から80年の初期にかけて、いろんな仕事で一緒に働かせていただきました。

幸宏さんは本当に人間的な穏やかな人で、いい思い出ばっかりであります。
同じ年だったので、だから本当に寂しい思いがします。
そうして旅立っていった方々の分まで残った者たちは一生懸命がんばらなきゃいけないと思う今日このごろでございます。
心よりご冥福お祈り申し上げます。


今日の最後は1981年に矢野顕子さんのシングルのみでリリースされました曲。
これよく私の番組でかけておりますけども。
これのコーラスをやってくれというオファーで、アソシエーションみたいなコーラスをやってくれ、という。
ですので、そういうアソシエーションみたいなコーラスをやりまして。
自分でもうまくいったと思いましたので(笑)
そこから発想して「クリスマス・イブ」のコーラス・ワークが思いついたという、そういうような時代の音であります。

この曲は、いわゆるクリック、ドンカマと一緒に演奏しているんですけれども、そのクリックを聴きながら、これだけのグルーヴを出せるという
この高橋幸宏さんというドラマーの、それから細野さんのベースもすごいんですが、この技量はすばらしい。
幸宏さんのドラム、細野さんのベース、矢野顕子さんのピアノ
私、恥ずかしながらギター弾いております(笑)
「極私的高橋幸宏追悼特集」ご清聴ありがとうございました。
矢野顕子さん1981年のシングル「あしたこそ、あなた」
あしたこそ、あなた / 矢野顕子


<了>