2020年10月7日、筒美京平さんが天に旅立たれた。
私ごときが言うまでもなく、筒美さんがいなければ、今のような日本のポップス文化はなかった。
とてつもない才能を持った人だったけれど、それをひけらかすことなく裏方に徹し、ただただ楽曲をつくりつづけた方だった。
常に私たち大衆に寄り添い、音楽によって私たちを励まし続けてくれた方だった。
新しい作品をもう聞くことができないのは、とても悲しいけれど、宝物のような作品を数多く残されたことに、こころから感謝したい。
どうぞ安らかに。
このブログでいちばん多く採り上げている日本人歌手は西城秀樹さんなので、西城さんが歌った筒美作品について、ここに書いておきたい。
まず1972年のデビュー曲「恋する季節」の作曲は筒美京平さんである。
しかし、そのあとかなり長い間、シングルでは筒美作品はない。
70年代の秀樹さんのシングルといえば、
「チャンスは一度」「情熱の嵐」などの鈴木邦彦さん
「激しい恋」「傷だらけのローラ」などの馬飼野康二さん
「君よ抱かれて熱くなれ」「ブーメランストリート」などの三木たかしさんらが、代表的な作曲家陣である。
そして79年になって、筒美作品「勇気があれば」がリリースされる。
翌80年の「悲しき友情」も筒美作品だ。
だが、シングルはデビュー曲から合わせて3枚しかない。
筒美さん、西城さん、それぞれの作品数と活動期間の長さからして、もっと多くても不思議ではない。
意外に思う人も多いだろう。
では、2人の縁が薄かったのかというと決してそんなことはない。
ここではアルバム「SONGS」を挙げておこう。
1980年のリリースのオリジナルアルバムで、「勇気があれば」を含め、全10曲のうち6曲が筒美作品なのだ。(以下の太字)
【SIDE A】
プロローグ
OPEN TICKET
ポーカー フェイス
青春のゆらめき
勇気があれば
【SIDE B】
あの人に優しく
TAKE IT EASY ※シングル「悲しき友情」B面収録曲
IF(イフ) ※シングル「勇気があれば」B面収録曲
SEE YOU TOMORROW
自由の翼
このうち、シングルヒットである「勇気があれば」の完成度が高いのは当然として、1曲目の「プロローグ」がとても軽やかで美しいバラードなのだ。
秀樹さんのファンにとっては、知ってて当然の筒美作品かもしれないが、一般に広く知られてはいないので、隠れた名曲として紹介しておきたい。
この動画は、秀樹さんのステージ映像のバックに「プロローグ」を流しているだけで、映像と音声はシンクロしていないのだが、曲の良さもあって、ちょっとうるっとくる。
シングルにはなっていない“筒美✕秀樹”作品の中にも、こんな素晴らしい作品があったことを、ずっとおぼえておきたい。
※楽曲だけはこちらの動画で。
<了>