安斉かれんは、「M 愛すべき人がいて」で、浜崎あゆみ役を演じ話題を呼んだ。
これがドラマ初出演だが、歌手としてのデビューは2019年5月。
シングル「世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた」をリリース。
その音楽性と彼女のルックス、ファッションは、安室奈美恵、浜崎あゆみ、倖田來未と続くエイベックスの歌姫の系譜に連なるものだ。
アイドルグループ全盛のいま、若い女性歌手がソロで脚光を浴び成功を収めるのは、そう簡単なことではない。
安斉かれんにはその素質があると、エイベックスは見込んだということだ。
たしかにルックスには華がある。
ずば抜けて歌がうまいわけではないが、可憐さと切なさが同居した声質は、なるほど耳を引く。
彼女の5作目のシングル「僕らは強くなれる」は2020年7月22日リリース。
ある音楽サイトのレコメンドにあったので、何気なくMVを見てみた。
曲は、いわゆるJ-POPの王道を行くものだ。
少し哀愁を帯びた、輪郭のはっきりした力強いメロディー。
作曲は元Every Little Thingの五十嵐充と知り、なるほど。
そして、本格的なマーチングバンドに目と耳を奪われる。
演奏もアレンジも素晴らしい。
ブログ主である私は、学生時代にサックスとフルートの経験があり、多くのビッグバンドやブラス作品を聞き続けてきた。
素人ではあるが、それなりに聞く耳はもっているつもりだ。
この演奏は京都橘高校吹奏楽部。
マーチングバンドに興味のある人で、この名を知らない人はいないだろう、名門中の名門。
コンクール等の入賞経験は数しれず、海外でも知られている。
あとで紹介するが、彼らの動画のコメント欄には、英語の書き込みも多いのだ。
そしてアレンジと指導は、村田陽一。
日本のトロンボーンプレイヤーの第一人者にして、ブラスアレンジにおいても超一流。
そもそもはジャズ畑の人だが、アレンジを手掛けたアーチストは椎名林檎からジャニーズ系まで非常に幅広い。
その村田陽一が、1年以上をかけ京都橘高校吹奏楽部を指導したという。
なるほど完成度が高いはずだ。
楽曲も演奏もダンスも見事だが、マーチングの魅力をきちんと捉えた、撮影、照明、編集が素晴らしい。
安斉かれんも吹奏楽の経験があるそうで、MVの終盤にはソプラノサックスを吹くシーンがある。
詞も安斉かれんが吹奏楽部での経験をもとに書いたらしく、タイトルにも示されている通り、挑戦し続ける人々へエールが歌われている。
2020年夏季高校野球 都道府県別大会テーマソングにも起用された。
この作品に関しては、いくつかのドキュメンタリー動画が公開されていて、興味深い。
まず村田氏による演奏の指導を綴ったもの。
氏の丁寧な指導にまっすぐに応えようとする、生徒たちのキラキラした表情が眩しい。
2つ目の動画はレコーディングシーンだ。
安斉かれん / 僕らは強くなれる。ドキュメンタリー①『楽曲篇』
安斉かれん / 僕らは強くなれる。ドキュメンタリー② レコーディング篇
3つ目の動画は「ダンス編」
振り付けを担当したのは、will.i.amやミッシー・エリオットとのコラボレーションでも知られる野口量。
これもまたプロ中のプロの仕事。
安斉かれん / 僕らは強くなれる。ドキュメンタリー③『ダンス篇』
そしてなんと、Marching Band Ver.が公開された。つまり歌なし、演奏だけ。
これは予想していなかったので、驚き、うれしかった。
いったいどれほどの練習を重ねただろう。
演奏もダンスも溌剌として、見ていて楽しい。
英語のコメントが多いのは、海外で彼らに注目している人が多いということだ。
安斉かれん / 僕らは強くなれる。(Marching Band Ver.)starring 京都橘高校吹奏楽部
ポピュラーミュージックはパソコン一台あれば、できてしまう時代だ。
これほどの大人数で手間と時間をかけるのは、むしろ例外。
ビジネスとして採算を第一に考えれば、こうした作り方はまず選ばない。
それでもあえてこうした企画を実現したのは、エイベックスと安斉かれんに、吹奏楽にかける熱意、マーチングに頑張る生徒たちへの思いがあったからだろう。
コロナ禍にあって、多くの学生スポーツ大会が中止や縮小となっている。
ブラス、マーチングも同じで、発表の機会を失った生徒は全国に数多くいる。
それでも、この盛夏の中、密を避けながら必死で練習しているクラブ、チームはたくさんあるはずだ。
もし、彼らの演奏をどこかで耳にしたら、拍手とエールを贈ってあげて欲しいと思う。
追記)
マーチングバンドVer.の楽譜がパート別の譜面含め全て無料で、下記のサイトからダウンロードできるそうだ。
関係者の心配りには、本当に頭が下がる。
期間限定かもしれないので、早めにどうぞ。
#僕らは強くなれるはず - 『ブカピ』による『ブカピ』のための相互エール
<了>