おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



【JAZZ新譜】現代のラージアンサンブルの魅力をふんだんに Imaginary Visions / Miho Hazama、Danish Radio Big Band (2021)

イマジナリー・ヴィジョンズ / 挾間美帆

 

グラミー賞ノミネート作「ダンサー・イン・ノーホエア」以来3年ぶりの挾間美帆の作品。

2019年よりDanish Radio Big Band (DRBB、 デンマーク・ラジオ・ビッグバンド) の首席指揮者を務めており、DRBBとの作品はこれが初となる。

現在彼女はニューヨークを拠点に活躍中だが、DRBBはデンマークであり、また、オランダの名門、メトロポール・オーケストラの常任客演指揮者も努めていて、まさにワールドワイドな活動を続けている。

 

本作の収録曲7曲はすべて自身のオリジナル作品。

オーソドックスなビッグバンド、ラージアンサンブルのフォーマットで作られていて、その意味では60年近い歴史を持つ名門の、歴史を受け継ぐものといえる。

明るく躍動のある曲が多く、聴く者の気分を心地よくアゲてくれる。

おそらくスコアを見れば、相当複雑で難易度が高いのだろうが、それを軽やかに聴かせるのがプロの技。

音の分離もよく、各楽器の個性も際立っていて、音の大波小波が寄せては返すその心地よさは、ラージアンサンブルならではだ。

 

指揮者であるからには、メンバーの個性をうまく引き出し引き立てるのも仕事なわけで、例えばけっこうロックぽいギターが鳴っているのは、おそらくはギタリストのそうした特性を挟間が活かしたのだろう。

正直、ギタリストのキャラやキャリアを承知してないので、半ば憶測だけれど。

 

高度なラージアンサンブルを、軽やかに楽しく聞かせるという点では、このアルバムの完成度は高いし、日本人女性が海外でこうした仕事を成し遂げているのは、嬉しくもある。

いまさら言っても意味がないけれど、五輪開会式の音楽は、挟間のような人にこそやってほしかったと思う。

 


1.I Said Cool, You Said... What? / Soloist: Nicolai Schultz (fl), Per Gade (g)
2.Your Scenery Story / Soloist: Mads la Cour (flh), Hans Ulrik (ts)
3.Mingle-Mangle Goody Bag / Soloist: Henrik Gunde (p), Peter Fuglsang (as)
4.Home / Soloist: Petter Hangsel (tb), Henrik Gunde (p), Mads la Cour (flh)
5.Mimi's March / Soloist: Peter Dahlgren (tb), Anders Gaardmand (bs)
6.On That Side / Soloist: Kaspar Vadsholt (b), Marten Lundgren (tp), Karl-Martin Almqvist (ts), Soren Frost (ds)
7.Green / Soloist: Karl-Martin Almqvist (ts)

<了>

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