おとのほそみち

行きかふ歌も又旅人也



山下達郎サンデーソングブック 2021年1月10日「新春放談2(ゲスト:宮治淳一)」書き起こし 2/2

オンエアされた曲に関する達郎氏のコメントを書き起こしています(一部要約あり)。インフォメーションなどは割愛しています。貼り付けている音源は、オンエアされたものとは異なる場合が多々あります。

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1. SHADOW OF YOUR LOVE / BOBBY FREEMAN '66
2. SINCE I FELL FOR YOU / DICK JENSEN & THE IMPORTS '65
3. NEW YORK CITY'S A LONELY TOWN / DICK JENSEN '73
4. MIND EXCURSION / WAYNE FONTANA '68
5. BICYCLE RIDE / DON MARLEY '71
6. ROUNDABOUT (JAPANESE VERSION) / CONNIE FRANCIS '66
7. BOOM-A-LAY / THE ASTRO-JETS '62
8. MORE THAN A FRIEND / THE WOODEN NICKELS '68

 ※このページには6曲目以降を掲載

 

達:今回、持ってきてもらったもので、いちばんアレした曲がコニー・フランシスの「ROUNDABOUT」、トニー・ハッチの作品です。コニー・フランシスがロンドンに行って3曲レコーディングした中の1曲と資料に書いてあります。なんとこれの日本語盤。日本語で歌われているやつがありまして、不勉強で、CD持っているのに知らない(笑)
宮:自分もレコード整理しながら、え、これだったのぉ、みたいなのいっぱいあって。lool at yourselfですね。
達:宮治君に何度も来てもらってるからアレですけど。そのとき言ってますけど、6年、7年、南カリフォルニアで生活してて、仕事でね。毎週日曜日は、南カリフォルニアのそういうレコード・マーケットに行って。
で、宮治君の主義っていうのは、高いアイテムは買わない。アルバム3000円以上は手を出さない。でもトップ40を全部集めるという。
宮:トップ40は、ヒットしてるわけですから、数あるんで。がんばれば集まります(笑)
達:なるほどね。
宮:でも、数集めなきゃなんないんで。盤単価は安くても、投資はけっこうかかるっていう(笑)
達:これも、いつも言ってますけど(笑)宮治君は、昔、ディスコメイト・レコードの東北の宣伝担当だったんですよね(笑)
宮:くくく(笑)
達:山形放送って放送局がありましてね(笑)
宮:ありましたねぇ(笑)
達:山形放送のレコード室ってのは、今やってる、このスタジオの、二十畳程度の、これからちょっと毛が生えたくらいの広さで。それで、いつもそこへ行って、レコードを見てると(笑)捨てるレコードっていうのが置いてあって。
レコード室の人が、「うちは狭いんで、もう置けないんで捨てるんです」「捨てるんだったら、もらっていいですか」「どうぞ、持っていってください」って。
宮:ダブっちゃうんですよね。
達:それを見ていると、一応新譜が多いんで。なんかね、足りないんですよ(笑)「僕以外にこれ見てる人、いるんじゃないですか?」「ディスコメイトの宣伝の方が、いつもいらっしゃいます」って(笑)それが、宮治君を知った最初だからね(笑)
宮:でも、誰か見てるってわかるところが、やっぱすごいですよね(笑)なんとなく通った跡がある。
達:そうそう、79年の話。
宮:達郎さんがレコード出す度に東北へ行かれて、ちょうど同じような頃、まわってたんですね。
達:そうなんですよ。それ以来ですからね。
宮:40年以上前ですね(笑)
達:お互い、元気でいましょう(笑)

達:それでコニー・フランシスの「ROUNDABOUT」、日本語ヴァージョンですけど。
宮:当時ね、シングル盤が日本語と英語で出てるんですよ。日本盤が出てることに驚いたと同時に、日本語で歌っていると。確かにこの人はこの前から「可愛いベイビー」「夢のデイト」とか歌ってるから、おかしくはないですが、日本で出たのは66年。66年に日本語ヴァージョンて。
達:ちょっとすごいですよね。
宮:ちょっと調べたら日本でCD出して、それがステレオだって、ひっくり返った。ところがCDどこ探しても売ってないんで。
達:私、持ってた(笑)だからこれだけ今日はCDです。
宮:このへんのところまで漏らさずやっている。
達:グレイテスト・ヒッツが2枚出ていて、最初は英語で、同じ仕様で日本語。なかなかえらい。
宮:はじめて見ました。
達:日本語の詞、訳詞を書いているのが薩摩忠(さつまただし)さん。詩人で、童謡の詞とか書いている人で、歌謡曲で有名なのは「暗い港のブルース」という、フランク赤木さんが最初にレコーディングして、キングトーンズがカヴァーした。
(曲は)早川博二(はやかわひろつぐ)さんかな。早川博二&モダン・ポップス・オーケストラという。
トランペット奏者なんです。あと左卜全の「老人と子供のポルカ」の作曲者です。
その人とコンビをくんだのが「暗い港のブルース」だけど、ポリドールです。日本グラモフォンの関係なので、そういう作詞家が乗っかった。
「ROUNDABOUT」曲は素晴らしいです。Major7thの持ってきかたがトニー・ハッチらしい。自分の「BIG WAVE」とかのラインにつながるんですよ。でも知りませんからね僕これ。
宮:去年、驚いたものの右の横綱ですね。
達:素晴らしいメロディラインです。

ROUNDABOUT (JAPANESE VERSION) / CONNIE FRANCIS


 達:うん。これはいい。素晴らしい。
宮:65年の5月26日にロンドンで録音されたそうです。同じ年の8月26日に、フランス語、イタリア語、スペイン語、日本語、ドイツ語で歌われたんですが、日本では66年なんです。相当に力が入ってたんだと思います。
達:たしかにね。
宮:曲いいし。65年といえば、その1月か2月にペトゥラ・クラーク「Downtown」がアメリカで1位になってるんです。
達:なるほどー。
宮:それでコニー・フランシス側が、こういうのやりたい、ロンドンへ行こう、トニー・ハッチに曲を発注して、という流れだったんじゃないかと、想像でございますが。
達:なるほどー。
宮:ちゃんと入ってるんです。アメリカで80位で。だからまあまあ。
達:そうですね。コニー・フランシスはもう下り坂でしたから。
宮:達郎さんがCD持ってたおかげで聞けました。今日ステレオで。
達:持ってても聞かないと。ひどいなあ。

達:今年はドゥー・ワップ・ナゲッツをインディーでやろうと。
宮:もともとインディーですから。
達:相変わらず買ってるんですが、去年、いちばんうれしかったやつが、これもボロボロのやつしか持ってなかったけど、いいやつを手に入れたんですよ。アストロ・ジェッツ。
宮:(笑)無名ですねえ。
達:曲を書いてるのはジュエル・エーキンス。「THE BIRDS AND THE BEES」の。
宮:じゃあ、まあまあ。
達:歌ってるのは本人という説もあるけど、わからない。
いわゆるジャングルもので、ピグミーとか出てくるので、今だったら差別的になるかなと。
これレコード・コレクターズ誌の「私の収穫」に書いたんですよ。
宮:じゃあ、先んじて。
達:最近いちばん気に入ってるドゥワップもの。1962年の「BOOM-A-LAY」

BOOM-A-LAY / THE ASTRO-JETS


 宮:ごきげんですね。たしかにこれ、ジュエル・エーキンスかなぁって気もしないでもないんですけどね。
達:なんかね、すべては歴史の彼方でありまして。これ、ネットラジオだって、ようやりませんよ。
宮:ここまでは。
達:もう28年半ですからね。
宮:ですね(笑)
達:それに負けず劣らず、宮治さんの番組だってアレですよ。すごいですよ。
宮:もうほんとに、こんなのかけていいのかなって。かけると喜んでくれるんでね。
達:いい世の中になりましたよね。
宮:ほんと、そう思いますよ。
達:マイナー、メジャー、そういうものが、枠が全部取れて
宮:いい時代に、いいタイミングにやらせて頂いたっていう、そういう感じしますね。
達:結局、だって全部自分のコレクション、かけてるんでしょ?
宮:そうです。たいへんなんです選曲が(笑)
達:わかったでしょ(笑)
宮:わかりました。漫然と聴いてらっしゃる方、その1時間を決めるのにどのくらいかかってるかっていうね(笑)ま、いいんですけど。

達:で、いちばんわかんないのがウッドゥン・ニッケルズ。これ何ですか。
宮:レコードの山の中にあって、VAULTというレーベルから出てるんですが、これはソニー&シェールが一枚出したりして、なんとなくワーナーが買収したような感じがするんです。
達:これもナゲッツ不許可?
宮:実際このレーベルから出たものでOKのもあるんです。で、その過程でこれを見つけて聞いたら、まだ申請していないんで、申請するに足りると思って持ってきたんです。
ウッドゥン・ニッケルズ、聞いたこともないんですが、調べたらタムラの最初のロサンゼルス・ベースのシンガー、ブレンダ・ハロウェイと、その妹と従姉妹の3人でやってるユニットだそうです。
達:68年というと、もうモータウンと契約している時代でしょう?
宮:だから名前を出せないから、こうなったんじゃないかと。だって(ブレンダの)「You've Made Me So Very Happy」と。
達:同時ですよね。
宮:聞いたらよかったんで、みなさんが聞いて評判がよければ、申請しようかなと。
達:伏線はってますね。ナゲッツの。
宮:はい。どちらかというと「NOBODY BUT YOU」というのがA面で、こちらが有名で。なぜかというとノーザン・ソウル・シーンではこっちが有名です。僕はB面の方がよかった。
達:B面信奉者。
宮:今さらAもBもない(笑)いいか悪いかしかないんで。
達:これも68年ですね。

MORE THAN A FRIEND / THE WOODEN NICKELS

 

達:言われてみれば、たしかにブレンダ・ハロウェイの声ですね。
宮:妹と従姉妹ってビーチボーイズみたいな。
達:今、曲かかってる間に、宮治さんの好きな女性シンガーはだれですか?好きな男性シンガーはだれですか?って、そういう質問しましたら、好きな女性シンガーは「う~ん迷う」と、好きな男性シンガーは「ジョン・レノン」だと、おっしゃいました。
なるほど。やっぱりエレキインストからいきますと、ギター・オリエンテッドになりますからね。UKのプレーン・トーンのバンドは、そうしましたら、やっぱりジョン・レノンにいくんですね。
宮:あぁ、なるほどね。そういう見方はあるかもしれませんね。
達:だって、ベンチャーズの枠組って、そういうところに、ものすごく影響を与えてるから。
宮:そうですね。

達:とにかく、宮治さんの今年の「新春放談」は、ナゲッツ不許可特集って言ってもいいような。
宮:そうですね。でも、やる気が出てきましたね。
達:ははは(笑)
宮:まだね、掘ってないなってのが、よくわかりました。
達:宮治さんは、皆さんご存じの方、たくさんいらっしゃると思いますけど、茅ヶ崎で「BRANDIN」っていう。
宮:レコード・ライブラリー&カフェっていう感じですね。
達:一週間のうち、何曜日が営業日です?
宮:水、木以外は全部やってます。週に5日はやってるんですよね。昔に比べてかなり積極的になって。
達:仮に70代になって、完全リタイヤしたら、その店にアレですか?
宮:今も半分くらい、いますけどね。レコード戻す作業とか、あと、お買いになられた方のコーヒーカップを戻すとかいう。
達:でも通勤してたときは、そうはいかなかったでしょ?
宮:そうはいかなかったです。そういう意味じゃ、テレワークしながら店番やってるみたいな(笑)

達:買ってるんですか?あいかわらず。
宮:どっちかというと、大量にこうきてしまったものを処理しながら、ダブってるものをよけてる段階なんです。箱に入ってたものが、だんだん棚に入っていく状態なんで。買うなんて、とんでもないですね(笑)
達:それどころじゃ、ないもんね。
宮:でもね、こんなもんがあったって聞いて、関連のところに、非常に興味を持っちゃうわけですよ。そうすると、ちょっといってしまう(笑)ってのはありますけど。でも年間、数十枚ですよ。それは、抑えてますけどね。
達:そこまできてるからね、あなたもね。ドゥ・ワップのオファーが来るじゃない。60枚なら60枚で来るでしょ。それを一応、音をチェックして、Youtubeでアレするような、なるべく「しまった」がないようにして(笑)そのあとは、ドゥー・ワップの棚をAからZを全部みないと、持ってるやつ、持ってないやつが、わからないでしょ?これ、絶対やらないと。持ってるヤツが10枚くらいあって、買うのが30枚で10枚減った。
宮:達郎さんレベルになると「持ってる・持ってない」って、結構怪しげですよね。
達:でもオリジナル版よりリプロの方が、音よかったりするからね。
宮:だから、そこバカにできないんですよね。
達:「十番街の殺人」と「キャラバン」じゃないけど。そっちの方が、音よかったりするわけですよ。カッティングが新しいから。
宮:わかります。オリジナルが全ていいわけでもなさそう。音質的に。リプロでもいいんですよ。
達:今年もオールディーズ道に励んでいただいて(笑)ナゲッツの、そういうアレを。
宮:とにかく、今まで「M」までしかしてませんから。なんとか、来年まではフィニッシュしたいという。
達:ははは(笑)
宮:今年いっぱいでフィニッシュしたいと思います。
達:がんばって(笑)僕、だから、棚アレしてから、コンピをそっちに移そうっていうね。
宮:シングル盤のですか?
達:CDのコンピ。それで、棚の半分をシングル盤用に、幅を、棚板を変えて。へへへ(笑)やってること、同じっすよ(笑)お互いにがんばりましょう。
宮:ハイ、がんばりたいと思います。
達:ありがとうございました(笑)
宮:ありがとうございました。
達:2週間にわたりまして、今回は濃かったな。来年の新春放談は、どうなりますか。この一年、精進したいと思います(笑)

<了>

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